正式名称 双子対策作戦会議
“ツヴィリング”______2年の総合評価1位のツヴィ・ツヴァインと総合評価2位リング・ツヴァインのパーティ。
双子でツヴィが兄、リングが弟で橙色の髪に少し暗い青の瞳を持つ2人は目視ではわからない程にそっくりである。
その性格は割と子供っぽく我儘というよりかは自由で独自のルールを持っており、そのルールは簡単に言えば強者主義。
強い人間の方が偉い、強い人間は弱い人間とは馴れ合わないべきだ、というそれとあまりよろしくない口も加わって、彼らをテユのように気にくわないと思っている人も多数。
しかしそれを語る程には彼らも強く、総合評価一位と二位は伊達じゃない。
ツヴァイン双子よりも一年上の三年の総合評価二位率いるパーティと互角の戦いを繰り広げるほどだ。
……と、ツヴァイン双子の基礎情報(ミシェル提供)はこれくらいにおいておこう。
「じゃあ本格的な作戦会議だねー」
「どう立ち回るか、だな」
「今まで作戦会議とか言いながら情報提示だけで終わってたからねぇ」
「特訓ばっかしてたからな……つーか俺、入学した時より筋肉ついた気がする」
「フラン、近接戦メインで特訓してるから仕方ないと思うよ?」
「……いやー、お嬢さんが組み立てる特訓が割とスパルタだからじゃないかなぁ……俺もやってるけどあれ……きっついよ…?お嬢さんは楽々こなすけど……」
「え?昔の友人が組み立てたプランなんだけど……」
「…………うん、そっかぁ」
「諦めんなよ!!」
ちなみに、その昔の友人は勿論当然ノーフェイスの友人である。
一応フランとミシェルの為に言うならば、別に2人とも根性なしとか体力ないとかそう言うわけじゃない、アイリスの立てたプランがスパルタ過ぎるだけである。
比較対象で分かりやすく言うと、スエルテの王国騎士。
王国騎士の訓練はスエルテではスパルタで厳しく、逃げ出すものも出てくると有名なのだが、それとおなじくらいキツイ。
しかも王国騎士の特訓は鬼教官がいる管理されているが、フランたちはそうではない。
逃げても怒る人間などいないようなものなので言ってしまえば逃げれる。
しかし黙々とこなしているアイリスを傍目に逃げる、それは、男としてとか色んなプライド粉々。
……フランとミシェルは頑張った、自分の弱い心にも負けず頑張ったのだ……
特にフランは基本的な戦闘スタイルが近接戦なので、それもあって余計に頑張った。
最初の頃は筋肉痛で起き上がれなくなった。
「…………いや、まぁ、いい……体力とか力ついたのは事実だしな。そこはアイリスを責めてもどうしようもないからな……」
「……そうだねぇ………辛かったな……お嬢さんのお陰ではあるけどね……」
「辛くても文句言わず頑張れるのがフランとミシェルの良いとこだよね、私2人のそう言うとこ好き」
「……良いかアイリス、男には男なりに意地があるんだよ!」
「お嬢さんは粉々にそれを打ち砕くんだけどねぇ」
途中からは最早意地だった、悉く常識外れな実力を見せるアイリスに負けていられるかという意地だった。
ちなみにアイリスにそんな彼らの意地などおおよそ三割も伝わってない。
話題転換、話を戻す。
「まずは双子の基本的な戦い方からだねぇ。あ、お嬢さん、黒板か何か出して欲しいな」
「りょーかい」
うにょん、創造魔法によって黒板とチョークが出される。
「ありがとーお嬢さん。……やっぱこの魔法便利だよねぇ……」
ぼそ、付け加えられた言葉。
余談だがミシェル、それからフランも創造魔法は未だ使いこなせていない。
「まずは“ツヴィリング”の基本的な戦い方から______……」
タブレットにあげられた今までの“ツヴィリング”のデータなどから集めた情報を元に黒板に書き始める。
“ツヴィリング”はその双子の強みを生かした戦い方をする。
