第16試合目 4.
「残り時間10秒前です。やり遂げたと思える出来になったでしょうか」
どうやら有音も風良もしっかりとミスもなく作り終えられたようである。審査用料理テーブルに置いたのが早かったのは少しの差で風良の様だ。その為、有音は保温機能装置付き審査待ち料理テーブルに配膳した。
「いつもは時間ギリギリだとスタッフさんが後片付けをしてくれていますが、今日はこちらでやらせてもらいますね」
いつもなら即刻審査に入る所だろうが、有音が後片付けを始め、風良も無言で黙々と後片付け作業をしているので司会者としてはお礼するしかない。
「これはこれは後片付け頂き、助かります。ただ、風良さんの料理が審査前に冷めてしまいませんか?」
保温機能付きの審査待ち料理テーブルは広いため、置く事は可能だ。ただ番組的には審査を進めてもらわないと番組編集が大変だという理由もある。番組側で先週の勝負振り返り映像の準備を始めた。
これは出来る人が手伝いに、という訳で風良に後片付けを代わる旨を告げて奏が料理道具を洗う事を受け持つ。
「わし達が持って行って構わないだろうか? では混ぜご飯を。後は頼むよ」
番参審査委員長が頼んだのは、清と高美の2人のようであった。
「僕はこの玉子焼きを持って行かせてもらうね、高美さんはスープをお願いします」
今日は応援席側にいる出演者達や審査員達の助力もあって、結構早く審査に移れそうである。
「では審査をするために食して頂きましょう。後で料理採点もよろしくお願いします」
3人とも食べやすい場所に料理を置いて味見。食べるだけ食べてから感想を風良を始め、視聴者様方に伝えた。
「うむっ。鮭とご飯、ダシのバランスが絶妙であるな。この玉子焼きも鮭フレークを使っているようであるが、混ぜご飯と一緒だと鮭ご飯の味にも深みが出る気がする」
審査委員長が評価をメモに記したので、清と高美が採点をつけるために食べさせてもらう。
「この野菜スープ、面白い具が入っているね。どれも美味しく頂いたけどこれはインパクトが強い」
「私もスープにこの具を!? と思ったわ。でも意外に混ぜご飯に使っているシソ特有の風味とも合うって感想よ」
風良はもらった感想からそう思ってもらえたんだなと確認する。冒険かもしれないと考えていたスープが結構良さげな評価をされているのには安心した。
風良の料理に関する審査が終わったようであった。今日はいつもの様にスタッフがお皿を洗い場に持っていって、次に有音の料理を食審査という流れが遅れている。その遅れを軽減させてあげようと風良が手を貸す前に真奈が動いていた。円滑に番組を進めたいからか、命も手伝っている。
「はい、有音ちゃん。こっちにも回してちょうだい。持って行くわ」
「わかりました。それではお願いします」
先程同様、審査員達がセルフサービスの様に料理を持っていこうと思ったが、真奈と司会者が配膳してくれそうなので待つ事にする。その間に、有音と大学生な男スタッフで皿洗いをすませた。
「それではいただくとするよ」
今回は出演機会のなかった真奈や、司会者達の配膳によって審査の準備が整った。なので、番参審査委員長が有音の料理を口に運ぶ。どんな事を言われるかとドキドキである。




