ちょい足し編2~料理研究部入部
こういうものを見せられては奏と有音は料理をこういうイベントで試してみたい気分にかられる。そんな彼らに、番参が声をかけた。
「いかがだっただろうか。君達さえ良ければ次の試合は君達が勝負しあってもらえないか? ちょい足しで頼むよ」
彼ら二人とも、失敗する怖さ以上にやる気の高まりが強い。
「はい! やらせてもらいます。ところで料理勝負とかは?」
「ちょい足しというのも一興だと思っていてね。基本的には料理勝負を考えているのだが、後、何名かメンバーが必要でね。態度を明らかにしていない者もおるし」
有音が聞いてみたいことをそのまま口に出した。
「私達のやる気を買ってくれているということですか?」
番参がおごそかにうなずいた。
「頼んだよ、勝負日時はおって連絡しよう」
奏達は有意義な時間だったと満足しながら帰っていった。楽しそうにさっきのイベントについて話しながら立ち去っていく彼らに聞こえるか聞こえないかくらいの声で番参がつぶやく。
「彼らが本気で好きなことを部活でしたいと思ったのなら、あの二人に出会うだろう。レベルアップ=刺激しあえるかもしれん」
奏と有音、授業中は対照的である。奏は苦手な教科の苦手な所はなかなか直せず苦労している平均的な成績(家庭科と国語は得意)に対して、有音は優等生と呼ぶにはまだニアミスの目立つ5段階評価成績の「4」ばかりの惜しいタイプだ。
「奏、この調料学園の部活は何に入るつもり? 私とあの部活見学に行こうよ」
ここ、調料学園は北の大地にある自然豊かな学園である。農作物栽培にも力を入れている。授業に農作業があるくらいに。学園の1年クラスの廊下にある部活掲示板のそばで奏が有音の意見に応じる。
「やぁ、有音。もしかしてあそこのこと言ってる? それなら入学案内を見た時からこの部活に入りたいって声をそろえたねそういえば」
特にいつも通りな感じでつつがなく授業が終わって放課後になる。奏と有音は今回、同じクラスの同じ班だったので(くじ引きだったのに有音の運は良すぎ)、2人とも率先して掃除を開始する。他の班員4名もサボっていると思われるのが嫌だし奏達に触発されて自主的に分担して掃除を始めた。
面倒くさがりがいなかったのは、彼らのことを小学校の時からよく知っている者で班がかたまったからかもしれない。とはいっても、同じ学校の生徒の9割は奏達の料理に魅せられたことのある同小学校卒業者だから大抵問題が起こりようがなさそうなクラスなのだが。
掃除を終わらせた奏と有音、2人ともどこかワクワクした気持ちで2階にある(ちなみに1年生の教室は3階)「家庭科室」のドアを開いた。
「こんにちは、ここって料理研究部ですよね? 僕達入部希望者なんですけど」
先に部屋の中の先輩に声をかけたのは奏である。この学園の部活はここに最初から目をつけていたのだ。
リズミカルにキャベツの千切りをしている愛想の良い男の先輩が顔をあげた。
「入部希望者? 僕は飯合風良、よろしく! 得意なのはごはん料理ね。あっ、ごめんごめん部長~~」
先程の先輩、初対面の印象は活発でアウトドア派という感じだった。その先輩が呼んだ先には揚げ物の温度を図っている女の先輩の姿が。