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【初代地球王】  作者: 池上雅
第一章 【青春篇】
31/214

*** エピローグ ***


 弟子たちを引き連れた退魔衆が研究所などで光輝に会うと、相変わらず合掌しながら丁寧なお辞儀をする。


 だが休暇旅行のあとは、親しげに会話もしたりするようになった。


「三尊殿、お久しぶりです。その節はどうも」 


「ああ、厳箭さん。

 厳箭さんって、ほんっとウインドサーフィンがお上手でしたよねえ」 


「い、いやそれほどでも。

 ですがまあ、実に素晴らしい休暇を頂戴出来たものです」 


「また一生懸命働いたら連れてってもらえるかもしれませんねえ」 


「三尊殿、三尊殿。

 ご褒美を期待して働いたり修業したりするのはいかがなものでありましょうか。

 ああいう素晴らしい御褒美は、無我夢中で働いて我を忘れて修行しているうちに、ふっと天から降ってくるものではないでしょうか」 


「さ、さすがは厳箭さん。ま、参りました」


「い、いやまことに御無礼を申し上げました」


「あははは……」「はははは……」 


 大尊敬するお師匠様が、こんなにも親しく三尊さんとお話をしている……

 そう思った弟子軍団は光輝に対する態度を軟化させた。

 ましてやあの南国の高級リゾートに連れて行ってくれて、一緒に泊まって遊んだひとでもあるのだ。


 お師匠様のいないときでも、弟子たちは光輝に会うとにっこりして会釈してくれるようになったのである。




 ついにレックスさんとアロさんの子供が生まれた。予想通り男の子であった。

 二人によく似た大きくて元気な子だ。


 レックスさんは息子を大河と命名した。

 光輝は心の中で密かに「チビザウルス」と命名した……


 光輝がフト目を上げると、アロさんが光輝を睨んでいる。


「アンタまさか、人の子にまた勝手にヘンなアダ名をつけたんじゃあ……」


 光輝は慌てて首をぶんぶん横に振りながら後ずさった……




 今日は警備犬たちに新たな警備対象者を紹介する日である。

 邸前の車寄せにあるベンチに、レックスさんとアロさんと大河君が座り、隣のベンチには光輝と奈緒が座っている。


 警備員に指示され、最初に先輩警備犬がゆっくり近づいてきて、大河君から少し離れたところで匂いを嗅ぐ。

 アロさんさんが、「たいがくんをよろしくねー」と言って犬を抱きしめる。


 先輩警備犬はちぎれそうなほどしっぽを振ったあと、警備員に向かって低い声で、「うぉん。うぉん」と鳴いた。

「覚えました! 必ず守ります!」と言っているらしい。

 後輩警備犬二頭も、先輩とまったくおなじことを繰り返した。



 と、三頭が光輝の方を振り向いた。

 ゆっくりと光輝に近づいて来ると、光輝の太ももにぐいぐい鼻先をこすりつけ、低い声で順番に、「おん」「おん」「おん」と鳴く。


 まるで、


「お前ぇの嫁さんはまだ子を生まないのかぁ?」

 

「生まれたら俺たちが守ってやるからよぉ」 


「早く作っちまいなぁ」


 と言ったように聞えた。



 犬たちはレックスさんもチラ見したが、「コイツは守ってやる必要は無さそうだな……」

 とでも言いたげにすぐに視線を逸らした。



 そうして晴れ渡る秋の空のもと、犬たちはいつもより少し大きめに光輝にしっぽを振ってくれたのである……







(初代地球王 第一章【青春篇】 了)


次回より第二章【成長篇】スタート……

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