第6試合 有音VS込流 2
「次はおなべを使っていかないとね、込流さんも使う調理道具が同じかー」
なべに大さじ2程サラダ油を熱するのは同じで、材料を炒め合わせるという工程で同じ部分はある。有音は相手の手さばきなどが気になってしまうものの自分の作業に集中しないとって考えで迷いを振り切った。
「私のやつの作り方はまずは玉ねぎ、切った豚バラ肉・にんじん・じゃがいもの順に入れていくっと~」
玉ねぎ独特の臭いが出てきて透明になるまで火を通す、頃合いを見計らって食べやすく切った豚バラ肉を投入。玉ねぎに火が通りすぎないように混ぜて肉を下に入れた。有音はそこまでタイミング良く終わらせる。
「油が回って肉と野菜がつややかになって来た! ここで味付けしなきゃ」
煮たった所で火を弱めて有音がアクをすくい取っていく。えぐみで味が落ちる事を理解しているからこそ当然の動きのようになっていた。味付けにだし2カップ、酒・砂糖・みりん各大さじ1ずつ、醤油大さじ2くらい。有音は味見して最終的に味を整えた。
込流の料理段階はどうだろうか。
「香味野菜と味付けを早めにするのが今日の料理の命。上手く混ぜあわせんといかんタイ」
どうやら込流の料理の要は初期段階のうちからのようだ。
「いかがでしょう、込流さん。自信の程は」
有音が作っている最中は集中のあまり、司会者が話しかけても気づいていなかったのが真相である。命は司会者としての職務は果たそうとはしていた、込流の方はしっかりと質問に応じる。
「もちろんあるタイ。1つ1つの材料にしっかりと味を染み込ませられれば」
込流は司会に応対しつつも、味付けは体が覚えているようでしょうがと合いびき肉に火を通した後に酒大さじ2+砂糖としょう油大さじ2と1/2を加えて混ぜ合わせていた。そして一番大切なじゃがいもにそぼろっぽくなった豚ひき肉を絡ませていく。
「後はアクを軽くすくい取って、約15分程落としブタをして煮こむだけタイ。食べる直前に片栗粉少量でとろみをつけるのもいいのう」
うかうかしていられないと込流は考えている。料理の腕前ならまだ結構な開きがある、でも料理に手を少しでも抜くのは……あっという間の成長で迫ってきそうな勢いを有音から感じていた。込流の考えている最高の形は『野菜の声』が聞こえるというものだ。そんな位置にはまだまだ遠いが……
「そろそろ良いかな。確認してみよっ」
煮込んでからある程度の時間が経過しているので有音は菜箸を差して野菜にしっかり火が通っているか調べてみて、もう少しやわらかい方が食べやすいかなと思った。結局はキリがよくて覚えやすい後5分くらい煮込めばいいかに落ちつく。
有音と込流の手が止まって満足しているかのような表情を浮かべ出している気がした司会者命が審査員達に審査を開始してもらおうかと促した。
「どうやらお2人とも料理が完成しそうですよね!? まだだとしたらお知らせ下さい」
2人が何も言わない時点で審査の進行をする司会者。番組スタッフが運ぶつもりで待機していたが対決している人達が持って行きたいと言えば断る事はない。有音・込流ともに審査待ち料理テーブルに運ぶ。
「本日は審査待ち料理テーブルの手前に置いた有音君の料理から頂こう」
『豚肉とじゃがいもの炒め煮』を番参審査委員長が咀嚼して吟味している。
「う~む、何だろうか。このホクホクしたじゃがいもや他の材料を味わっている時に感じるどこか素朴な感覚は」
その審査委員長とはどこか違う評価を清と高美両審査員がした。
「煮崩れを起こしていないし、それぞれの材料も食べやすいね」
「少し煮崩れている方がしっかり味を感じるかもしれないわ」




