trainclear
心細く泣きたい気持ちになって来た。
車両は三連のワンマン列車。硝子で仕切られた運転席を見て、私は驚愕する。
そこには誰も居なかった。
「どうしたの」
不意に後ろから声を掛けられては更にびっくりする。
「何だか途方に暮れた顔をしているよ」
ザンバラ髪のショートカットにゆるゆるの服。
車掌帽を被った女の子がそこに座っていた。
年は十五歳ぐらいだろうか、非常に無邪気な顔をしている。
「あの…私…自分が何処に居るのか分からないんです」
「次の駅は何処ですか?」
少女は少し困ったような顔をして見せた。
いたずらっ子そうな大きな目がキラキラと輝いている。
「うーんとね。次の駅はね。水族館だよ」
「す、水族館!?」
私は思わず驚愕の声を上げる。私の家は海岸沿いの港町だ。
名産物は蒲鉾と帆立。魚が見たければダイビングをすれば良い。
水族館など必要の無い町だ。
「とても綺麗な場所だよ。クラゲさんが待って居るよ」
あかん、あかんわ。
この子、頭の螺子が完全に飛んでいるようだ。
「いい加減にして下さい」
遂に私は怒号の声を上げた。
「そんなに怒んない
でよ。怖いなぁ」
少女はショートパンツの脚を振り上げ立ち上がると、私の隣に立ち敬礼をした。低い位置から敬礼をされる。何だか変な気分だ。
「ジパング号へようこそ!!私はね、貴方みたいな人を心待ちにしていたよ!!黄色の切符は貰った!?」
少女はピョンピョン跳ねながら私のセーラー服をジロジロと観察しだした。
「不思議な服を着ているね。このビラビラは何なんだ」
「いえ…あの…プリーツですけど…」
「プリーツ!?プリーツって何だい!?」
何なんだろう、この子と話しをしていると何だか気持ちが抜けてくる。
私が脱力していると、女の子は私の手を引いて運転席に案内してくる。
「これがレバーでね。これが懐中時計、ね。面白いでしょう!?」
「はぁ…」
私が余り気にかけてない様子を見て、少女は少しガッカリした様子だ。
私は焦ってしまう。
「そっか…切符を持ってないなら、しょうがないね。セットの言うことを聞かなかったんだね。そういう子にはこうだよ!!」
セットって何だろうと私が考えて居ると、女の子は車掌帽を手に取る、私の頭にペシッと被せた。