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【初代地球王】  作者: 池上雅
第六章 【完結篇】
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*** エピローグ ***


 国連は苦悩していた。



 第一次世界大福音に於いては、光輝はノーベル平和賞と同時に国連人類栄誉賞を贈られている。


 第二次世界大福音に際しては、国連は光輝に『惑星地球人類の福音』という称号を贈り、公式の場では、光輝は閣下の敬称付きで呼ばれるようになっていた。


 だが、この第三次世界大福音に際しては、いったい何をしてその功績を讃えればいいというのだろうか……



 第一次世界大福音では、確かに全世界一億人ものがん患者の命を救った。

 そして第二次世界大福音では、なんと地球を含む全太陽系を救い、人類のみならず地球の全生命を救っていたのだ。


 だが…… 世間一般にはやや実感が薄かったのである。

 確かにがん患者やその家族にとっては第一次大福音は偉大なる福音であった。

 だがしかし、がん患者でない一般人にはその恩恵は届いていない。


 また、第二次大福音に於いては、地球の全生命が救われたといっても、実際には誰もあの脅威物体を目にしていなかったのである。

 故に政治家や識者以外の一般人にとっては、その有難味がやや薄かったのだ。



 だがしかし……

 この第三次世界大福音に際しては、その福音が誰の目にも明らかだった。


 銀河技術の導入によって、地震も火事も偶発事故も激減した。

 犯罪行為もほとんど発生しなくなった。

 仮に発生してもその検挙率は百%近い。


 また、ほとんどの疾病も治療可能となり、地球人の平均寿命も飛躍的に伸び始めている。


 しかも世界経済は、銀河技術の導入によって空前の大活況を呈しているのだ。

 世界の平均失業率ですらたったの二%に迫っている。


 加えてそれらを支える資源は小惑星帯から続々と採掘されつつあり、オールトの巣に存在する水資源は、今後数百兆年に渡って地球のエネルギーを支えることが出来る計算である。



 もはや世界全域から貧困も追放されつつあった。

 地域紛争すら皆無になっている。


 しかも全ての独裁国家が消滅し、全ての国が議会制民主主義国家になっているのである。


 太陽系近傍には銀河連盟の防衛部隊が駐留し、半径五百光年に渡って防衛体制が取られている。


 しかも地球は銀河全域から感謝され、尊敬されているのであった。



 そうして……

 地球人たちの目には、これらの超絶的大福音が、やはり全て光輝の功績として映っていたのだ。


 それ故、国連に対して、この第三次世界大福音に際し、なぜ英雄光輝を顕彰しないのだという批判が殺到していたのである。


 故に国連は苦悩していたのだ。



『惑星地球人類の福音』を超える称号や顕彰とはなんだろう。


 ノーベル平和賞を二度も受賞し、バチカンから聖人認定までされている人物を、これ以上いったい何をもって讃えればいいというのであろうか?




 連日開かれていた国連章典部局の会合で、疲労のあまりある若いメンバーが口走った。


「この上はもう、あの英雄光輝のニックネームを正式に奉るしかありませんな……」


 同じく疲労の極致にあった他のメンバーもやけくそになって賛成した。


 そうして……

 あれよあれよという間に、とうとう国連総会の場で満場一致でそれが認められてしまったのである。



 もちろんその称号にはなんの権力も義務も伴わなかった。

 ただ単なる称号のみである。

 だがしかし、あの二つの森の惑星の領有権だけは認められてしまったのである。


 セカンド・アースと呼ばれる最初の森の惑星は、今や農地を除いてその四百層もの全階層が高さ一キロの地球環境スペースになっている。

 これは合わせれば地球の全陸地面積の十倍を超えた。


 二つ目のサード・アースに至っては、その全階層が高さ百メートルの土壌改良施設になっていたために、その総面積は地球の海を含む総面積の三百倍を超えている。


 それら全ての領有権が認められてしまったのである。


 こうして……

 三尊光輝は、


「キング・オブ・ジ・アース・ザ・ファースト (初代地球王)」


 の称号と領地を正式に手にすることになったのである。



 この喜ばしい決定が為されたとき、日本国の首相はたまたま料亭瑞祥で光輝たちと歓談中であった。

 そうして、別室にいた秘書官からメモを受け取った首相は、光輝を見て微笑みながら、「おめでとうございます。陛下」と言ったのである。


 光輝は咄嗟にその部屋に天皇陛下がおみえになったものと思い、すぐに後ろを向いて平伏していた……



 それから十年ほど経ったある日、引退した首相の回顧録を読んでいた光輝は、ある部分を読んで大赤面することになる。


 そこには、

「私が国連の決定を知らされて、初めて三尊氏に『陛下』と呼びかけた際に、なんと陛下は咄嗟に後ろを向かれ、この私におしりを突き出されたのである。

 わたしはまた風変わりな冗談もあるものだと思って硬直していた」

 と書いてあったのであった……




 その年の年末近く、セカンドアースに建設されていた国連支部の超広大な議場には、全世界から大統領、首相、そして王族らが集結していた。

 もちろん英雄光輝の戴冠式に出席するためである。


 まあ、全員輪をくぐるだけですぐに来られるので、それはそれほどたいへんなことではなかったのだが……

 それにしても便利になったもんである。


 そうして英雄光輝は、全地球の人々、加えて銀河宇宙数百兆の人々が見守る中で、無事『初代地球王』の称号を授与されたのであった……



 戴冠式に続いての光輝一家の紹介の際、国連事務総長に初めて、


『プリンセス・オブ・ジ・アース』


 と紹介されたひかりちゃんは固まった。


 自分までそう呼ばれることになるとは思ってもいなかったからである。



 ひかりちゃんの上には、あの架空の「ぼんっ」という効果音が現れ、その顔は瞬時に真っ赤に染まっていたという……







【初代地球王 了】 




 

 ということで【初代地球王】はいったん完結させていただきますです。

 みなさま長らくのご愛読本当にありがとうございました。


 ですが……

 わたくし自身あまりにも登場人物たちに愛着が湧いてしまいまして……

 先日ぼーっとしているときに、続編のアイデアがどかどか降って来てしまったのであります。

 それらを必死でメモっているうちに、またひとつ物語が出来てしまいました。


 そこで、誠に申し訳ないのですが、今しばらくこの物語にお付き合い願えませんでしょうか。


 明日より、1日1回ほどのペース、計12回ほどの予定で、


 新規投稿作

「プリンセスひかりのぼうけん (「初代地球王」続篇)」

 http://ncode.syosetu.com/n1919cy/

 をお送りさせていただきたいと思います。


 こちらの方もご検索の上、どうかお読み頂けるようよろしくお願い申し上げますです……


                          池上 拝


追記


新作始めました。

【爆撒英雄サトルのガイア建国記】 https://ncode.syosetu.com/n2481ef/


よろしければこちらもお読み頂けると嬉しいです……



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