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最終話


 レストランを出て向かった先は駅前にある大きなデパートである

 峰ヶ崎デパート。

 市ヶ谷系列の店であり、一階~四階は一般のお客を対象にした商品を扱っており、五階から上まではセレブリティなお客を対象にした商品を扱っている店だ。


 明治は自分が一般の客だということを自覚しているので五階から先には行くつもりはない。

 三階にある洋服店を見に行くつもりである。


「宝石店に行かないんですか?」

「……行ってどうするんだよ?」

「そりゃもう、明治さんがあたしのために心臓を差し出して豪華な宝石をプレゼントするという感動的な演出をですね」

「腎臓から心臓に格上げされてる!?」

「一つくらい差し出しても問題はないですよ!」

「いろんな意味で問題だよ! 心臓は一つしかないからな! お前は僕を殺したいのか!」

「幽霊のカップルというのもまた乙なものかと」

「やかましいわ」


 怖いことを平然と言う優麗だが以前ほどあまり恐怖は感じない。

 そうこうしているうちに、目的の場所へと辿り着き洋服店へと足を踏み入れる。

 若者を対象に扱った品揃えがなされており、量もかなりのものだ。


「あっちへ行きましょう!」


 優麗にいきなり腕を引っ張られる。

 何か見たいものでもあったのだろうか、明治は自分の好みの服は後で見ることにして素直に付き合うことにした。


「こ、ここは……」

「今日の記念日のために明治さんに選んでほしくって」


 顔を赤らめてもじもじと恥らう優麗。

 この場所は女性の下着売り場である。明治からしてみれば、この場にいるということは許容できるものじゃない。


「……悪いが一人で選んでくれ」

「夜はOKということですか?」


 ハンマーが振り下ろされる。


「お前は僕を変態にしたいのか!」

「そりゃもちろん。あたしのためだけの変態な明治さん……こ、これは……さ、最高じゃないですか! この胸も! 太ももも! 愛らしい唇もすべて明治さんの好きなようにしていいんですよ!」


 一瞬にしてサンプルとして店内に飾られている下着姿になり、明治を誘惑してくる。

 薄手の中身が見えそうなピンク色のシースルーのネグリジェを身に纏い、自分の指を口にくわえている。

 まさに垂涎ものの格好と仕草である。ここが、公共の場でなければのはなしだが……。


「た、他人の目のある場所で変な格好をするんじゃない! お前は露出狂かよ!」


 目のやりどころに困りながらも相手を怒鳴りつける。


「明治さん専用の露出狂です。お忘れですか? あたしは他人の目から姿を隠せるんですよ? もう明治さん以外の人にあたしの下着姿を見せるわけないじゃないですかー」

「そっかーこいつめー驚かせるんじゃない……って余計にたちが悪いわ!」


 そう、ここは女性の下着売り場で、明治は若い男性である。

 そんな場所で、一人で叫んでいる姿を他の人が見たらどう思うか……。


「マネージャーあの客さん……」

「しっ、目を合わせたら駄目。たまにいるのよねーああいうおかしな若い男性の客が……警備員を呼べる準備はしといて」


 また別の場所では。

「まだ若いのにねー」

「欲求不満なのかなー良く見ると結構可愛いじゃない。可愛がってあげてもいいかもね」

「でも危ないよやっぱ」


 明治の額から一滴の汗が流れ落ちる。


「あ、い、いえ違うんです……こ、これはその……」

「はーっはっはっ! 何が違うのかね! 明治君! ふふふ優麗君に身に着けてほしい下着を選ぶのは何も恥ずかしいことじゃないぞ! さあ好きな下着を選びたまえ! ちなみに僕は湊のために情熱的な赤い下着を選ぼう!」

「インドまで行ってその煩悩をなくしてもらえ!」


 ハンマーを大きく振りかぶり、野球のバットの要領でいきなり現れた優輝を思いっきり吹き飛ばし、その勢いで優輝は壁を突き破り帰らぬ人となった……かどうかは定かではない。


