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【初代地球王】  作者: 池上雅
第三章 【飛躍篇】
107/214

*** エピローグ ***


 その年の瑞巌寺の僧侶たちの無礼講忘年会で、隠し芸メンバーの中に「こうきとひかり」という名前があった。


 料亭瑞祥のふすまを全て取りはらった広大な大広間で、大勢の僧侶たちが美味しい料理を食べながら、若手の僧侶たちの余興を楽しんでいる。


 次は余興のトリを務める「こうきとひかり」の番である。

 みんなは、法印大和尚さまとひかりちゃんが、どんな隠し芸を見せてくれるのかと楽しみにしていた。


 料亭瑞祥社長の瑞祥吉次とほとんどの料理を出し終わった清二板長も、部屋の隅に座ってこの隠し芸大会を見ている。


 司会の若い僧侶が、「それでは最後に『こうきとひかり』さんでーす」と言う。

 みんな盛大な拍手をしている。


 その拍手の中、にこにこしたひかりちゃんだけが出て来て、片手を胸のところで横にしたままお辞儀をした。


 僧侶たちからやんやの歓声が上がる。

 霊力の高い者が見れば、ひかりちゃんの後上方の一天二将さまたちは何故か苦笑されている。


 ふとよく見ればひかりちゃんは手に細いロープを持っていた。

 ひかりちゃんはそのロープを持ったまま、にこにこしながらスキップして宴会場の中央に出て来た。


 そして…… 

 そのロープにつんつん引っ張られて次の間から宴会場に出て来たのは……


 座禅姿のままぷかぷか浮かぶ光輝だったのである。

 高位の僧侶には光輝の後上方の呆れ顔のお釈迦様も見えた。



 一瞬の静寂の後、宴会場は阿鼻叫喚の大混乱に陥った。


 口に入れたせっかくの料理をぶーと吹き出す者。

 前のお盆を蹴散らして光輝の下に行き、光輝の落下に備える者。

 それに失敗して料理に足を取られて転倒する者。

 その場で咄嗟に平伏してお盆に顔を突っ込む者。


 まあ、とにかく大混乱だ。


 その間をひかりちゃんが嬉しそうにスキップして行った……



 光輝はまた奈緒に肩を揺すられて我に返った。

 周り中を僧侶たちに取り囲まれている。


 その中をかき分けるようにしてひかりちゃんがお父さんにしがみついてきて、「ぱぱ、あいがとう」と言った。

 光輝は笑顔でひかりちゃんをそのまま抱きしめた。


「まったくあなたさまというお方は……」


 厳空がまた呆れが果てたという顔で言う。


 光輝が浮くところを初めて見た社長も板長も、呆然とした顔でこの光景を見ていた……





 あと一年ほどで、全世界のガン患者はほぼいなくなるだろう。


 そのころには、失うはずだった命を光輝たちに救われた人の数は、地球人の百人に一人に達していることだろう。


 その後もガンに罹患するひとはいるだろうが、そのころには規模を縮小したZUIGANJI病院治療施設で発見と同時に治療してもらえるだろう。



 誰もが、これで光輝はその信じられない程重大な天命を果たし終えたと思っていた。



 だが…… 


 その考えはまた見事なまでに裏切られることになるのである……








(初代地球王 第三章【飛躍篇】 了)



次回より第四章【成熟篇】スタート……

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