1話 救出
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申し訳ありませんでした。
すさまじい衝撃と揺れの中、その場にいた誰もが何が起きたのか理解できなかった。
少しして、ようやく突っ込んできたモノがサイズは小さいものの戦艦だということに理解した。
その戦艦のPU用ハッチが開き、そこから黒い影が飛び出してきた。そして影は奴隷にされかけている人々の周囲を固めていた用心棒6人を一瞬のうちに排除した。
影に見えたものは、漆黒のパイロットスーツに身を包み、ヘルメットのバイザーもおろしていることで全身黒ずくめのソウマだった。
ソウマは奴隷にされかけている人々に顔を向け言った。
「奴隷に身を堕としたくないのなら、あの艦の中に走れ」
彼らは、呆けていたが自由になれる可能性があることがわかると、 一斉に戦艦“弑神”の開いたPU用ハッチに拘束されている足で必死に走り出した。
「逃がすかよぉっ!」
進行役だった男が、奴隷しようとしていた人たちの首の装置に電気を流そうと、手の中のリモコンのスイッチを押しこもうとした瞬間、男の手にナイフが突き刺さった。
痛みで男がリモコンを取り落すと、そのリモコンにもナイフが刺さり破壊された。
それは、進行役の男の行動を見たソウマによって投擲されたものだった。
「ちくしょう、ふざけやがってぇ…」
手にナイフが刺さった激痛に顔をゆがめている男は足元の存在に気が付いた。
そして、ナイフの刺さっていない方の手に銃を握り、足元に横たわっている先ほど自分に反抗した少女に銃を向けた。
「てめぇ、この女の命が惜しければ動くんじゃねぇっ!」
男は、ソウマが立っていた場所に目をむけた。
しかし、ソウマは瞬きの間にに男の目の前にまで踏み込んでいた。
男はとっさに銃を向けようとするが、ソウマはその手を蹴りを叩き込んで粉砕した。
そしてソウマはそのまま拳を構えた。
男の顔が、激痛ではなく恐怖によって歪んだ。
「下衆が」
ソウマはそう吐き捨て、拳を叩き込んだ。
メキィ、ボキィ。男の胴体にめり込んだ拳の下から肋骨の砕ける鈍い音が響いた。男は血反吐を吐き、崩れ落ちた。
動かなくなった男を蹴り飛ばし、彼は横たわっていた少女のそばにひざまきヘルメットのバイザーを上げ、優しく声をかけ抱き起こした。
「もう大丈夫だ。痛むところはないか?」
少女は目の前の出来事をまだ理解できていないのか目を見開いたまま固まっていたがソウマに抱き起こされ我に返ったように瞬きをした。
「大丈夫か?」
もう一度ソウマが語りかけると、少女の黒曜石のような瞳から涙が溢れた。
ソウマは一瞬慌てたが、すぐに彼女が怯えていたことを思い出した。
彼はそっと彼女を抱きしめ、頭を撫でた。
「怖かったのによく頑張った、よくあの男に反抗した。もう大丈夫、大丈夫だ」
腕の中の少女は、ソウマの胸に顔を押し付け安堵の涙を流した。
そのとき、
『マスター、全員収容完了しました。あとは、マスターとそこの少女だけです』
と“弑神”から報告された。
「わかった、すぐに俺たちも入る。俺たちが入り次第発進しろ。君、ちょっと失礼するよ」
そういうと、ソウマは少女を軽々と抱き上げた。
「キャッ」
少女の可愛らしい声が聞こえたが、ソウマはそのまま開け放たれている“弑神”のハッチに駆け込んだ。
それを確認した“弑神”は、ハッチを閉めスラスターを逆噴射し、自らが開けた穴から抜け出した。
まだコロニーからは、オークションの客たちは慌てふためいており、脱出していなかった。
「“弑神”全砲門開け。照準、前方コロニー及びその周辺シャトル、艦。」
『了解。コロニー、周辺シャトル、艦ロック完了』
その言葉を聞き、ソウマは最後の指示をだした。
「 撃て 」
“弑神”のすべての砲門から光が奔った。
“弑神”から放たれた弾やミサイル、ビームは奴隷商人や腐った客たちがいるであろう場所に突き刺さった。
次の瞬間、照準されていた全てのものが炎に包まれ、爆発した。
それは、あたかも罪人たちが地獄の業火によって、焼き払われているような光景であった―――-