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ひかり  作者:
1/1

光と羽と。

なぜか、冬の匂いがして目が覚めた。








その日、わたしは何にも集中できなくて、ずっと窓から空を見ていた。見かねた由梨が話しかけてくれた。


「なんかあったの?もしかして、彼氏とケンカとか??」

心配そうに私の顔を覗き込む。

「大丈夫。なんもないよ。」

わたしはよくできた作り笑いと共に、そう返した。

由梨は、そっか、とそれ以上詮索はしなかった。

「あ、あんたの彼氏きたじゃん。なんか呼んでるよ?」

由梨が向いた方向を見ると、結斗がわたしを手招きしていた。

「いってきな〜」

にやにやしながらそう言った由梨に少し頬を膨らませながら、わたしは結斗の元へと向かった。

「あれ、なんか今日元気ないね?大丈夫?」

「結斗は私が元気ない時、すぐにわかっちゃうんだね」

「うん。誰よりも見てる自信しかないから。」

「何それ」

笑いが堪えきれなくなり、わたしは思わず吹き出した。

結斗も笑った。それだけで少し元気になる気がした。


ひとしきり笑ったあと、結斗は急に黙って、私をぎゅっと抱きしめた。

「あんまり無理しないで。なんかあったら、真っ先に頼っていいから。」

「うん。わかった」

わたしは結斗を抱きしめ返しながらそう言った。


家に帰ってからも、わたしはずっと上の空で、ぼーっとしていたので、ままは気を利かせて早めに休ませてくれた。

眠ればきっとよくなるよ、というままの言葉を思い出しながら、わたしはベットで眠りについた。



夜。


わたしは眩しくて暑くて、苦しい夢を見た。

光る何かが、わたしを追いかけてきていた。

なぜかわからないけど、わたしは それ がとても怖かった。

走って走って、息が切れて、それでも走り続けた。

でも足がだんだん動かなくなって、私は白くて冷たい地面に倒れた。いやだ。いやだ。助けて。誰か。


光はわたしの口からわたしの中に入った。

全身に広がっていく光の感覚が気持ち悪くて、わたしはもがいた。がりがり首をかいた。血が出てきたけれどそんなことは気にしなかった。光は完全にわたしに馴染んだ。

冷たい汗が流れた。わたしの肌は病気のように白く、髪の毛は明るい金髪になってしまった。

何より私には一番の変化が訪れていた。

背中に大きな羽が生えていた。

イラストとか、漫画とか、昔の絵画とかに出てきそうな、羽。鳥のような大きな羽。


わたしの目からは涙が流れてきた。きらきらと輝く涙。

さよなら、どこかからそう聞こえた気がした。



わたしは飛び起きた。手にはお気に入りの布団の感覚。

家だ。私の家だ。

髪の毛は茶色がかった黒、地黒の肌。

この体は、紛れもなくわたしのものだ。

よかった。ただの夢のはずなのにわたしはなぜかほっとした。

時計はまだ朝の3時を指していた。もう少し寝れそう、そう思ってわたしは仰向けに寝転び直した。


「いたっ」


背中に鈍い痛みが走る。すぐさま起き上がりわたしは背中に手を当てた。何かしこりのようなものがあった。肩甲骨のあたり。

わたしはだんだんと過呼吸になった。

そんなはずない。あれはただの夢。現実な訳がない。

洗面台まではしって駆け降りた。

電気をつけ、急いで上の服を脱ぐ。

横からしか見ることはできなかったが、それ はわたしの背中に存在していた。

手羽先のような、皮を剥がされた鳥のような。

小さな羽のようなものが、生えていた。

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