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A級冒険者 パーティ名 “リーリエ”

人が集い話し声が賑わう酒場で、異色を放つ2人の男がいた。

金髪の男はかっちりとした服装に身を包み、かたや紫髪の男は服を緩く着崩していて優等生と不良のような雰囲気を纏いながらもどちらも似た笑みを顔に浮かべていた。

ちらちらと視線を誰もが送りながらも、声をかけないのは彼等の立場もあった。


冒険者ギルドスエルテ王国支部に所属し、この世界において数えられるほどしか存在しないA級冒険者。

金色の髪を持つのはユリウス・ヘンベルト、紫色の髪を持つのはトーリス・フワロスキー。

トーリスが流し目で注目する女性達にひらりと手を振れば押し殺したような黄色い歓声が響いた。


「トーリス、噂は聞いたか」


ユリウスが口を開く、表情こそしっかりとした真面目そうな風貌であったが瞳には“わくわく”と形容していい感情が浮かんでいた。

その言葉に飄々とした雰囲気を纏っていたトーリスはにぃと歯をのぞかせて同じ感情を瞳に浮かべて笑った。


「あぁ、例のアレだろ?俺マジで吃驚したぜ。まさかお前の記録が抜かれるなんてな…しかもあの大的ぶっ壊したんだろ?」


スエルテ王国王立グラスフィール学園における入学試験、ユリウスの成績は一度だって揺るがされることのない不動のそれだった。

入学試験結果の公開は行われないが人の口伝てにある噂は止められない。


ユリウスの成績を抜いただけでなく、試験当初壊せなかった大的すら破壊した生徒。


彼らが“白亜の塔”への攻略遠征にと向かっていた間に行われていたそれは、帰ってきた時には既に騎士や冒険者たちの間で広まっていて2人の耳に入るのはすぐのことだった。

真剣な顔で2人は顔を見合わせ、頷いた。



「どうにかしてグラスフィールに侵入する手立てはないだろうか」

「それなー!王子サマがグラスフィールに入るの禁止とか言わなきゃよー!」


きゃいきゃいとはしゃぐトーリスが言ったように、エイトによって“リーリエ”、というよりもユリウスとトーリスのグラスフィール学園への訪問は禁止された。


「入試の時点であの的を壊す事ができるなど、まだ見ぬ強者に心が躍るなトーリス」

「噂だけじゃ名前もわっかんねぇしなぁ……見た目は確か白い髪、だったか?超珍しいし目立つし、すぐ見つかると思ったんだけどよぉ」

「一度手合わせをしたいものだ。あっ、もしかしたら白の聖女かもしれないな」

「白い髪なんざ珍しいからな、本人じゃなくても妹とかそういうのかもしれねぇぞ?あの嵐の虎(テンペスタティグレ)を倒せるような人が学園にわざわざ入るとは思えねぇ」

「それもそうだな」


つい先程、優等生と不良と称した2人だが実際にはどちらも違う。

ユリウスとトーリスはどちらも、ただの問題児気質の“戦闘ばか”だった。


今の2人には“学園の入学試験最高成績者”だけでなく“白の聖女”というおもちゃ、基興味の対象があった。


エイトは知っている、その全く方向性が違う“強者”が全くの同一人物だということを。

そしてエイトは知っている、この2人が戦闘ばかでそして、その探し求めて興味しかない”強者(アイリス)“と会えば100%を超えた確率で「戦ってくれ!」という話に持ち込むということを。

