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【初代地球王】  作者: 池上雅
第二章 【成長篇】
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*** 40 志願者もきっと本望***


 その遥かな高空から降りて来た騎士は、全身が中世風のゴツい鎧に覆われていて面も降ろしている。

 手には恐ろしげな槍も持っている。


 そういういつもの騎士姿のミケッツイオ君が空から静かに降りて来た。

 面が降りているので誰もあの優しい顔を見ることは出来ない。


 そして……

 ミケッツイオ君も地上近くまで降りて来ると、その大きさが明らかになったのである。


 彼の姿は三階建ての屋敷の屋根よりも遥かに遥かに大きかった。

 五十メートルはあっただろう。

 その光景は完全に怪獣映画の世界のものだった。


 大観衆から本格的に悲鳴が上がり始めた。

 大勢がその場から逃げだそうとしている。

 そのときまた変装したロマーニオ枢機卿が、壇上でマイクに向かって叫んだのである。


「見よっ! あれこそが神の軍勢だっ!」と……


 パニックを起こしつつあった大観衆はその声を聞いて立ち止った。

 神の軍勢ならば味方だ。そう気がついたのだろう。

 全員が立ち止ってまた信じられない光景を恐る恐る見た。



 ミケッツイオ君は邸に向かって槍を構えた。


 さすがは元本物の騎士である。

 あの崇龍さんと対峙したときと同じ、強烈な気合がその全身から迸った。


 それは周囲にいた聖戦霊団の低級霊たちが、腰を抜かして逃げ出し始めるほどの気合であった。

 さすがは五百年ものの超々高級霊である。


 大観衆のうち、かなりの多くの人々にもその恐ろしい気合はわかったのだろう。

 大勢がミケッツイオ君を見てたじろいだ。

 キーガン警視も調査官たちもたじろいだ。須藤警視正もたじろいだ。


 初めて霊を見る欧州各国の警察関係者たちは、たじろぐのを通り越して腰を抜かしている。



 ミケッツイオ君がその槍を横に振って邸の屋根をないだ。

 少し遅れて大観衆の耳にどかーんという大きな音が届く。

 屋根の破片が盛大に飛び散っているのが遠目にもわかる。


 ミケッツイオ君がまた反対側から邸の屋根をないだ。

 またもや少し遅れてどかーんというもっと大きな音がした。

 またもやもっと盛大に屋根が飛び散る。


 既にAH64アパッチ攻撃ヘリの機関砲でボロボロにされていた邸の屋根は、もうほとんど残っていない。

 ミケッツイオ君はさらに何回か槍を振って、邸の三階部分の手前の壁も崩した。


 もう部屋の中が望遠レンズで見えるようになった。

 ミケッツイオ君が、面の中で心配そうな顔をしながら部屋の中を覗き込む。

 邸の中の部屋では皆おののいてはいるものの、怪我をしているひとはいないようだ。

 面の中のミケッツイオ君の顔に快心の笑みが浮かんだ。


 ミケッツイオ君は実際に槍で屋根や壁を壊していたのではないのだ。

 槍を振ると同時にポルターガイストの力で内側から外側に向かって屋根や壁を壊す。

 壊れた破片は五人の超高級霊がやはりポルターガイストの力を振り絞って外に飛ばす。残りの五人がこれも力を振り絞って大きな音を出す。


 イタリアの奥深い山中で、それぞれ十メートルと二メートルのミニサイズになって、古い教会を壊しながら特訓につぐ特訓を積み重ねた成果が出た。


 そうしなければ、壊れた屋根や壁の破片で邸の中のひとたちが怪我をしてしまうではないか。

 ヘタをしたら死んでしまうではないか。

 元教会を守るための騎士だったミケッツイオ君や、元聖職者だった霊たちにはそんなことは出来ないのだ。


 大きな音を出しながら屋根や壁を壊す。

 だが中の人には怪我をさせない。

 そんな難しいワザを習得するためにこそ特訓して来たのだ。


 ミケッツイオ君と十人の超高級霊たちの努力が実った瞬間である。



 イタリアのテレビ局のヘリが、たまらずに近づいて来た。

 屋根も壁も無くなった邸の三階の部屋の中を映している。

 そのクローズアップ映像は、テレビに映し出されるとともに、会場の大スクリーンにも映し出された。


