*** エピローグ ***
あるとき光輝が龍一所長に聞いてみた。
「あのぉ~、おカネ大丈夫ですかぁ~」
所長秘書の桂華が、最近生まれた次男におっぱいをあげながら教えてくれた。
どうも桂華は周りを気にせず赤ちゃんにおっぱいをあげ始める傾向があるのだ。
光輝はそちらを見ないように気をつけながら桂華の話を聞いた。
「そうねぇ。今児童生徒さんたちは五千人いるけど、ひとりにつき年間約五百万円の費用がかかっているわね」
「そ、そんなに……」
相変わらず光輝はそういったカネの話にはみみっちい。
「だから児童生徒さんたちが三万人になったとして、全部で年間で一千五百億円かかるわね」
「…………」
「だけど、もともとの国や地方自治体の予算が三百億円あって、学校法人としての補助金が三百億円あって、去年は百億円の寄付金が集まったから、持ち出しは八百億円かな。
だからまあ、あと三十年ぐらいはなんとかなるかな」
「そ、その後は……」
「その後もそのうちなんとかなるようになるんじゃないかぁー」
龍一所長があっさりと言った。
桂華はダンナ様を頼もしそうに見てにっこりと微笑んだ。
光輝は桂華がまた呆れているのではと心配して思わず桂華を見てしまい、真っ白なおっぱいが目に入ってしまったので、慌てて目をそらして赤面した……
【銀河暦50万8153年
銀河連盟大学名誉教授、惑星文明学者、アレック・ジャスパー博士の随想記より抜粋】
こうした瑞巌寺学園という施設の若者たちの存在は、あの地球の物語に直接の関係は無いようにも見える。
だがしかし、彼ら若者たちは実際には重要な役割を担っていたのだ。
それはまず、あの英雄KOUKIにとって庇護するべき直接の存在となったことである。
自らの家族友人たちだけではなく、彼ら数万人の真摯な若者たちの人生を守ってやりたいとの願いこそが、KOUKIをあの大偉業へと駆り立てた原動力になったとの研究者の指摘は多い。
後に筆者は直接GENJYOUに聞くことが出来たが、彼もやはりこのように述べていた。
「はい。確かに三尊様には自らが直接救世主となられるご自覚はございませんでした。
まあ、実際にはその後にもご自身が全人類を救ったというご自覚もございませんでしたが……
ですがあるとき、三尊様は三尊様を心から慕う数万人もの若者たちの姿を目の当たりにされて、少し変わられたのかもしれません。
その後の三尊様のご活躍はご存じのとおりであります」
また、英雄KOUKIの直接の薫陶を受けた彼ら瑞巌寺学園の若者たちは、危機後の地球社会に於いて重要な役割を担って行くことにもなった。
RYUICHIやGOUICHIROUやGENJYOUと言った中心的指導層をサポートする、分厚い支持層としてKOUKIを支える、極めて倫理度の高い集団に育っていったのである。
もちろん彼らの結束は実に固かった。
大英雄KOUKIを頂点とするファミリーの一員であるという誇りが、常に彼らの根底に流れていたからである……
(初代地球王 第四章【成熟篇】了)
次回より第五章【英雄篇】スタート……




