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特訓開始

この学園には、多くの戦闘用フィールドが存在する。

模擬戦闘期間が始まれば生徒たちが競い合う戦闘場は、期間外は間訓練室として解放されており使用時間の制限はあるものの申請さえすれば早いもの勝ちで貸切として使用することができる。

タブレットといい、流石は国立として施設や魔法道具が潤沢に用意されていた。


しかし、当然ながら多くあるとはいえ数に限りはあり、どうしたって全てのパーティを補えるものではない。

だが期間が始まればいつ戦うかわからないほかのパーティに、自分の手の内全てを曝け出すような真似はできないため、訓練室をとれなかったパーティは各々が各々の練習場所を見つけてそこで訓練をする、という形になるのだ。



話は変わりフランの部屋に集まった3人は、顔を突き合わせて話をしていた。


「さぁて……正直に言うけど、今の状態で模擬戦闘しても俺たちは虎の威を借る狐状態になりかねない」

「そもそもの前提に、アイリスの噂は学園中に広がってるから確実に注目される。1番狙われるし1番注目される」

「そ、俺たちが狐状態だとお嬢さんだけが頑張って、いつか瓦解する。だからまずは足手まといにならないためにチームワークの確認を含めて、特訓をします。俺たちがお嬢さんの攻撃当たったら死ぬし、俺たちもお嬢さんに攻撃を当てたくないし当てさせたくない。いいよね?」


確認され、頷く。

アイリスとてその心境は同じだったからだ。


アイリスは確かに規格外の力を持っている。

けれど、彼女が与えられた才能は“魔力量”だけともいえる。

今の実力に至るまで、アヤメは友人たちに只管に教わり、扱かれ、何度だって反芻した。

努力という言葉で表現するのは少しだけ違う、ただ好きなように、楽しいのためにしていただけだからだ。


それでも、だからこそ。

アイリスは何もしない人間は嫌いだ、与えられた才能に溺れて何もしないことを誇る人間はすきではない。

真の天才とは1%の才能と99%の努力、アイリスを枠に当てはめて例えるならばこの言葉が向いている。


「じゃあまずは得意魔法の確認かな?戦うに当たって、使う魔法。俺は精神干渉と幻術かな。フランは?」

「魔力操作と強化魔法だな。アイリスは」

「私は創造魔法と天体魔法」


白けた視線がアイリスをざくざくと突き刺す。

思わずたじろげば重くふかいため息を吐かれて、とうとう視線を逸らした。

2人はひそひそ、こそこそと小さな声で視線はそのままに喋り合う。


「これで無自覚なんだから厄介だよねぇ」

「それな、意味不」

「ねぇ小さい声ですごい悪口言われてる気がする」

「まぁいいや、どんな魔法なの?」


魔法を説明、となってうぅんと唸る。

魔法の構造、術式、魔法陣、それを感覚で理解しているアイリスは言語化となるととんと苦手で、ろくろを回しながら説明を何とか口にする。


「創造魔法……は……想像したものを実体化して創造できる魔法………天体魔法は……文字通り天体系の魔法というか……」


やはりどうしたって言葉にするのが難しいと、説明を諦めたアイリスは実際に見せることへとシフトした。

指先に魔力を込めて振れば、小さな音を立ててクッションのようにデフォルメされた星がくるくると部屋を飛び回る。


「天体魔法はこんな風に、星とかをモチーフにした魔法、っていえばいいのかな。それで創造魔法はこれ」


魔力が練り上げられ生み出された魔法は完全な実体をもち、アイリスのその手には先ほどまでなかった羽ペンが握り締められていた。


「創造魔法は錬金術みたいなもの?」

「あー、と、ちょっと違うかなぁ。一応物理変化(錬金術)は、変換させたい物質にむけて使うもので、創造魔法は魔力そのものの形質を変化させて実体化させる魔法だから。元物質がなくていい代わりに、細部まで想像設定をしないと実体化できないけど物理変化と違って変化容量とかもないから、完全なオリジナルを好き勝手に作れて…」

「んなもん、出来るかァ!」


べシィン!と思い切り机を叩いたフランの怒号にアイリスの言葉が途切れる。

アイリスが口にする「便利だよ」と言わんばかりの言葉の節々に詰め込まれた滅茶苦茶さに、とうとう我慢ができなくなったのだ。

なんて事ないように話すそれらの、無茶振りが過ぎることか。


「もうお嬢さんには驚くのも面倒になってきたよ」

「それ、前にフランにも言われた気がする」

「これで確定したね。やっぱり実際にやらないことには息は確実に合わせられない」

「そうだな、特に………な?」

「特に…ね?」

「2人して私を見ないで!なんか、ごめん!」


じっとりと湿った視線を向けられて思わず謝る。

アイリスの言い分としては、そもそも彼女に創造魔法を教えたのはかつての友人たちなのであって、全て自分が悪くはないと思う、であった。

フランとミシェルからしてみればどっちもどっち、である。


「まぁ別にいいけどさ、毎日退屈しないしね。とりあえず明日、二時間だけだけど訓練室貸し切りできたからそこでまずは特訓ね」

「えっ、予約取れたのか?」

「まっ、訓練室のことはは知ってたからね。早い者勝ちってことだったから早めに取っといたよ」


アイリスもフランも全く思い入っていなかった点をカバーするミシェルに、わぁわぁと彼を褒めながら拍手を送る。


「ミシェルすごい!万能!気がきく!」

「まぁねぇ、もっと褒めていいよぉ〜?」

「イケメン!」

「おぉ、ありがとう」


最初の日こそ訓練室で、しかしいつでも取れるわけではないためにそれ以外の日は王立都市の隅っこにある小さな森で特訓を続けたのだった。


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