 イタリア国営テレビ局のヘリの必死の空撮映像が、国際映像となって全ヨーロッパの視聴者をくぎ付けにする。

 またもや視聴率が跳ね上がって行く。


 その映像に映し出されたのは、腰を抜かした幹部たちの真ん中にいたドン・オブ・ザ・ドン、ピエトロ・マイケリーニの姿であった。


 ドン・オブ・ザ・ドンは、ソファからずり落ちておしりを床につけ、足も開いておののいている。

 まあ、いくらドン・オブ・ザ・ドンとはいえ、今まであった屋根や壁が大音響とともに吹き飛んで、そこに十メートル近い騎士の面が現れたら少しは驚くだろう。



 と、そのとき、マイケリーニとミケッツイオ君の間に十字架を振りかざして立ちはだかった、見慣れない聖職者姿の者がいた。

 片手に聖書を持って、片手の十字架をミケッツイオ君に必死でつきつけている。

 テレビ局のヘリの空撮映像がその姿をクローズアップする。


 やはりさすがはドン・オブ・ザ・ドンである。

 バチカンから破門宣言が出たあとに、万が一の霊を使った攻撃に備えて、高い金を払ってアメリカから一流のエクソシストを連れて来ていたのだ。


 だがマイケリーニもそのエクソシストも、エクソシストは悪霊や悪魔に特化した者であって、善意の霊にはまったく効果が無いということは知らなかったのだ。


 ミケッツイオ君は面の中でくすくす笑いながら、指を近づけてそのエクソシストをポルターガイストの力を使ってつまみあげる。


 壇上のロマーニオが、「見よ! 神の軍勢の前には人の力などいかに無力なものかっ! 

 偽りの聖職者姿と偽りの信仰で、神の軍勢に立ち向かうことなど出来るわけがないのだっ!」

 と絶妙な合いの手を入れる。


 ミケッツイオくんはそのエクソシストを外の芝生の上に放り投げた。

 着地の寸前にまたポルターガイストの力を使って衝撃を和らげてあげる。

 芝生に横たわったエクソシストは他の超高級霊がポルターガイストパワーで拘束して動けなくさせた。



 今度こそ本当にドン・オブ・ザ・ドンはおののいた。

 既に最初から彼に取り憑いていた、最も熟練した聖戦霊団の上級霊が、その顔をさらにもっとおののいた顔にさせる。


 そうしておいて、ドン・オブ・ザ・ドンの骨盤底筋と尿道括約筋を緩め、膀胱を強く圧迫して長々とおしっこをさせたのである。


 年月を経て渋い色になっているフローリングの美しい床に、大きな水たまりが出来ていった。

 ついでに周りの側近たちに取り憑いていた中級霊も、おしっこショーに参加した。


 イタリア中に恐れられていた五人のマフィア大幹部たちが作りだすおしっこの泉は、直径五メートルほどに広がって行く。


 男たちのおしっこが終わると、聖戦霊団の霊は、取り憑いていたドン・オブ・ザ・ドンを無理やり立たせた。

 ズボンはもうびしょびしょである。


 それからドン・オブ・ザ・ドンにヘンテコリンな踊りを踊らせながら徐々に服を脱がせていく。

 素っ裸にさせると、さらに壮烈にオカシい裸踊りをさせた。

 顔も信じられない程オカシな顔にさせている。


 有名なコメディアンを招いて習った裸踊りの特訓が役に立った。

 練習台にさせられて、その屈辱のあまりまだ放心したままの志願者の若い警官もきっと本望だろう。


 ヘリの空撮映像がその姿をアップで流し続けた。

 それを見た者の目には神の怒りを怖れる恐怖のあまり、ドン・オブ・ザ・ドンが発狂したように見えるはずだ。


 それはイタリアンマフィアの権威が完全に崩壊した瞬間だった……



 全ヨーロッパの放送局が、その映像をアナウンサーの絶叫中継とともに流している。


 全作戦期間を通じて一人も死者を出さなかった、奇跡のマフィア殲滅作戦は終わった……





 後でやはりテレビカメラには十メートルの超高級霊たちや、五十メートルのミケッツイオ君は映っていなかったことがわかった。


 それは残念だったが、まあ、屋根はちゃんと壊れていたし、ドン・オブ・ザ・ドンの失禁裸踊りは見事に映っていたのだからそれでいいだろう。







(つづく)


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