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サムライ✕ACCEL  作者: ミミササ
第二章・九醒王編
58/59

第58話 宗治の兄

 だいぶと遅れました。父が入院したり色々ありましたが58話をお楽しみください。


 ――第二支部。

 支部の配属から数時間後、宗治と彩希はテンザイ府にある第二支部へ着任していた。

 目の前に立つのは立派な屋敷、説明が無ければ貴族が住んでいるのか歴史的価値のある建物なのかわからない程だ。


「ここが第二支部か」

「なんか……獨録街とは違った雰囲気ね」

「ああ……」


 第二支部に到着した宗治たちは獨録街との違いに少し面食らっていた。

 それもそのはず、獨録街はテンザイ府から少し離れた位置にあるスラム街だ、雰囲気どころか街並みが違うのだって当然だ。

 帝国の歴史が詰め込まれたこの都市は、近くにスラム街があるとは到底思えない程大きく発展している街だ。


(百鬼兄弟の一件で何もできなかった第二支部……。さーて、どんな奴がいるのかお手並み拝見だ)


 宗治の中でいたずら心がわく。百鬼兄弟の件は本来新人である宗治達の仕事ではなかった、本来は近くにある第二支部の案件だったのだが敵の警戒心の高さから宗治達新人に仕事が与えられた。

 案の定ピンチにピンチを重ねてようやく倒した初任務、任務を終え冷静な今だからこそ少しだけ腹が立つ。


「……アンタ、また変な事考えてるでしょ」

「変な事ってなんだよ」

「碌でもない事よ、アンタとコンビ組んでたら流石にわかるわよ」

「碌でもないか、まあ当たってると言えば当たってるな」

「頼むから問題だけは起こさないでよね」

「わかってるよ」


 適当に返事をして、屋敷の門番をしている男のうちの一人に話しかける。


「すみません」

「はい、なんでしょうか」

「ここが第二支部で間違いないか?」

「そうですが、八雲 宗治様と愛宕 彩希様ですね?」

「ああ」

「お話は伺っています、中へご案内いたします」


 門が開くと石畳の道が屋敷の入り口へと続いている。中へ入っていく男の後へ続いて行く。

 中には巨大な庭園があり、構成員の何人かが見回りをしている。先の襲撃を受けたであろう場所がちらほらと見える、事情を知っているから何とも思わないが傍から見れば反社のそれだろう。

 何も考えずに歩いていると後ろを歩いていた彩希が肩を叩く。


「ねえ」

「なんだ?」

「ここって本当に第二支部なのよね」

「そうだ、って言ってたぞ」


 彩希は少し不安になる。

 明らかに見た目が反社の様な人達がそこらじゅうを歩き回っているのだ、無理もない。だがこの場所は正真正銘、特務機関第二支部である。


「この部屋でお待ちください」


 案内された部屋は和室、特に変わった様な所は無いが高そうな壺や掛け軸なんかが置いてある。

 目の前に並ぶ座布団に座り、机の上に置いてあるお茶を飲む。


「アンタよく堂々としていられるわね」

「そうか?まあ慣れってやつだな」

「慣れって……」


 苦虫を嚙みつぶしたような顔で宗治を見る。始めてきた場所とは言え、あまりの堂々しさに逆に安心してしまう。


「そう言えばここに通されたはいいが、誰が来るんだ?」

「知らないわよ……」


 宗治の堂々しさに肩の力が抜ける。

 案内をしてくれた男からこの部屋で待つように言われたが、何で待たされるのかすらこの二人は知らない。

 お茶をズズッと飲み、扉の方を見ると丁度ふすまが開き誰かが入って来た。


「おいおい、誰かと思ったら宗治じゃねえか」

「げっ!!?」


 入って来た人物の顔に思わず声が漏れる。たぶん、いやここに来て今までで一番いやな声が漏れた。

 銀髪の髪に青いメッシュの髪、黄色くギラついた瞳、間違いねぇ。


「兄貴……」

「え!?」

「久しぶりの再会なんだからさ、そんな嫌な顔するなよ。お兄ちゃん悲しいぜ?」


 ニヤついた笑みで俺を見るのは間違いなく血を分けた兄弟である兄貴だ。

 机を挟んで向かい側に座り、俺と同じようにお茶をすする。


「ちょ、ちょっと」

「あん?」


 彩希が小声で話しかけてくる。


「アンタって兄弟いたの!?」

「ああ、兄貴と俺の二人兄弟だ」

「なんだか嫌な顔してたけど仲悪いの?」

「悪いってもんじゃねえ、俺は兄貴がクソ嫌いなんだ」

「苦手じゃなくて?」

「嫌いだ。昔から俺と兄貴はライバルでな、なにかに競って挑んでは負けて負けて負けまくって!しまいには殴り合いの喧嘩をしてたくらいだ」


 思い出すだけでも腹が立ってくる。勉強、スポーツ、稼ぎ、恋愛、ゲーム、全てにおいて俺が兄貴に勝ったことは一つだってない。

 初恋の時なんかは好きな子に告白して玉砕した次の日に兄貴に告白してるのを目撃したからな!……まあ、その子も振られてたけど。

 勇逸の救いはどの分野においても兄貴が興味ないかったことだ。


「あ、そうだ。宗治、彰は元気か?」


 兄貴が質問する。ダメだ、このままだと怒りで機嫌が悪くなりそうだ、いったん落ち着こう。


「……ああ、数日前までは同じ任務を受けていた」

「そうか、今度会った時に礼を伝えておかないとな……それでそっちの子は?」

「俺の相棒だ」

「え、あ、初めまして!愛宕 彩希です!」

「よろしく、俺は八雲 朱文(やくも あけふみ)。宗治のお兄ちゃんだ」


 挨拶をする彩希に朱文は自己紹介をする。緊張している彩希を朱文はまじまじと見つめめる。


「ほう……」

「えっと、なにかついてますか?」

「いや、宗治が女の子を連れてくるのは初めてでな、これからもよろしくな」

「え、あ、はい……」


 質問の意味をよく理解しないままとりあえず返事だけしておく。


「それで、どうして俺達をこんな所に連れて来たんだ?」

「ん?ああ、お前たちがこの間昇進した話を聞いてな、一応俺と同じ調査分析官だから部下を用意したんだ」

「部下?」

「お前達も偵察戦闘員時代に上司がいただろ?」

「いましたね」

「今度はその上司にお前たちがなるんだ」


 昇進と言う話から薄々感じていたが部下が着くのか、そうとなれば人数は東雲さんと同じ四人か……どんな奴が来るんだ。


「いったん外に出るぞ」


 初めの碌でもない考えはどこえやら、宗治達は外へ出ると庭に数十人の軍服姿の偵察戦闘員が並んでいる。


「こいつ等がお前たちの部下だ。全部で二十人いる」

「二十人って多くないか?俺等の時は四人だったぞ」

「そんだけ少ないのは本部だけだ、支部じゃ一人十人くらいは任される」


 特務機関の戦闘員が並ぶ光景に数日前までの自分たちを重ねる。

 東雲さんや副長官から見た俺達がどう映っていたのか考えるものができる。


「これ、彰とか胃やられてんじゃねえか」

「私は早速やられそうだけどね」

「まあ、二人共頑張れってことで任務開始までの数日間はコミュニケーションとっとけよ」


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