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【初代地球王】  作者: 池上雅
第三章 【飛躍篇】
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*** 31 至福のとき ***


 今や瑞祥グループ各社の業績は倍々ゲームで上がっている。


 光輝の役職は単なる税務顧問から最高顧問になっており、グループ各社はあのノーベル平和賞並びに国連人類栄誉賞受賞者、聖KOUKIを顧問に戴く会社として、日本全国のみならず世界的な注目を浴びたのである。


 別に瑞祥グループと取引したからといって、がんになったときの治療を優先して貰えるわけでもないのだが、世界中のありとあらゆる会社が瑞祥グループ各社と取引したり提携したりしたがったのだ。


 光輝の顧問としての報酬は、最初は新入社員の給与と同じだったのだが、いくらなんでもそれでは提携先や取引先にハズかしいということになり、続々と社長並みの報酬に値上げされている。


 白井グループ各社も光輝に顧問になって欲しいと頭を下げに来た。

 彼らも以前瑞巌寺が困っていたころ多くの寄進をしてくれていたため、龍一所長や豪一郎の勧めもあって光輝はこれを快諾している。

 おかげで光輝の個人年収は三十億円に迫っている。


 光輝一家はその後、白井グループの一族総会にゲストとして招かれたのだが、一族総会の会場付近は三日前から陸上自衛隊の特別警護部隊が警戒を始め、当日には一個中隊六百名の自衛隊員が完全武装で会場の周囲に蝟集し、白井一族を驚かせた。


 対空砲を備えた装甲車両だけでも二十両も配置されたのである。

 上空には武装ヘリアパッチの姿も見られ、戦車までも何両かいる。

 あのかつて光輝が命を助けた白井本家の次期当主や白井家の御隠居様も、これではおいそれと三尊様をお招きも出来ないと畏れ入った。



 あの瑞祥グランドホテルのガラスピラミッドは、世界文化遺産に指定された後も営業を続けてかまわないことになり、おかげでガラスピラミッド宴会場は、あっという間に結婚披露宴やパーティーの予約で三年先まで埋まった。

 ホテルの客室も、世界中からの観光客で稼働率百%近い状態が続いている。


 なにしろこのホテルや周辺の白井グループも含む系列ホテルに泊まると、今や全世界的に有名なZUIGANJI病院の奇跡の光や、その周辺施設の見学ツアーに連れていってもらえるのだ。

 そのツアーでは、ツアー客は聖KOUKIかもしくは聖SOURYUを目にすることが出来るのである。


 キリスト教における聖人は数多くいるが、目の前で実物を見ることが出来た者は誰もいない。

 まあ、崇龍さんはともかくとして、皆生きている聖人を目にするのは初めてだったのである。


 キリスト教徒を中心に世界中から観光客が殺到した。

 彼らキリスト教徒の間では、瑞巌寺とその付属施設は聖地ZUIGANJIと呼ばれるようになり、その生涯の間に一度は行くべき巡礼の地となったのだ。


 日本の景気は更に拡大した。



 だが、その後も光輝と奈緒とひかりちゃんの生活はまったく変わらない。

 光輝と奈緒は相も変わらず毎日毎日いちゃいちゃいちゃいちゃしていたし、ひかりちゃんはそれを呆れたような顔で見た後、勝手に自分で自分の寝場所にはいはいして行って寝てくれる。

 翌朝には家族みんなで邸の敷地内の森を散歩する。


 ただ、唯一といっていい変化は……

 敷地内の森に住みついたリスの夫婦が子供を生んのだ。

 可愛らしい子リスが全部で五匹もいた。


 親リスはまだひとを警戒していて光輝たちにも近づいてこないが、生まれつきこの森と光輝たちに親しんでいる子リスは違った。

 光輝や奈緒やひかりちゃんの近くまで来て、その手に乗ったヒマワリの種を嬉しそうに食べてくれるのだ。


 親リスの大きい方は「おとーさん」と名付けられ、小さい方は「おかーさん」と名付けられたが、心配そうなおとーさんとおかーさんをよそに、子リスたちは光輝たちのすぐ目の前で美味しそうにエサを食べてくれる。


 もうひかりちゃんは大喜びだ。

 毎朝お散歩に行かないと泣くほどだ。

 雨が降っても行くのだ。

 台風が来たときはリスたちを心配してずっと泣いていた。

 翌朝リスたちがすべて無事だったのを見てまた泣いていた。


 毎朝リスの数を確認していたため、ひかりちゃんは7まではすぐに数えられるようになっている。


 そしてどうやらそういう様子を見たらしく、別のもう少し小さいリスの夫婦も何組か見かけるようになった。

 きっとまだ若い夫婦たちなのだろう。


 そのうちこの森はリスの楽園になるかもしれないな……

 光輝はそう思ってうれしかった。


 敷地の周囲では、光輝の依頼で猫やその他の天敵が入って来ないように、塀の隙間を狭くする工事が始まっている。


 また、門が開いているときにはその前に常に警備犬にいて貰うようにもお願いした。

 警備犬は今は十頭もいるので問題は無い。


 また、試しに邸の前にデンと座っている先輩警備犬に、リスたちを守ってくれるように頼んでみると、おんおんと鳴いて了承してくれた。

 たまに子リスが先輩警備犬に近寄って来ても動きもしない。


 冬になって、暖かい犬に寄りそって寝る五匹の子リスを見たときには本当に心も暖かくなった。

 警備犬はしっぽで子リスたちをつつんでくれてもいたのである。


 これならば絶対に猫や他の天敵も近寄って来ないだろう。

 最初から頼めばよかったのだ。


 ただひかりちゃんも警備犬の横で寝たがるのでちょっと困っただけだ。

 ちょっと目を離しただけですぐに警備犬にくっついて横になっているのである。


 先輩警備犬が自分で散歩に行くときには、その背中に乗っている子リスまでいる。

 後輩の現役警備犬たちも、大先輩を見習ってリスたちには目もくれない。

 たいしたもんだ。


 翌年の春には子リスは十五匹に増えていた。

 もう先輩警備犬の周りは常に子リスだらけだ。

 きっと本能的にここならば絶対に安全だと言うことがわかっているのだろう。


 警備犬が散歩に行こうとすると、振り落とされた子リスたちが競ってまた背中に乗ろうとする。

 その後をぞろぞろついていったりもしている。


 ひかりちゃんも警備犬の背中に乗ろうとしたが、何回か落ちて泣いていた。

 そのたびに警備犬がひかりちゃんをやさしくぺろぺろ舐めてなぐさめた。


 諦めたひかりちゃんは子リスたちと一緒に警備犬の後をついて歩いている。


 光輝たちはいつも警備犬にお礼を言っているが、そのたびに、「おん」と言って返事をしてくれる。


「いいってことよ。俺もけっこう楽しんでるから」


 と言っているように聞こえる。



 そうした子リスだらけの警備犬と一緒に、光輝はまたお腹の大きくなった奈緒ちゃんと、嬉しそうに歩いているひかりちゃんと一緒に朝の散歩をするのだ。


 ひかりちゃんの肩の上や背中にも子リスたちが張りついている。


 まさに至福のときであった……







(つづく)


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