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模擬戦闘システム

2018/07/24:申し訳ありません、模擬戦闘システムの期間を10日から7日に変更いたしました

ぎゃんぎゃんと喚き立てる男に、内心ため息を吐きながらも何も返事を返さないのはそれが1番早く済むと知っているからだ。


事の発端はすれ違いざま、アイリスと男の肩がぶつかったという事だ。

どちらにも非がある状況で、先にアイリスが謝罪の言葉を述べたのだが困ったことにアイリスが今注目の的である新入生だと認識した男はテンプレ的なセリフを吐いた。


「調子に乗るなよ!」と。


この男、どうやら2年A組に所属するほどの成績上位者らしいということがその台詞の節々から読み取れた。

言い返しもしないアイリス達に、気が済んだのか去っていった背中を見送り、息をつく。


「よっぽどの馬鹿、いたねぇ」

「あー煩かった。まぁでも、言いたいことだけ言ってしまいならまだマシか」

「でもあれ、完全に目ェつけられたね」


やだやだ、と面倒そうに腕をするミシェルにことんと首を傾げた。


「2年生の人って、そうそう関わることなくない?」

「いやいや、お嬢さん覚えてないの?この学園の実践試験変わりの模擬戦闘習慣があること」


グラスフィール学園には年に5回、模擬戦闘習慣が行われる。

そのシステムはシンプルで、学年、組関係なく模擬戦闘を行うことができるということ。

要するに、実際に策を練り、生きた相手と戦うことを経験するためのシステム。


習慣と銘打っている以上当然その期間がある。

7日間の特定の期間中のみに限り、模擬戦闘は行われる。

1年生のみ1度目の強化期間のみ強制参加ではあるものの、それ以降は一切を個人の自由に委ねられる。

ただし、参加する場合は簡単な参加表明が必須になるが。


この模擬戦闘、所謂学期テストのようなものだ。

その結果は成績に大いに響く。



ようやく思い出したアイリスが、「あぁ!」と手を打つ。


「たしかもうそろそろだよな、一回目」

「うん、入学式の1ヶ月後。俺たちは今回だけは強制参加だから、忘れちゃダメだよー?もう少ししたら先生から詳しい説明があるんじゃないかな」

「パーティ、2人はどうするの?」


模擬戦闘ではパーティを組むのが必須となる。

それは、どんな職種についたとしても必ず戦闘において、誰かと共闘する機会が訪れるからだ。

1人で動けても、1人ではできないことは多い。

そして2人ならばできることはふえるが、できるためには共闘しなければならない。



自分本位で動けば、最悪味方を殺すから。



アイリスが恐る恐る追いかければ、フランとミシェルは揃って、最近ではすっかり見慣れた顔をした。


「何言ってんの、お嬢さん」

「俺たち3人で組むんじゃねぇの?」


当たり前と言いのけた2人にアイリスの方が呆気に取られてしまって、その珍しいいつもとは逆のそれににやぁとミシェルの方がチェシャ猫のように歪められた。


「まぁお嬢さんなら?1人でも大丈夫だろうけど?悲しいなぁ俺たち、お嬢さんからしてみればその程度だったのかぁ」

「ち、ちが!そういう意味じゃなくて、ほら、私…ちょっと疎いとこばっかだし、嫌、だったりしないかなって」


珍しく殊勝な態度を取るアイリスの‘’そんなこと”、今更でしか無かった。


そもそも嫌だと感じているのならば、とっくに離れている。

フランも、ミシェルも、そんなにお人好しじゃない。

一時的ならともかく、何日も一緒にいるのはアイリスのことが気恥ずかしいが“すき”の枠内に入っているからだ。


確かに世間知らずで滅茶苦茶で振り回されたばかりだけれど、分かった上で一緒にいたいからいるのだから、おかしな所で弱気になる。


2人の返事に嬉しそうに、顔を綻ばせたアイリスはきゃっきゃと楽しげに声を上げた。


「そっか、そっか!なら良かった!」

「まぁでもこれから、きっと増えるよ〜」


舌を出しておどろおどろしげに予言のように言い放った、その言葉の主語が分からず聞き返す。


「お嬢さんへのパーティの勧誘、もしくは戦闘の申し込み」

「勧誘はわかるが、申し込みもか?」

「そりゃお嬢さん倒せば評価は確実に貰えるし、無理でも経験はつくでしょ。純粋にどんな子かってのも知りたいだろうし」

「あー……確かに。センパイ方は気に食わない新入生叩きたいってのもあるだろうしな」

「確実に、さっきの先輩は申請してくるんじゃない?」


2人の予想は完全に当たることとなるのだが、それはまた後日の話。


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