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武器のはなし

「へぇ、二学期からは武器を使っての授業があるんだね」


夏休み前に渡された二学期から必要となるものが書かれたリストにあった"武器(種別問わず)"を見て呆けた声を出した。

それとほぼ同時に同じようにリストを見ていたミシェルがうげっと嫌そうな声を漏らす。


「新しく買わないといけないの忘れてた………」

「あれ?入試に剣の実技あったよね?」

「…………レンタルしたんだよねぇ………俺、今までちゃんとした武器持ってなかったからさぁ。人間相手なら兎も角あーいう岩とかは壊せない隠し武器とかばっかで」

「ん?入試ってレンタル制度あったんだ」

「グラスフィールはあんまり金持ってない奴も通える学校だからな、武器持ってない奴だっているから貸出制度もあるんだよ」

「じゃあ二学期からもレンタル出来ないの?」

「出来なくはないんだよねぇ、まぁほとんどの奴はしないかな」

「そうなの?」


きょとりと目を丸くしてもっともな疑問を浮かべたアイリスにまぁね、と頷く。


「グラスフィールに入学する奴は冒険者、もしくは騎士か王宮付きの魔導士とかの王宮に携わる関係を目指してる、あとは偶に研究者とかもいるけど。ただまぁ、大概がそういう奴でしょ?特定の武器しか扱えないのも問題だけど、卒業後を考えたら自分の手に馴染んだ武器があるのとないのとじゃ大違いだからね」

「ここは基本実践を考えての授業だからな、もう一個の学校と違って。だからまぁ………金がなくて買えない奴のためにレンタル制度と奨学金制度があるんだけどな」

「奨学金」


なんともまぁ、前前世の時代を思い出す単語だ。

ただあの世界での奨学金は大概成績優秀者のみ対象だったのだが……はて、この世界ではどうなのだろうか


「そ、全員対象で申請さえすれば一定金額貸出制度。ほんっと………グラスフィールは貧乏にも優しいよね」

「へぇ………それは本当に優しい制度だね」

「勿論貸出制度だから入学後に返さなきゃいけないんだけどね、返済期間が無いわけじゃないけどすぐに返さなきゃいけないって訳でもないからね、或る意味そのお陰で全員ちゃんと返すんだけどさぁ」

「家に何らかの事情がある奴とか、元々貧乏、そこまではいわなくても余裕がない奴、そういう奴でも受け入れてくれる学校だからこそ貴族以外の人気が高いんだよなぁ」


貴族と言った時少々嫌そうな声色を含みながらリストを机に置いた、その時思い出したようにおい、とミシェルを呼んだ。


「そういえばミシェル、お前肝心の申請したのかよ」

「…………………忘れてたぁぁぁぁぁああああああ!!!」


本当に忘れていたらしい、ミシェルにしては珍しい。

いくらグラスフィール学園とはいえ申請なしでお金を渡してくれるわけではない。

声を荒げて勢い良く立ち上がって部屋を飛び出していった。


数分後申請書をもって息を切らしたミシェルが帰ってきた。


「危なかった………」

「セーフ?」

「セーフ。後日に支給してくれるってさ~」

「そっか、じゃあ明後日ミシェルの武器買いに行こう!ついでに観光も!」

「ついでが本音じゃないの?」

「そうともいう」


てへぺろとふざけたように笑うアイリスに、けれどもまぁ一緒に観光に行くのは変わらないのだからついでに自分の武器を買いに行ってもいいだろう。


「そういやお嬢さんは武器………レンタルのこと知らなかったんだから持ってるんだよね?」

「…………あぁそうか、ミシェルは知らなかったな…………」


途端フランの目が遠くなる、思い出すのは入試試験でいの一番にあの巨大な的を切り裂いたアイリスの滅茶苦茶な姿。

軽々と振り回していた本人曰く付与付きの、何故だか鉄の塊のように重たかった剣。

フランの表情に、フランに次いでアイリスのめちゃくちゃさを身をもって知っているミシェルは顔を引きつらせ嫌な予感しかしない。


「え、なに、こわいんだけど」

「あれは入学式の時…………武器の実技試験ででっけぇ的、あっただろ?」

「………………壊したんだね、あれを……そういやそんな噂あったねぇ………確か、あれって………あのまた最高成績保持者のユリウス・ヘンベルトすら壊せなかった奴じゃなかったっけ」