 その影で一人の女性がガッツポーズを決めていたことも明治は気付いていなかった。


「あの先輩はどっから現れるんだよ!」

「そんなことより明治さんこんなのはいかがですか?」


 今度は純白のブラとパンティーのみを身につけた優麗がポーズを決めている。 

 目のやりどころに困るレベルじゃない。


「いいから! 普通に服を着てくれ!」

「やはり、裸ですか!?」

「お前は人の話を聞け!」


 優輝を吹き飛ばしたハンマーが優麗に襲い掛かる。


「キュー」

 ぐるぐると優麗はその場で目を回し、ふらふらしている。


「ったく僕は向こうのベンチで休んでいるから一通り見終わったら来い」


 スタスタとその場から足早に明治は去っていった。


「明治さんと見るのが重要なんですよー」

 大きなこぶを頭にこしらえながらもすぐに復活して、明治の背を追っていく。

 

 次に二人が訪れたのは、宝石店である。

 優麗がどうしても見たいとせがんだので仕方なく付き合うことにした。


 一介の高校生が来るような場所ではないので、下着売り場とは別の意味で、明治は居心地が悪い思いをすることになる。


 他の客を見てみると、価値は分からないが、きっと高いんだろうなーと思わせるような高級そうなスーツに身を包んだ男が、これまた高級そうな服に身を包んだ女性と宝石を選んでいる。


 20半ばだろうか、いわゆる勝ち組の部類に入る人物であろう。20半ばで宝石を選べる立場というだけで、凄いと思える。


 普通は結婚指輪を買うときぐらいしかこの若さで宝石店に足を運ぶことなんて滅多にない。


「これいいねー」


 連れの女が男にねだるようにサファイアのイヤリングを手のとっている。


「好きなものを選びなよ。なんだったらここの宝石全部買い占めちゃうぞ」

「あははやだー出来るわけないじゃん。でも嬉しい」


 いきなりいちゃつき始めるカップル。

 アホかと冷めた目で見てしまう。


「明治さんあたし達も負けていられません!」

「お前は何と戦っているんだよ!」


 目に炎を宿して燃え上がっている優麗を軽くたしなめる。その会話がカップルに届いたのか目線があってしまった。


 一瞬沈黙をして、男が嫌な目つきで明治を見やる。


「ここはいつからキッズステーションになったのかな? 学生の癖にこんなとこに出入りするなんてね。学生は学生らしくイミテーションのアクセサリーでもあさっているのがお似合いだよ」

「ケンちゃんったらひどいー。でも正直なのはいいことだよね。あーあ貧乏くさいわ。あんなガキがここへくるのは10年早いんじゃないかしら? それに男も男だけど女もはしゃいじゃって気持ち悪いー」


 明治の心が思わずざわめく。

 確かに自分達にとっては場違いな場所かも知れないが、見も知らぬ人間にあのような嫌味を言われる筋合いはない。

 それに自分はともかく優麗を馬鹿にされたということがなぜか明治にとっては余計に心をいらだたせることとなった。


「香水の匂いがきつすぎる人間よりまだマシかもね。それともなにかい? それだけ匂いをこすり付けないと自分の体臭の匂いがごまかせないの? 高い宝石に変な匂いを付けられちゃ店員も迷惑するかもね」


 あえて独り言のようにそれでも相手に聞こえるようにはっきりという。

 こんなガキにこんなことを言われて、わらって許せるほど男のほうは心が広くなかった。


「あのな? お子ちゃまにはわからないかもしれないが、ここは大人が楽しむための場所なんだ。君の両親の年収を掻き集めてやっと足を踏み入れる事の出来る場所なんだよ? 僕は君が恥をかかないように少しは身の丈にあった場所で楽しむことをお勧めしているんだけどな」


「どこで楽しむかは僕達が決めますので余計なお世話ですよ」


「分からんクソガキだな……金のない貧乏人は来るなといっているんだ? それとも彼女に宝石の一つでも買ってあげることができるのかい? ごっこ遊びならべつのところでやれっていっているんだ」


 言い返すことが出来なくなってしまった。ある意味男の言っていることは正論で、自分達はこの場において異質な存在である。でも、言い方というのもあるし、せっかく楽しんでいるのに水をさす真似をさせられれば、それを許容できるほど明治は大人ではない。

 

