強化期間開始
模擬戦闘期間が始まり1日目。
タブレットにて発表された“スケジュール”を朝一で確認する。
「俺たちは12時からで、場所は…うっわ、わっかりやす」
「んぁ、何がだよ……あー、なるほど、たしかに。」
場所は第1戦闘場と書かれており、その場所は入試試験も行われた場所。
人通りの多い、観覧者も1番入る場所だった。
「ま、順当か。2年の上位パーティと、1年じゃ1番注目のお嬢さんのパーティだからね」
戦闘場自体の広さは全て変わらず同じ大きさだ。
しかし観覧者の収容人数はどうしても違う。
後々の映像配信はあるとはいえ、ライブを見にいくようなもので生でその熱狂を味わいたいと思う生徒が多いのは仕方のないことだ。
シビアなもので、どうしたって上位パーティ、注目の高いパーティの模擬戦闘には観覧者の収容人数が多い場所を指定されるのだ。
「お昼はこれ終わった後だね」
「12時ってことはまだまだ時間あるな。どっかの一つくらい見とくか?」
そう言いながら、未だにタブレットに慣れないらしいフランは見たかったところでは無いページを開いて戻せなくなったらしくしばらく奮闘していたが、ただただ無言でタブレットをアイリスに渡した。
戻してくれと言わんばかりの視線だけを向けて。
ミシェルといえば今日の全体スケジュールを確認していて、比べてみれば渡されてすぐに使いこなしていたのは流石の一言に尽きる。
「あ、じゃあここ見にいく?10時からなんだけど、3年の上位パーティと2年の去年総合1位のパーティ。去年も結構何回もやりあってるらしいよ」
ミシェルの情報網はパーティ随一である。
比べる相手が、フランはともかく世間すらもズレているアイリスなのでともかくとしてその情報への精通ぶりは“さすが”に尽きる。
「んじゃ、そうするか」
「わーい楽しみー」
のほほんとした空気を纏っている3人には初めての模擬戦闘期間に対する緊張感なんてものは皆無であった。
呑気に見えるがそれはそれ、フランとミシェルは1週間みっちりと、アイリスによって課された無茶難題をこなし、時に引き、時に吼え、時に引きながら特訓を続けていた。
その成果はこの後行われる模擬戦闘で明らかになるので、ひとまずここではそれだけを語ることとしよう。
さて、観戦にいった模擬戦等に対してのアイリスの感想といえば「コロシアムとか、そういうのを見ているみたいだったなぁ」である。
去年も何度も戦闘をしていたの言葉通り、上位パーティということもあり人気やファンもつくのだろう。
どちらかのパーティを応援する声で充満した戦闘場は、確かに実際に見るだけの価値があった。
結果としては3年のパーティの方が勝利を収めたのだが、ナレーション曰く勝率としては五分五分らしかった。
「この調子だと、俺たちの時も人多いだろうねぇ。主にお嬢さん見たさに」
「あ、なんか緊張してきた」
「緊張…するのか…!!?」
「フランは私を何だと思ってるの」
「アイリスという生き物」
「よっし、そろそろ暴言にも耐性がついてきたぞー」
規格外の非日常を詰め込んだ存在、それがアイリスという少女である。
フランとミシェルとて決して弱いわけではなく、比べる相手が相手として悪いだけだ。
フランは体術を得意として、魔力操作にも長けている。
そしてミシェルはその素早さと敵への弱点の見つけ方、アイリスは密やかに忍者の動きに似ているなと思っていた。
「まぁ、観客がいてもいなくても俺たちがやることは変わらねぇ。勝つだけだ」
「おっとフランくんかっこいい〜」
「いけめん、そこにしびれる憧れるぅ!」
「馬鹿にしてんのか!!」




