第15試合の前に―― コンビニなどの商品活用 3
スタッフルームに行き、着替えて帰る準備をしなくてはと他の従業員達にも言って回る女性店員。その彼女に香理が核心をつく。
「声を変えてもそのどこかやわらかく包み込むかのような声質までは変えられませんよ高美さん」
正解よと言って高美が奥に引っ込む。これからメイクさんにいつも通りの化粧をほどこしてもらうようだ。真奈に対して高美が声だけで理由を訊く。
「演技に自信はあったけど、どこでバレちゃったのかしら」
「いえ、自信ありませんでしたよ。カマをかけただけです。後は『女の勘』でピンと来た部分も」
高美がここにいるという事はもしかして? という事で全員が他の人物を調べ始めた。
「おはようございまーす」
もう一人このスタジオにバンドマンの格好をした人物がやって来てスタッフルームに着替えに。
「あっ、新海さん。おはようございます」
今度気にしたのはコンビニやスーパーなどPB商品を運びに来た配達人。帽子を使って顔を隠していたのがあからさまに怪しい。
「すいません」
「何でしょうお客様。よろしければ届いたばかりの商品をお渡ししましょうか」
微妙に声音を変えてごまかそうとしているのかもしれない。その彼に込流が問いかけた。
「あなた、清さんですよね」
「気づいちゃった? 番組開始までもう少しだけ余裕があるから誰がいるか当ててくれよ」
仕事をしている様子からでは彼や彼女とはわからなかった。きっとこの業種での仕事経験があるのだろう。高美は演技のためとはいえ、すっぴんだった。女性としては勇気のいる行動だっただろうと思われる。清はこの趣向ではすぐ見つけられる役だったのではないだろうか。清にまだ番組関係者がいると告げられて奏が場に馴染んでいる中年男性くらいの人に会釈する。
この場で違和感がなさすぎるくらいだけど、その人物かもしれない程度に感じる。でもその人特有の気がという訳で――
「コンビニオーナーさんとか店長さんにはこれくらいの年齢の方が多い印象ですがもしや。商品をてきぱきと陳列しているあなたは番参さんじゃありませんか?」
その人物は腕時計を見てから簡潔に
「確認してもらったので答えようか。良くわかったね。では最後に司会者さんを見つけてくれ。それから番組開始するからな」
番参審査委員長はいつものオールバックの様な髪型から七三分けにして、付け髭で変装していた。少ない労力で意外とわかりにくい変装だった。
「それとスタジオ内のコンビニセットで働いているスタッフ達は番組スタッフやADさんに協力して頂いておる。この中から見つけ出してくれ」
番組開始時間まで残り1~2分位しかない。奏達出演者全員が頭を悩ませている。そこまで時間がない状況で想が近くの風良に確認する。
「しっかりした理由がないのはどこか負けた感を覚えてしまいますね……。今回は受け入れるのもやむを得ないか」
それで誰をそう思ったのかと風良が先をうながした。
「安直なんですけど、後でスタッフルームに入っていった新海さんという方が四界 命さんじゃないでしょうか? 名前と背格好くらいしか共通点がないのでどうかと思うんですけど多分」
スタッフルームから出てきた他店員より新海と呼ばれていた人物がすぐ答える。
「とっさの判断で答えてもらって正解ですよ、想君。クイズ番組じゃないから早速番組開始と行こうか」
番組開始から約10分、さっきの審査員達がコンビニのスタジオセットに隠れているので探しだして欲しいという風にケーブルテレビ番組上では流されていて。その映像は奏達が来る前に編集されているものだ。
「視聴者の皆様、少しでもお楽しみ頂けたでしょうか? 全員揃った所で改めて番組開始致します」
今回は試合と違って、出演者達には自由な発想で料理を作ってもらいたいと連絡が回され済みである。