 確かに宝石を買う金なんて、高校生でしかない明治が持ち合わせているはずがない。しかし、それでも優麗が宝石を見て楽しんでいるのだ。


 別に店に迷惑をかけているわけじゃないのにどうしてここまで言われなければならないのか……明治はただにらみつけることしか出来なかった。


「明治さんをいじめるんですか?」


 優麗いままで傍観していた優麗の雰囲気が徐々に変わっていく。

 髪の毛が少しずつ伸びてきて、瞳の色も赤く染まりかけている。

 危険な兆候だ。

 曲がりなりにもせっかくのデートなのにここで優麗が暴れると台無しになってしまう。


「優麗おちつけ」

「嫌です……」


 優麗の雰囲気に勝ち誇っていたカップルの顔が青ざめていく。


「さて、この客は市ヶ谷系列全ての店から出入り禁止にしといてくれ」

「ついでに三崎系列の店にも顔写真を手配してブラックリストに載せておこう」

「写真はお任せ」


 いきなり現れた野次馬達に、明治はずっこけてしまう。

 野次馬とは優輝、湊、春江、晴彦の四人のことである。


 

 男は湊に向き直り小ばかにした表情を隠そうともしない。


「僕は市ヶ谷本社の営業だよ? 市ヶ谷の名前を出したところを見ると君の親もその関係者なのかな? 僕を出入り禁止にする? 君の親の名前は?」


「市ヶ谷惣七。現在は私の祖父が市ヶ谷の会長で父は社長だな……他に質問は?」

「……は?」


 男から思わず間抜けな声が発せられた。

 

「……う、嘘を言うなよ……」


 さすがに信用できるはずがない。思わず否定してしまう。


「こ、これはお嬢様! このようなところへわざわざ……三崎のお坊ちゃままで! 今日はなんのご予定ですか? パーティのご予定はまだ聞いておりませんが」


 支配人らしき人物が、奥から現れて、丁寧に応対し始める。その様子を見て、男の顔はますます青ざめていく。


「というわけだ。信用したか? まさかうちの本社の営業とはな……市ヶ谷のブランドに乗っかって取引先になどに不快な思いをさせてはいないだろうな? 貴様の名前は? 父に報告しなければならん」


「ケ……ケンちゃん……」


 女が思わず男にすがりつく。


「あ、いえ、場違いなガキをたしなめていただけで……」


「その場違いなガキは私の可愛い後輩だ。せっかく楽しんでいたデートに水をさすような真似をしおって……貴様の性格と言うのが良くわかったよ。本社の営業部長に問い合わせれば身元などすぐに割れるだろう。当分の間出世はないと思え」


 その場でがっくりとうなだれる大の男。 

 明治はさすがに少しかわいそうかなと同情してしまったが、口を挟む事無くことの推移を見守っている。


「明治君、うちの会社の人間が不快な思いをさせたようですまないな。デートの続きを楽しんでくれ」


「さっきから気になっていたんですが、なぜ僕たちの行く先々に現れるんでしょうか?」


 明治の言葉に沈黙が場を支配する。

 さらに沈黙が続く。

 だんだんと雰囲気が張り詰めていく。


「……さて、わ、私は今の事を父に報告しなければならん! ゆ、ゆっくり楽しんでくれ!」

「ぼ、僕もこの男を手配しなければならん! それではな、我が親友よ」

「……えーと、とりあえずバイバイ!」

「明治……頑張れよ」


 四者四様の一言を置き去りにして、四人はあっという間に消えていった。


「まさか、つけてきているのか……」


 思わず顔を覆ってしまう。

 残されたのはニコニコと笑って優麗に宝石の試着を楽しませている支配人と、がっくりとうなだれている大の男、そしてその男にすがり付いている女であった。


 


「全くあの人たちは何をしているんだよ……」


 宝石店を出て、エレベーターに乗り一回へと向かっている明治と優麗。 

 そんなエレベータの中で明治は先輩たちの行動に疑問を持つ。


「あははは、いいじゃないですか。おかげで助かりましたし。それに明治さんにあんな態度をとるなんて末代まで祟ってもまだ足りませんよ」

「一応あの人のいっていることにも一理あったんだぞ? ただ言い方が少し嫌味くさかったけどそれだけで出世の道が立たれておまけに末代まで祟られてちゃ不幸を通り越してるよ!」


