trainmiracle
滑車の音が聞こえる。ネットはバラバをに宙に舞ったページを指差して「No.G」と呟くと、ページが列車全体を覆う。
「これでブレスの邪魔は入らないな」
セットは少したじろくが、くわえていた煙草のライターを取り出すと、
「侮るなよ。ネット、このノートに書かれている名前は昔、動物園に居た飼育員が飼い慣らしたハムスターの名前だ。事件には直接関わってないが、最近取り入れてエンジンの大半を占める原動力になっている」
話をしながらセットはライターのオイルを後ろ手に垂らすと、くわえていた煙草の持ち手を変えてネットに近づく。ネットは少しだけ笑うと、
「そんな事は知って居たよ。セット。そのゾウのエンブレムは伊達じゃないね」
「これはそのノートを作った時に手に入れたエンブレムだからな」
セットはそう言いながら煙草を持ち変えた手を後ろに回し、火の粉を適当に散らばらせ、火がノートに移らないのを内心、面白いと思っている。
「…どうして、分かってくれないんだセット。ここにはクラゲさんの名前も無い、私はセットの事が好きなのに」
「俺の信じているのは、ここには居ないヘッドと幹だけだ。古い名前の書かれたノートは俺が全部燃やした」
ネットは絶望の表情を浮かべる、3両目に居た自分の記憶には幹のデータが無いからだ。
「おいおい、幹。そんなに乗り出して、危ないよ」
私はヘッドの台詞を無視して、列車から身を乗り出す。もう少しで手が届きそうなのに、私のお菓子袋。手すりに引っ掛かって中々届かない。ヘッドは私の服の裾をずっと持って居てくれる。
その時、列車の前方から、凄まじい数の切れ端が襲って来た、切符だろうか。
違う、ノートだ。
ノートが列車を包み込み、私が落ちないように守って居てくれるようだ。
私は紙切れノートの端に足を任せると、お菓子袋を掴んだ。お母さんの面影が胸を掠める。
私は初めて、この列車に乗った時の事を思い出した。




