第8試合 風良VS高美 6
一息ついて、今度は奏が高美の敗北の原因を審査員達を代表して述べる。
「高美さんの料理も風良さんの物とひけを取らない出来だったのは確かでした。そぼろのからみ具合良し、野菜もしっかり取れる、良い面はそんな感じです。クセのある味に辛み、後はメジャーなそぼろ料理だからこそ独創性的にマイナス要因になったところでしょうか」
清と奏に審査後のアドバイスなどを対戦者2人に伝えてもらった番参審査委員長が補足説明をした。
「大半は先程通りだが、1つ伝え忘れがあった。香理君の体調に留意した部分があったかどうかという点も考慮に入れていると理解してもらえればと思う」
風良の大根ラーメンは今回のシメに作った方法以外にも野菜スープにするとか出来そうで食べやすそうだったし、高美も手作りのヨーグルトドリンクで香理が『そぼろしょう油焼きそば』を少しでも多く食べれるように工夫していたというのをわかっていただけただろうか。
すでに水準以上の料理技術があるからこそ、高美は家庭料理の娘というネームで料理(本やブログなど)のインタビュー記事とかで取り上げられている人物だ。そんな彼女だがテレビ番組でまさかの連敗!? この結果に高美は焦りをつのらせていた。
「前の勝負も含めて不運な部分はあったわ。だけど料理人兼料理評論家として今のままじゃまずいわね」
風良は高美が鬼気迫る危機感を持ったのを感じ取って、今度彼女と当たる人物は相当苦戦するだろうなと思った。
「これは正に接戦でした。両者の料理は早めに食べた方が良いので全員で食べさせてもらいましょう」
試合自体は終わった。風良はこの料理を覚えた数年前からたまに自分でもお昼ご飯に作るようになっていたのでこのラーメンを評価してもらえているのが素直に喜ばしい。どこかで見たものを参考に創作しているつもりとはいえ、せっかく教えた事があるのにそういった友人知人があまり作ってくれなかったから。この番組のおかげで作ってくれそうな人が多くなりそう。だからわくわくどきどきしていた。
「今回はルールの穴をついた形になっちゃいましたけど偶然でそんなつもりはなかったですよ。余りのスープの活用例として改めて野菜スープを提案します」
一方、高美の方は――
番組の終わりかけのその時、高美が今度こそはと策を練っているのを口に出してしまった瞬間に有音の変化が!?
「う~ん……定番は定石だけど、失敗しない料理作りは最近はずっとしている? 創作料理を作るには失敗を恐れちゃダメよね」
「負け惜しみはそれだけですか?」
考え事をしていた高美だったが、有音のその言動にはいつもの彼女だと思えず、聞き間違いかなと戸惑った。
「えっと。何を言ったかもう1度教えてもらっていいかしら?」
質問を又聞きされた有音が口元を妖しくゆがませる。
「わかりませんでした? あなたの実力はその程度、工夫もありきたり。連敗しているんですからもう審査員を降り――」
ちなみにテレビ放送は有音がどこかおかしくなる前に終了していた(一部編集したかもしれないが)
有音が高美を悪く言いかけた問題は最初に真奈が口を塞いだ。風良と少し遅れて奏も合流し、有音以外の料理研究部メンバーで高美に頭を下げながらケーブルテレビ局を後にする。
有音の様子を見た出演者達の様々な感情が影響していそうな微妙な場の空気。
――いったい有音の身に何が起こってしまっているのだろうか?