 なんて怖い人たちだと明治は心底思った。

 普通に接していたが、優麗は幽霊だし、湊、優輝の両名は住む世界が違うともいえるほどの人物だということを改めて認識する。


「嫌なことを言われた相手を気遣うなんて明治さんってやっぱ優しいですよね」

 

 ニッコリと優麗は微笑む。


「別に普通だよ」

「そうですか?」

「そうだよ」


 エレベーターを降りてデパートから外へと足を向ける。

 すでに日は暮れており、空は朱色に染まっている。雲は風に流されてゆっくりと動いており、涼しくなってきている。


「こんな時間か……さて今日はもう充分楽しんだだろ? 帰ろうか?」


 そういうと優麗は少しだけ何かを考えるような顔つきになり、口を開く。


「明治さん。あと一箇所だけ付き合ってもらえませんか? ここからですと、さほど遠くないですし」


 何か今までの我儘と違う雰囲気だ。断る理由もないので明治は快く了承した。

 二人が向かったのはこの街が一望できる小高い丘である。


 夕日が街を彩り、昼間とは別の姿を見せている。6月の涼しい風が二人の体を優しく包む。優麗の黒くて長い髪がその風に煽られて綺麗になびいている。

 優麗は街を丘から見ろして何かを感じ取っているような顔つきだ。


 そんな優麗の横顔は街と同じように夕日に彩られて美しく幻想的な雰囲気をかもし出しており、明治は再び見とれてしまう。


「この街、本当は高校に入学する時に引っ越してくる予定だったんです」


 いきなり、優麗がそのようなことを言ってきた。

 明治には理解が出来なかった。突然なにを言っているんだろう。そんな気持ちにとらわれる。


「優麗は別の町の人間だったのかい?」

「んー元々はこの街で育ったんですけど、中学一年生の時に少しゴタゴタがありまして」


 そう言われて明治は中学一年生の時を思い出した。

 隣のクラスにいじめられている女の子がいる。

 それを聞いた明治は、早速動き出した。

 まず首謀者を見つけやめるように言う。当然首謀者は知らぬ存ぜぬをを突き通したが、いじめの現場を押さえてさらに相手を追い詰める。あいては「あんたには関係ないでしょ!」とか「証拠なんてないじゃん」開き直ったりと逆切れを起こしたが、明治は何も言わずその女の顔を平手で打ちぬいた。


 もちろん首謀者の女は明治に食って掛かる。


「女の顔を叩くなんて何考えてるのよ!」

「証拠あるのか?」


 その一言で女は表情をゆがめて明治を憎々しげに睨みつけて足早に去っていった。

 しょせん中学生になりたての子供である。そういった意味では明治も同じではあったのだが、効果は絶大で、その日から彼女に対するいじめはなくなった。教師もその問題に対して本格的に動き出したことも一因となっているだろう。


 しかし、その話を聞いた彼女の両親が転校手続きを取り、結局彼女は学校から去っていった。

 結局何も出来なかったなと明治は少し落ち込んだが、自分の手の届く範囲で出来るだけのことをしたのだ。恥ずかしいことややましいことをしたわけじゃないと切り替えてそのことを忘れることにした。


 物思いにふけっていると、頭に雷鳴のごとく何かが落ちてきた。

 優麗の横顔を見ていると、その彼女の雰囲気を思い出したのだ。


「……」

「ん? どうしました明治さんあたしの顔をじっと見つめて……はっ! まさかあたしに見とれていたんですか? そうなんですね!」


「ち、違う! そうじゃなくて中学の時を思い出していたんだよ」

「中学の時ですか?」

「うん……いじめられていた子がいてね……転校しちゃったんだ。何にも出来なかったなーって」


 静寂が二人を包む。

 優麗はじっと明治のことを見つめている。

 やがて優麗の口から言葉が紡がれた。


「違いますよ明治さん。その子はきっと明治さんのおかげで救われました。地獄ともいえるような日々の毎日に明治さんは手を差し伸べてくれたんです。見も知らない太っていて気持ち悪いと言われ続けていた子のために明治さんは戦ってくれたんです。それがその子にとってどれだけ救いだったのか分かりますか?」