“特攻隊”がテユを中心に他2人がサポートという形を取っているとするならば、“ツヴィリング”は2人で1人という形をとっている。
兄のツヴィは雷魔法と氷魔法を、弟のリングは水魔法と風魔法を使って戦うのだがその戦い方がまた厄介なのである。
「基本的な攻撃形態は兄の方が攻撃、弟の方がそのサポートと守備って感じだねぇ」
「お兄さんの方が主に雷魔法で攻撃、弟さんの方がほとんど常に風魔法で結界みたいにシールドを張ってるね」
「前に戦ったセンパイとこのヒトも雷魔法使いだったけどよ、使い方全然違ぇな」
タブレットに流れる記録でツヴィが雷魔法を発動させるシーンを見て首を傾げたフランの疑問にアイリスがあぁ、と声を漏らす。
「サワー先輩の使ってた雷魔法は、魔法を武器とか他の形に固めて投げてるようなものなんだよね。対してツヴィ先輩のは、雷の魔力をそのまま放出してる、言っちゃえば放電してるんだよ普通の魔法よりも作業が簡単だから単純な術式だけどその分威力は魔力に依存する。それを、リング先輩の水魔法でカバーして魔力量を極力少なくしてるんだよ」
例えるならサワーがバットを使ってボールを打ち飛ばしたのに対して、ツヴィはボールを普通に自身の手で投げているだけ。
サワーの方はバットと技術があれば普通に投げるより遥かに遠くにボールを飛ばせる。
反してツヴィは本人の力に完全依存するがその分バットも技術もいらず、単純な動作だけでいい。
タブレットに流れる映像には、リングの発動した単純な水魔法が度々相手に向かって放たれる。
そして相手が水をかぶったその瞬間にツヴィが雷魔法を発動し辺りに放電、水をかぶった相手は通常よりも更に感電する。
「使ってるのは単純な術式で、威力はどうしても魔力量に依存するものだけど、組み合わせて少ない労力で着実に相手を追い込んでる。それに切り替えと対応が上手い、流石2年の総合評価1位と2位」
「雷魔法だけを警戒してれば今度は氷魔法が来る。氷魔法は水魔法の上位互換、どうしても水魔法よりも術式が多くなるものだけど、先に水があるならあとは凍らせればいいから詠唱も単純でよくなる。うーん、水魔法がいい働きしてるねぇ」
「風のシールドも厄介だろ、無理に突っ込む訳にもいかねぇ。近接戦に持ち込むのは難しい、かといって遠距離ならいいってわけじゃねぇ、寧ろどっちもできる。更に厄介なのがこいつらの顔だ、あんまりにも似てるからどっちがどっちを使ってんのかわかんなくなる」
身長すらもそっくりな双子はそれぞれ違う魔法を駆使する。
攻撃を仕掛けられた時、どちらに対しての対応をすればいいのか、そのあまりに似ている顔のせいで判断がつかなくなる。
単純に魔力を張っただけの無属性シールドならばどれでも対応は出来るが、無属性のシールドは強化魔法耐性シールドよりかは幾分強度が下がる。
すると今度は単純な術式の無属性シールドで止められるものでなく、強力な属性攻撃を放たれシールドもろとも破られる。
どっちかの方だけに目を向ければもう片方から攻撃をされる。
強者主義の国出身というだけあってか戦い慣れている上に状況判断が上手い。
少しでも動きを止めればそこを思い切り突かれる。
「取り敢えずなんとかしたいのは放電かなー対策考えないと」
時間も忘れて語りあう3人、あれはどうだ、こうすりゃどうだ、対策を練って計画はなし。
さて場所は変わって2年の寮の部屋、ツヴァイン双子のどちらかの部屋。
双子は肩を寄せ合い膝を抱えて爪を噛む。
「……勝たなきゃ」
「……僕らは負けちゃダメ」
「………もう、同じ轍は踏まない」
「………僕らの方が強い」
「………勝たなきゃ意味がなくなる」
「………強い人が一番偉いんだから」
「「……負けたらどうしよう」」
小さく吐き出された双子の弱音に隠された本心は誰にも理解されることはない。
部屋にはぐしゃぐしゃの手紙が散乱していた。




