模擬戦闘システム説明回
今回は説明回です
ほぼ文字でキャラほぼしゃべりません。
2018/07/24:申し訳ありません、模擬戦闘システムの期間を10日から7日に変更いたしました
本日のテーマは“模擬戦闘システムについて”である。
壇上にたったケイトのゆったりとした口調で説明が始まった。
「さてこれから1週間後、君たちからすれば初めての模擬戦闘期間がやってくる。そもそも模擬戦闘期間とは、1年に5回、3年生だけは卒業試験の関係で4回。参加は自由、ただし君たち1年生だけは今回、つまり初めての期間だけは強制参加だけどね。君たちは最大4人のパーティを組み、切磋琢磨と戦い合うことになる。参加にはその申請が必要になるんだけれど、申請、対戦相手の組み合わせなんかを円滑に進めるための魔法道具を配るよ。1人1台、変わりがないから無くさないようにね」
そう言って配られた魔法道具の外装は、ガラス板がついた薄い板、側面には小さなボタンがつけられた、柏木彩芽では日常的に見たそれ。
(タブレットだこれ)
魔法文明の発達に目を輝かせて、アイリスは新しいおもちゃを与えられた子供のようにまだこそこそとそれを手に取って遊ぶ。
側面のボタンをぽちりとおして、画面が明るくなる。
「あっ」と小さく声を漏らして、そっと放置、私は何もやってませんよと視線を逸らした。
「これは通信型魔法液晶、学園内でしか使えないから変なことは考えないようにね?模擬戦闘期間への参加表明はこのタブレットを使って行う。使い方はまず…側面にあるボタンを押せば画面が付く、押してごらん」
その指示に、アイリスを除く全員がボタンを押す。
ちか、ちか、ちか…しばらくおいてから、機械的な音声が発される。
先に電源を入れていたアイリスのタブレットだけが一泊早かったが、それはそれ、アイリスは「私は何も知りません」の顔を貫いた。
『____魔力認証 記憶 シマシタ 確認____起動 シマス』
光っていた画面がぱっと変わり、そこには賑やかなパレードみたいなデザインが映し出されていて、“学年行事カレンダー”、“模擬戦闘期間まではあと1週間”と書かれた吹き出しが浮かんでいた。
「模擬戦闘期間まで1週間、と書かれた吹き出しがあるだろう。まず、それを押してご覧」
吹き出しをタッチすれば画面は変わる。
背景はそのままに、浮かぶアイコンが変わって“参加表明受付”“新入生案内専用”と書かれた2つがあった。
「2つ目の新入生案内専用と書かれた吹き出しを押してごらん、そこから先は選手交代、タブレット自身が教えてくれるよ」
アイコンをタッチする。
再び画面は切り替わり、チュートリアルが流れた。
〈これより模擬戦闘期間に関する、この通信型魔力装置の仕様説明を開始いたしマス。まず参加表明についてデス。〉
映像は自動で動き、ぱっと画面を変えて“参加表明受付”と書かれたアイコンに矢印が伸びる
〈この、参加表明受付の吹き出しで表明は可能デス。参加受付は戦闘期間の開始日の1週間前から、その前日の朝10時まで可能デス。吹き出しを押せば画面が切り替わり、次はパーティ登録となりマス。パーティは同学年であれば、組は関係なく、最大4人までの人数が可能となります。〉
“パーティメンバー登録”と書かれた画面に移り変わった映像には空欄の四角が4つ並んでいた。
1番上の四角に矢印が伸び、ちかとそれが押されれば名前の入力画面が現れた。
〈パーティメンバーの名前を入力、その後画面にまるのマークが表示されマス。人差し指を押し当てて、魔力を流してくだサイ。複数メンバーがいる場合は、同じ動作を人数分行ってくだサイ。登録は以上で完了となりマス。この動作は模擬戦闘期間毎に必要となりマス、お気をつけくだサイ〉
画面には“登録完了”とポップ体の文字が浮かんでいた。
再度画面が切り替われば、“戦闘申請””申請を受けています””申請を出しています“の3つの吹き出し。
〈他パーティへの戦闘申請についてデス。申請はパーティにつき、一日一回可能となりマス。”戦闘申請“をタッチすれば、その期間の参加を表明しているパーティが映されマス。申請はどの学年であっても行うことが可能デス。申請は朝9時から夜9時マデ。申請を受けたかどうかは”申請を受け付けています“をタッチすれば確認できマス。ただし、申請を受けても必ず受けなければならないわけではありまセン。申請が受けられた場合は、その翌日に模擬戦闘の予定表が組み立てられマス。
最後に模擬戦闘についてデス。期間中、毎日朝6時にその日のスケジュールがタブレットに発表されマス。戦闘毎に時間、場所が決められていますので参加者はおまちがいのないようお気をつけくだサイ。このスケジュールは自パーティ以外の物も確認できマス。全ての模擬戦等は観覧自由となりマス。模擬戦闘の制限時間は15分、ただしどちらかのパーティ全員が戦闘不能と判断された場合はその時点で終了となりマス。
期間終了の3日後に録画された各戦闘の映像がタブレットにあげられマス。1週間後に、その期間の結果、全てのパーティの勝利数が発表されます。
模擬戦闘期間の参加は、各パーティの判断に委ねられます。その結果は成績に直結しますが、毎回全ての日数参加しなければならない訳でもありまセン。観覧のためだけの充てたりするのも手でスネ。それではみなさんがんばってくださいね〉
ぷつんと映像は切れて、画面は最初に戻った。
「今の案内はもう一度見返すこともできるから、分からないことがあったらまた観るといい。」
さて、とケイトの顔が綻ぶ。
何も特別なことはしていないのに、じっと目を離せなくなった何かがあった。
「長々とした説明の後にまた、話をというのも申し訳ないけど、年寄りは話が好きなので許して欲しいな。この、模擬戦闘期間というのは実際的に戦場で、生きた相手と戦うということを実際に体験してもらいためのものだ。あぁ安心してね、終われば治療魔法で回復はされるし、”死ぬこと“はないから」
どれだけ特訓をしても、剣を振っても、魔法を重ねても、生き物と戦うということは実際に行わなければわからない”おそろしさ“がある。
自分に敵意、とまではいかなくても「倒す」という意思を持って向かって来られた時にいつもならば振れるはずの剣が当たらず、いつもならば発動できる魔法がズレて、必ず全てがうまくいくわけもないそれを走り抜ける。
そして一瞬でも、足がすくめば次の一歩が出なくなる、実戦とはそういうもの。
「別に戦いだけが全てじゃない。今回だけは、強制参加だけどね。成績という結果のためだけではなく、自分自身の闘い方を知るため、戦い方を学ぶため、例え負けても次に向けるため。模擬、なんてついてはいるがこれは確かに戦いだ、殺す気でいけ。安心しておくれ、死ぬ前には止める。それぞれにそれぞれに目指す道があるだろう、けれど、戦うということを思い間違えるな。命というものがかかった実戦で、その一歩が出るか出ないか、たったそれだけが大事なのだ。………あぁこれだから、歳はとりたくないね、随分と長くなってしまったけれど、儂の話は以上だよ」
相変わらずその笑顔はにこやかで、「それじゃあまた明日」と教室を後にする。
学園の、”模擬“戦闘。
入学から1ヶ月経ち、気の緩みも生んでいた。
ケイトのその言葉に、教室に騒めきが広がった。




