第14試合目 3
風良は真奈に、奏は有音にそれぞれ発破をかけられた。情熱を内包するタイプと、情熱を表に出すタイプという彼らの性格の違いも面白い。
「さて、エールを送っていただいたお2人さん。試合開始の合図をさせて頂きますね。制限時間は1時間になります」
試合開始直前に番組スタッフが司会者の元へ走って来た。
「ただいまの風良さんによる確認ですが、ご飯の吸水についてでした。これは風良さんからの依頼ですね。土鍋は約30分、炊飯器に入っている方は約2時間吸水させたものだそうです。ご飯を美味しく炊く方法別に色んな炊飯器が用意されていますから」
使われない余ったご飯はこのケーブルテレビ局の別番組『郷土飯』で使われるとのこと。番組内容も全国から推薦を受けて番組参加の一般視聴者代表達が<おにぎりにどんな具を入れるの?>がテーマらしい。それなら無駄にならなさそうだとご飯マイスターの風良は安心した。
「そういえばご飯に合うおかず《麺料理》の対決と考えてもおかしくないおかず対決になったね。お米に対するこだわりで勝敗を決するくらいの勢いで君に挑むよ」
こだわりで追随するものを許さないという様子で自信満々な風良。
「すでにご飯の炊き方までリクエスト済みでしたか」
「まあね。僕が誰かと対決する事に決まったら用の準備を前から頼んであったから」
先輩で副部長な彼には負けたくない、師弟の関係を逆転するつもりでと、奏もベストを尽くすつもりである。
「番組が柔軟に対応しているんだなあ。何にしたって、僕も麺類とご飯のバランスを要に作るつもりですよ」
番組開始されたので風良がすぐ作業に取りかかった。美味しいご飯に合わせる麺料理を作るため、空いた時間を有効活用する風良。まずは土鍋に入っていた吸水用の水を捨てて、冷水880cc入れ直す。それを火にかけて沸騰するまでの時間がある。無駄にせず、長ネギを3cm長さに切ってしょうがは小さじ2位の量をすりおろす。きゅうりも細切りにしておいた。
「まずは土鍋でご飯を作りながら麺料理にとりかかっている風良さんから。調子はいかがでしょうか?」
司会の命が料理に取りかかったばかりの様子をうかがう。
「土鍋のお米、冷水から沸騰させるというのがワンポイントだったりするんですよ。おっと、沸騰してきたので中火に落として5分待ちます。その間にひき肉を炒めよう」
お米の美味しさを引き出す方法を実践しつつも、メインの麺料理の具を着々と準備していく。熱したフライパンに食べやすい大きさに切った鶏ひき肉約200gを入れて炒め出した。
今度は反対側で下ごしらえしている奏に声をかける。
「奏さん、まずは麺料理に使う具からですか?」
「はい、そうです。でも切り終わったんで命さん、一緒にどの炊飯器のご飯を食べるか選びませんか? なーんてね」
麺料理に使う炊飯器の中のご飯には様々な工夫がされている。炊飯器も進化を続けているし、選ぶのも一苦労かもしれない。少量のもち米が入っている炊飯器ならもちもち感がアップしているだとか、調味料(例えば塩小さじ2弱程度)でといった方法が数多く。




