第13試合目 8
「優しい味とか、旨味や辛味、塩気とか私なりに工夫したんですけど足りない部分があったんですね。負けてばかりは悔しいです! 今度の出番の時には必勝を掲げたいと思います」
敗北から学ぶ事も多かった両者。勝ちたいという気迫が強い彼女達だからこそ最後までもつれたのか!? まだまだ伸び盛りだからこそ香理は悔しさをバネに飛躍的な成長を遂げる日が近いのではと思わせる。
「出演者と私、それと審査員の方々で多めに作ってもらった料理の実食をして何かを感じたいと思います。それではそろそろ時間がなくなってまいりました。次回も注目の一戦を~」
命がカメラの方を向いて会釈した所で番組収録OKサインが出た。
~~勝負後の2人~~
「負けてしまいました。とっても悔しいのですが理由もわからずさわやかな気持ちも覚えるのは何ででしょうね」
「それは多分、今の実力をほぼ出しきれたからでしょうね。私も判定勝ちだった反省はするけど今の嬉しさを受け入れるわ」
香理は自分では悔しさを押し殺す表情が出るかと思ってそういう表情を出さないように意識しようと考えてはいた。でも満足感の強さから今はにこにこしている。
高美も思うところがあるとはいえ、頬を緩ませて嬉しいという気持ちを大切にしたいと思った。どんな勝利でも勝利の味を知ったので負けないと心に決める。
「あっ、そうでした。軽い火傷ってアクシデントの時は本当に助かりました。お礼が遅れてごめんなさい、ありがとうございます」
「礼には及ばないわよ。全力を出してもらうためですもの。でもこちらこそありがとう」
やはり助けた本人からの謝罪は誠意が分かる分、助けて良かったと思わせる。対決を楽しみにしているからこその行動で、今回のほぼ引き分けという評価。つきつめたいものがわかった気がした。
香理は今度の対決までには料理の方向性をどうしたら良いかをつかもうと思った。相手の高美に得意分野を伸ばすヒントとして、『誰のために』という料理に込める想いについて教えてもらう。
~~帰り道にて~~
部活中はちょい足しの可能性を調べたり、食の知識を勉強している奏と風良を聞き役にアレンジ料理が好きな真奈と有音が今回の試合について話している。
「アレンジ料理について話そうと思うけど、その前に奏、審査員役お疲れ様」
「うん、ありがとう。審査する度に新しい何かを得ている気がするんだ。その何かを料理の中に表現できると良いんだけどまだそこまで……」
審査員という大役を果たした奏を風良もねぎらった。
「僕は独学で料理の上達を狙っているけど、君のような経験の機会がないからな~。それでも先輩の意地としてどうにかしようとするさ」
今のタイミングでうってつけと判断した真奈が『アレンジ料理』について語る。
「アレンジに使う料理によるけど下味にこだわりを持つ研究もしようかなと思ったわ。有音ちゃんは?」
「このおかずを作ったんだなって見た目で、違うおかずだったというインパクト。これは見習いたいくらい驚きました」
やはり彼女達は特に今回の『アレンジ料理』に影響を受けたようである。