これがエイトが2人に対して学園訪問を禁止した理由であった。


そもそもアイリスは外見だけでも目立つ、行動すれば更に。

そこに認知度が高く注目の的になるのが確実であるユリウスやトーリスが彼女目当てに学園に訪問、そしてアイリスが興味の対象イコールとなれば十中八九悪目立ちする。

そうなればどうなることか、後始末は非常に大変である。


故にエイトは彼らに言った。

「ただでさえ目立つお前たちが学園に訪問なんてすれば注目の的になるだろう」と、決して白の聖女なんて関係ない、関係ないったらないのだ。


A級冒険者、騎士団や国の王子とも関わりのあり、更にグラスフィール学園の卒業者である“リーリエ”ならば、学園の生徒の視察という理由で公的な訪問も可能である。

しかし公的私的を含む訪問を王子によって禁止された以上、母校に顔出しという理由でも恐らく学園には入れてはくれないだろう、学園長は兎も角ケイトはきっちりしていた。


しかしそこで諦めないのか彼らである。

良くも悪くも諦めは悪い、こと強者が絡むと更に。

その手段として侵入を思いつく限り、だからこそ問題視気質なのだ。


「やはり幻術で侵入……いや、しかし基本的にグラスフィールは割と防御システムが完備だからな」

「幻術やらの魔法をかけて入ろうとしても誤魔化せない結界が張られてるからな、空間転移系も使えねぇ」

「正門には見張りがある、そのまま入るのも難しいな」


会話のそれが最早泥棒の類だった、結果論としては侵入する目的なので盗むことはしないと言うだけだが。

期待に胸を膨らませながらはしゃぐ2人はあぁでもない、こうでもないと楽しそうに作戦会議に花を咲かせる。



「……あっ、そうだ、学生時代に作った隠れ穴、あそこまだ使えるか?」



結界の穴を抜いて開けた通り穴、学生時代に学園をサボって抜け出すために作り出したもの。

トーリスの言葉にユリウスははっと目を見開いて口を押さえた。


「はっ、その手があったか。流石トーリスだ」

「よせやい、照れるだろ」


照れながら頬をかくトーリスに、ユリウスは真剣に「すごい、さすがだ」と褒めながら手を叩く。

かくして作戦は決まって、通り穴を使って侵入する目処を立て始める。


「よし、じゃあ一度確認してみよう。あっ、でももう少ししたら模擬戦闘期間に入るな」

「その時期は辞めといた方がいいな、生徒が色んなところにいるからバレやすい。確認するだけして実行はしばらく後だな。無かった時の別案も考えとかねぇと……万が一バレたら減給で済むといいな」


冒険者には固定給はない。

彼らの生活を支える賃金がどこから出ているのかというと、ギルドに依頼される多種多様のクエストを達成した時に出る報酬金、もしくは出先で採取した素材を売ったことで支払われる金貨。

では減給とは何か、例えば住居を故意ではないとはいえちょっぴりはしゃいで壊したり、捕らえてくることが前提だったのに半殺しにしたり、クエストを達成したが被害を出したりした際に報奨金を何割か引かれることだ。


余談だが“リーリエ”、過去に何回か減給罰則を受けた事がある。

理由はユリウスとトーリスの戦闘狂の性質にあったの一言に尽きる。

もう1人のメンバー、アリアナはとんだトバッチリである。


酒場の喧騒なども加わって話が聞こえていない、2人に釘付けの客達に言ってやりたいものだ。

「こいつらはただの戦闘ばかである」と。

いつもならツッコミをいれ彼らを止めるアリアナがいない以上、土台無理な話だった。


「よし、じゃあグラスフィール侵入計画の実行までは白の聖女について探そう」

「序でに街で入試最高成績の奴も見つけれればいいな、あーでも侵入するのも楽しそうだからなー……」

「アリアナも誘おうか」

「そーいや何で今日彼奴いねーんだ?確か誘ったよな」

「『遠征終わったご褒美に買い物をするから無理』だそうだ」

「彼奴どんだけ物買うんだよ……遠征出る前も『遠征の前に買い物行ってくるー』とか言ってただろ」


街で買い物を楽しんでいるであろう仲間にトーリスは呆れた顔をした。



しかして、同じタイミングで買い物中のアリアナが戦闘狂の強者好きの彼らに「ほんといつまで経っても変わらないわよね彼奴ら、馬鹿さ加減が」と呆れていた事など、どちらも知る由はない。

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