第16試合目 5
「ほうっ、これはなかなか使わない調味料で作られたメインおかずだのう。もやしと豚肉が合うのは『言わずもがな』だが、なかなかに面白い。スープのまろやかさとこの豆腐料理も良いな。詳しくはまた後で話そう」
命が続けて清と高美から味わった感想を聞いた。
「こういう山椒の味わい方があるんだなって思ったよ。山椒の強い味の主張をチーズのコクで口になじみやすくしている感じを受けた」
「確かにそうね。この献立は1つの料理ばかり集中しないで。バランス良く食べてねと言われているかのよう」
さて、相手の風良は褒められていたような気がするけど、自分の料理に対するこのコメントはどっちの意味だろうと気になって気になってといった様子だ。
今回の出演者達による料理の審査まで間もなくである。審査員3人がボタンを押すだけで料理の採点が表示される。司会者がそれでは審査をという訳でボタンを押すようジェスチャーで頼む。
もやしと豚肉のさんしょう炒め (有音 56点)
清 味総合 10 独創性 10
奏 味総合 8 独創性 9
番参 味総合 9 独創性 10
27 + 29
鮭とキャベツのごま炒め (風良 55点)
清 味総合 8 独創性 10
奏 味総合 8 独創性 10
番参 味総合 10 独創性 9
26 + 29
久しぶりに両者とも創造性を評価されている感がある。味についてもかなり満足度が高かったようで良い審査結果になったのではないだろうか。しばらく出なかった55点以上の壁も破れたし。
「何でかいつもより盛り上がっていますね。いや、今回のお2人がバラエティー豊かな料理を作ってくれたからだと予想は出来ますが。では、彼彼女らの勝因敗因について教えて頂けますか?」
司会者に聞かれて、番参審査委員長が一番手で語り出した。
「有音さんと風良君、天晴であった。数試合ぶりに高得点勝負結果になったの。そうじゃな、まず有音さんの勝利になった主な点は山椒を上手く使った点じゃ」
メインおかずを引き立てる汁物としてこだわったスープはどうだったかと有音が積極的に聞く。
「コンソメとチーズの味わいに加工肉を入れてからキャベツを入れたスープのお味はいかがでしたか?」
質問を受けた番参が、そこも良かったと褒めた。
「ふーむ。チーズを入れるタイミングが牛乳の沸騰間近だったのだろう。そうじゃないとこの味は出ん。それからほうれん草を使った豆腐料理の優しい味わいも好印象だった。ほうれん草と豆腐から出る水分を考慮して上手く味の調節が出来ていたと思うよ」
今回の解釈は、山椒の様な香辛料のピリッと感。粉チーズのコクやなめらかさ(有音はパルメザンチーズをすりおろした感じだが、気づいてもらっていそうだ)、そして、ほうれん草でいり豆腐をという訳で、口溶けまたは舌触りの良さが評価されたのだと思われる。




