武器はお好きで?
「この二学期からは武器の授業が加わるということは、夏休み前から散々言っていたからもうとっくにご存知とは思う。それに伴って申請さえ出せば模擬試合においても武器の使用が認められる」
ぐるりと生徒たちを見渡したケイトは1つ手を叩いて武器の授業についてを語り始めた。
「魔法が得意なものにとって、武器や肉弾戦など不要と考える子もいるだろう。魔力が切れたり、魔法が使えない状況に陥れば途端に何もできなくなる魔法使いが昨今増えてるのはこういった甘ったれた思考が原因だね」
そこで話を区切ったケイトはにこりと笑って「君たちはこうはならないでほしいな」と続けた。
言外になるなよ?とどすの利いた声が聞こえたのは気のせいではない。
「二学期から始まる武器の授業のために、皆今日は用意してくれた武器を持ってきてくれたと思う。あらゆる武器を使えるなんて、有名どころでいえば“リーリエ”のトーリスかな、そんなこと簡単にできるわけがないのが事実でね。故に、まず持ってきてくれたその武器を扱いこなせることを二学期の目標とする、学期末にテストをするからサボったりしないように」
いくら学園に通っている面々であっても武器を実践的に扱ったことのない面々の方が多く存在する。
魔法を使えても剣術はからきしだとか純粋な体力はないとか腕力がないとか、そう言った類はケイトの言った通り実は冒険者の中でも結構いる。
冒険者に与する内に、魔術師、騎士、回復役なんて枠組みを作るからダメなのだとはケイトの持論だ。
そも、冒険者ひいてはギルドは“中央都市”と呼ばれるこの世界の大元の法や犯罪者への指名手配などを行う機関によって構成されている。
中央都市が冒険者になる時にギルドカードと呼ばれる冒険者の証明書にそう言った職業の枠組みの印字をさせるというルールがあってしまう以上、それは変えられない。
結果魔術師は魔法が使えなくなれば途端に使えなくなる、騎士は魔法がポンコツ、回復役は回復以外戦闘に役に立たない_____なんて常識がスエルテの外でははびこっていたりするわけで。
まぁ、ここまでに国を押してまでの圧倒的な差別が憚らない平穏な治世を収めれているスエルテが逆に驚きなのだがそれはそれ。
「さてまずは皆の持ってきた武器を見せてくれるかな。ふむふむ、なるほど…………」
A組全員の武器を一通り見たケイトはしゃがみこみ地面に手をつけた。
「大地よ、人型になって彼らの相手をしろ、その手に武器を取れ、容赦無くしごいて構わないよ_____“武器持つ自動人形”」
魔法陣が浮かび上がり、土魔法と錬金魔法の混合魔法が発動される。
魔法によって地面がぼこぼこと盛り上がって生み出された十数もの土の人形は、アイリスを除くA組全員の武器とそれぞれ同じようなものを持っていた。
「土人形の持つ武器は錬金魔法で君たちの持つ武器と同じ構造、もしくはそれに近しいものになっている。自動で動くがあまりなめないほうがいいよ、儂の経験を元に、相手の動きに合わせて攻撃を仕掛けてくる。さて、この土人形を見事に破壊してごらん。それが出来ないようじゃあテストも受けさせてあげられない。あぁ勿論、魔法は禁止だ。この授業じゃ特殊な結界を張ってるから使おうとしても使えないし、使えたとしてもバレるからね?」
特殊な結界、というのは入学試験時にも使われた魔法道具によって張られている。
結界内での魔法行使の一切を不可とする、圧倒的な強制力持つ“一切魔法無効結界”。
王立学園であるが故の優遇、王宮魔道士が精魂込めて作り出したその魔法道具は売り物にすればかなり値の張る代物だ。
と、ここでぴしりと手をあげた人物が質問です、と声をあげた。
「魔剣の場合は、どうすればいいんでしょうか」
「使用は許可する、けれど魔剣の力を発動させるのは不可だよ。そもそも武器もまともに扱えない子が魔剣の力なんて振り回すものじゃないよ。付与型だろうと封型だろうと、四肢が千切れるよ?封型の場合なら最悪乗っ取られちゃうかもしれないねぇ」
にこにこと人のいい笑顔で言ってることはえげつない。
柔らかな物腰と話し口調で勘違いされがちだがケイトは言っていることは事実であるが故に厳しかったり刺すようだったりする。
ここで一つ解説を。
魔剣ひいては聖剣には2つの種類が存在する。
例えば強化、炎、氷などの魔法陣を付与した付与型。
そして魔剣ならば悪魔、聖剣ならば天使を付与した封型、ユリウスの持つフラウロスやアロガルの魔法道具の殆どはこれに値する。
封型は意思を持っているため、例え適合者であろうと武器を扱う素質がなければ最悪体を乗っ取られてしまうという恐ろしい性質を持っている。
「さ、時間は有限。儂の土塊人形は容赦ないのでそのつもりで」
「あの……私は?」
そう、土人形はアイリス以外の全員分、アイリスの分はない。
ぽつねんとひとりぼっち、仲間はずれ??仲間はずれなのか!?と必死に手をあげたアイリスになんともないように、ニッコリと笑ったケイトはこう言い放った。
「流石に儂の錬金魔法ではそんな剣と渡り合えるのは作れないよ。と、いうわけで特別にキミには儂とやってもらおうかな」
「……へっ?」