「優麗?」


「結局その子は転校することになりましたけど、新しい学校でうまく馴染めるように明るく振舞う勇気を明治さんから貰い受けました。思春期の女の子ですから外見も気を使わなければと一生懸命ダイエットもしました。おかげで楽しい中学時代を送れましたよ。でもたった一つ未練がありました。生まれ変わった自分をあの時、救いの手を差し伸べてくれた人に見てもらいたい。そう思ってこの街の高校の受験を受けることに決めたんです。明治さんが峰ヶ崎高校に入るかどうかは一つの賭けでしたけどね……合格発表の時、明治さんの姿を見て思わず声をかけてしまいそうになった自分を抑えるのは結構大変でしたよ」


 そしてかつての彼女と目の前の優麗が、明治の頭の中で一致する。


「あの時の……」


「気づくのが遅いんですから。一目惚れって言いませんでした? 外見に一目惚れしたんじゃなくて明治さんの中身に一目惚れたんですよ。あたしはまあ結局幽霊として生まれ変わっちゃいましたけどね」


 言葉が出ない。なんていったらいいのかわからないのだ。

 そのままぼーっと立ち尽くしてしまう明治。


「……やっと会えましたね。明治さん。あの時からずっと好きでしたよ」


 優麗の目から一滴の水滴が零れ落ちる。


「……」

「何とか言って下さいよ!」

「なんとか?」

「そういうボケはあたしの十八番です! 明治さんがやってどーするんですか!」


 目に涙を浮かべながら優麗は嬉しそうに明治のボケをたしなめた。


 自然に二人の距離は近づいていく。


 そして自然に優麗は明治の首に腕を回す。

 明治も普通にそれを受け入れた。


「綺麗になったんだね」

「結構大変だったんですよ」


 そして二人の唇が重なり合う。

 しばらくの間、ずっと重なり合っていた唇はゆっくりと離れた。


「……返事待たせてごめんね」

「いーえ、これで報われましたから」


 なにやら気恥ずかしい。慣れていないのでどうすればいいかわからないのだ。


 そこへヘリが墜落してきた。

 今まで作り上げた雰囲気がいっぺんに吹き飛んでしまう轟音である。


「な、なんだ!?」


 爆風から優麗をかばうように強く抱きしめて、音の方向を見やる。


「げほげほ……湊先輩ヘリで暴れないで下さいよ」

「わ、私は悪くないぞ! あの二人に触発されて優輝が変な事をしようとするから」

「後輩が目の前で愛をかわしているのに先輩である僕が負けるわけにはいかんだろう」

「死んでしまえ!」


「きゃー決定的な瞬間よ! これはもう明日の朝一の大スクープ! 峰ヶ崎高校にて新たなるカップル誕生! 見出しはこれで決まりね!」


 優麗の髪の毛がざわつき夜叉の顔つきとなる。


「皆様? せっかく愛する殿方と想いを添い遂げられようという瞬間にこの無粋な真似はさすがに許容できませんよ?」


「ま、待て優麗君。全部優輝が悪い!」

「三度目の正直ならず三度目の裏切り!?」

「ゆ、優ちゃんあたし達親友よね? お友達よね?」

「明治! 俺たちの友情は愛情に勝っているよな!?」


「……」

「……」


 二人の男女は以心伝心そのままに、明治は木のハンマーを優麗は幽霊としての力を全解放して、野次馬どもにその力を向けた。


「全くあいつらは……」

「本当ですよ全く」


 二人して似たようなことを口にする。

 目線があって、お互い気恥ずかしい思いに再びとらわれえる。


「帰ろうか?」

「そうですね」


 そうして二人は手を取り合い、夕暮れの街を家に向かって歩き出した。


 これは田井正明治と、その彼女である幽霊な彼女、彼方優麗、そしてそんな二人を取り巻く騒がしい連中のハチャメチャでドタバタなそんな物語である。





最後まで読んでいただき感謝します。

批評などでも構いませんので、なにか感想をいただければ幸いです。

ありがとうございました。

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