(まもなく)主人公達、ちょい足し勝負 1
「ちょっと目を離せないから待っていてね? 魔法の温度は……と違うわね。温度と油の量は変えずにコロッケの端をつける。いいかも! 後はタイミングが命ね」
その女性先輩部長さんが、制服のポケットからミニタオルを出して汗をぬぐってから奏と有音に向き直る。
「入部してくれるの? 嬉しいわ。歓迎しちゃう、今は仮入部期間だけど活動参加していって! それとこの揚げ物の味見もしてくれる、風良君と2つずつのつもりだったけど1つずつになったのもちょうどいいし」
部長さんはまな板と包丁で料理している姿が似合っているなと奏は思った。つまりは家庭的に感じたということだ。
「部長さんって何だか愛する人に料理を作ってあげたいとか、アット・ホームな雰囲気がありますね」
有音も料理研究部の部長さんにはそういう印象を持ったようだった。
「否定はしないわ。改めて私は板野真奈、彼が飯合風良君ね。それじゃあなた達の名前もお願い」
真奈部長に聞かれたので、2人とも自己紹介する。
「はいっ、僕は響奏っていいます」
「私は包味有音といいます」
2人の自己紹介を聞いて、真奈部長が何かを思い出そうとしているかのようであった。
「あら? その名前は確か……理事長の氷山番参さんに聞いたのだけれどご存知?」
あの審査委員長がこの学園の理事長をやっているのも予想外だったし、番参さんが真奈部長と知り合いだったことに驚きを隠せない。
「招待状よ。あなた方の見た料理コンテストちょい足し部門で、奏君と有音さんで勝負するようにですって」
奏はまるで自分達がここに来ることを見透かされていたようで少し動揺していたが、有音は深く考えたりしないことのある性格で、奏と争えることに燃えていた。
「えっと、僕が有音と勝負しなきゃなのか」
「私は楽しみ! 奏の発想に今度こそ勝てるかもだし。自信があるっているより女の勘?」
真奈部長がそんな有音を呼ぶと、ちょい足しクッキングの知恵を授けようとした。料理の腕前は、奏の方が上であろうことを言葉や仕草などから判断して真奈部長が有音に助力を申し出たのだ。
「さすがに実は私達には教えられているけど何の料理にちょい足しするかを教える訳にはいかないわ。ヒントっぽいことなら教えられるけどね」
そこで、風良副部長が、奏に助力を申し出た。
「僕も料理知識が豊富って自負があるよ。お互いの知恵を交換しあって良いものを作れる様に頑張っていこう」
この話については一度まとまった気がしたので、奏が今日この部室でこの部活(料理研究部)がやっていたことが気になったので尋ねる。
「そういえばこの料理研究部は揚げ物まで作れるんですね。ビックリしましたよ!」
有音と一緒に話をしていた真奈部長が答えてくれた。
「どんな学校でも普通なら焼く・煮るが基本であまり揚げ物を作らないでしょうし、わかるわ。これが可能なのは番参理事長のおかげね」
それからの約1週間、奏達は料理研究部に足を運び、真奈部長と風良副部長に『ご飯の友』『食パンレシピ』を考えるように部長達と4人で、実践で料理をして皆で楽しんだ。正式に入部を決めたのもその頃である。
そして週末――
奏と有音があの見学をしていた料理コンテストで作り手として参加する流れになる。
前と同じように料理スタジアムへ足を運んだ奏と有音。違うのは、調料学園の部長と副部長な先輩達と一緒にいること。そして何より、2人が観客に見られながら、「ちょい足し」をする流れにプレッシャーを感じて奏達2人ともドキドキしていた。
「ようこそ。料理スタジアムへ。観客の皆様、ありがとうございます! 今回の審査も番参・清・高美3名で行うものとする」
その後で、審査委員長の番参が2人に期待している裏付けと取れるかもしれない口上を述べる。
「奏君と有音さんはなかなか見どころの有りそうな学生達だと感じておる! これで料理勝負参加人数が整った」
審査委員長が意味深な発言をした。
主人公とヒロインによるちょい足し勝負が開始されます。
良かったら読み進めてもらえると嬉しいな^^