「いの一番にぶっ壊してたぞコイツ」


フラン同様ミシェルの目も遠くなる。

嘘だろマジかよ流石お嬢さん………言葉にしないものの目で語っている。

そりゃあ今まで誰も変えられなかったユリウスの入試での成績を超えたわけである。


「……………ちなみに使った武器は」

「これ」


恐る恐る問いかけたミシェルに、アイリスは空間魔法から取り出した白銀の剣を無雑作に見せる。

その手に持つ剣を眺めてため息しか出ない。


「………俺其処まで武器について詳しくないけどさ、これ、素人目でも大分いい奴っぽいんだけど………しかも付与ついてない??」

「うん」

「…………一応聞くけどこれ何処で手に入れたの、もしかして件の魔装の人に貰ったわけじゃないよね」


魔装なんて高価なものをあげたりするようなアイリス同様滅茶苦茶な金銭感覚の例の人間(エイト)ならば付与付きの武器すら与えていそうだと怪しむ。

エイトもアイリスの被害者で、割とまともであるのだがフランもミシェルもそんなこと知る由もないのだから心配するのはごもっともなのだが。

ミシェルの心配にこてりと不思議そうに首を傾げたアイリスが違うよ、と首を振り安心したのもつかの間。

寧ろもっと大きな爆弾を撃ち落としてきた。


「これはねぇ………拾った」

「「拾った!!?」」


もっと可笑しな返答が帰ってきた、おいなんだ拾ったって。

こんな素人目に見てもA級は下らないだろう付与付きの剣を拾った?おいおいおい意味がわからないと頭を抱える。


「村から学園に来る途中にあったなんか変な塔で拾ったんだ、割と使いやすくていい拾い物したよー」


アイリスの返答に再び目を遠くさせ、ついでに頭痛にも襲われた二人は肩を組み後ろを向いてアイリスには聞こえないように小声で話す。


「どう思う?」

「付与付きの剣拾える場所なんて限られてくるでしょ、あんなのそこらへんにポンって落ちててたまるか」

「だよな、しかも俺が入試で見た時はあんなに白銀に輝いてなかったぞ??」

「付与付きだし、魔力が完全になじんだからじゃない?」

「………………塔って言ってたよなぁ…………」

「………………言ってたねぇ…………」

「…………………………付与付きの剣を拾える塔って…………そういや彼奴の住んでた村ってスエルテの端の端っつってたよな」

「………………………確か道中に………まさかとは思うけど……………」



振り返って恐る恐る、まるで世界の滅亡でも聞くのかと言わんばかりの表情で思い浮かんだ当たってほしくない疑問を投げかけた。


「まさかその塔ってさぁ……白い歪な形で」

「国の端っこ辺りの森と森の狭間にある塔じゃないよな?」

「あれ、なんで知ってるの?」


「「望みが潰えたどういうことだよほんとに!!!」」



意味がわからないよ!とどこかの魔法生物のような言葉を吐いて床を殴りつけた2人に、事の重大さなど知りもしないアイリスはの心底不思議そうに首を傾げた。



_____白亜の塔

スエルテの大陸の端っこ辺りにある森と森の狭間に存在する迷宮(ダンジョン)

長きに渡り攻略されることなく挑んだ者たちを飲み込むように、誰一人として返すことのない白い歪な塔。

その迷宮の名は隣国にすら届き、かの塔は誰1人として攻略されず、その危険度から国が随一の冒険者である“リーリエ”に協力要請をだし攻略に乗り出したほどのそれ。

嗚呼、けれど、誰も予想はできなかっただろう。


まさかその塔を攻略したのが、迷宮と知らず偶々偶然うっかりと迷い込んでしまっただけの1人の少女だなんて_____!!




「攻略したのか!!?」

「知らないよそんなの!どっちにしろあの剣とって塔から出ることができたってのは事実なんでしょ!!?」

「あの塔のもう一つの通称還らずの塔だぞ!!?それだけでも普通に意味わからん!!」

「俺に言わないでよ見てあの不思議そうな顔!!もう俺これ以上聞きたくない!!怖い!!」

「俺だって聞きたくねぇよ!くっそアイリスだから攻略したって言われても信じちまうのが嫌だ!」

「なんの話してるのさー二人ともー」

「「お前が意味わかんねぇって話だよ!!!」」

「酷い!!!」



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