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サムライ✕ACCEL  作者: ミミササ
第一章・ムクロ編
52/58

第52話 本部への帰還

 今月はリアルの方でごたごたしていましたが、第一章は今月中に終わらせる予定です。


 あの日から数日が経った。

 夜明けに帰って来たオレに宗治達が少し心配していたが何とか誤魔化した。それからムクロ隊二番隊を倒したことを本部に連絡して、遺体を貨物列車の特別枠で輸送することが決まった。

 今は列車に乗ってカルマ都市にある本部へ帰還している所だ。


「もう終わりかー」

「やっと慣れてきたのに」


 向かいの席に座る女子二人が愚痴をこぼす。十兵衛はともかく、都会で暮らす彩希さんにとって田舎での生活に慣れるのには少し時間が掛かっていたようだ。


「ところで彰、お前もういいのか」

「ん?なにがだ」

「最後に昔の友人に挨拶とか」

「ああ、それはもう終わったよ」

「そうか」


 走る列車の窓から町を見る。

 山にあるトンネルを通るこの線路からは町のごく一部しか見えない。それでも田舎のつまらない町並みを眺めているのはここに来た意味を果たせたからだろうか、それとも……。

 なんにせよ任務は終わったんだ、この町に長居する理由はない。


「そう言えば三蔵の妖刀が折れてたが、あれは彰がやったのか」

「そうだよ!軍人さんの紅桜が俺の異能の刃と合体して折ったんだ」

「異能の刃と……合体した……?」

「紅桜の能力が強化じゃなく、喰らうことだったのを見抜いてぶっつけ本番でやったらできた」

「マジかよ、あれって応用できるものなのか……」


 驚いているが当然のことだ。本来、異能の刃と言うのものは応用の極致にいるものだ。それをさらに応用することがどれだけ凄いことかは、この場にいる誰も知らないのであった。


(この町ともお別れか……)


 窓から眺める町の景色にふと切なさを感じる。

 田舎と言っても昔とは変わった町並み、今と比較して昔を思い出す。山の間にある川は昔、綾部と雫ちゃんの三人で水遊びをした場所だ。

 それを過ぎれば秘密基地と称して作ったボロボロのガラクタ小屋がちらりと見える。懐かしい。


(あそこは……)


 トンネルに差し掛かる直前、昔使っていた訓練場の道が見える。木の丸太で出来た小屋、あそこで親父と朝から晩まで過ごしたな……当時は怖くて嫌って言えなかった。

 だが、ある日親父が席を外いしている間、訓練場に忍び込んだ雫ちゃんたちに戸惑いつつも同年代の子と初めて遊んだ。


 楽しすぎて時間を忘れていた時、戻って来た親父に怒られそうになったところで雫ちゃんが助けてくれたんだよな、。「子供は遊ぶのが普通です」って、今思えば普通の事だが当時のオレからすればその言葉はとてつもない救いの言葉だった。


(あの時、雫ちゃんが言ってくれなかったら今のオレはいなかっただろうな)


 トンネルに入り明かりが列車の電気のみになる。

 次に外の明かりを浴びる頃には町はもう見えない。この町ともしばらくはおさらばだ。

 物思いにふけっていると十兵衛に話しかけられる。


「軍人さんはどう思う?」

「なにがだ」

「ムクロ隊が襲撃した理由だよ。宣戦布告と太古の遺産が目的って言ってたけど、結局全員倒したし太古の遺産?ってやつもなにかわからないし」

「言われてみれば、そうだな」


 ムクロ隊が特務機関を襲撃した理由は二つ、その内の一つである太古の遺産については何も知らない。副長官や東雲さん達の反応を見るに重要なものであるのは確かだが、それ以上のことは何も知らない。


「とりあえず、本部に着いたら聞いてみるか」

「そうだな、ガラクの目的が太古の遺産である以上、今後も戦うことになると見ていいだろう」


 ガラクがどういった糸でムクロ隊を差し向けてきたのかはわからないが、特務機関と交戦する気であることは間違いないようだ。

 話をいったん締めくくり、車内販売員を呼び止める。


「すみません、焼き肉弁当一つください」

「650磨誾になります」

「皆はなにかいるか?」

「俺オレンジジュース!」

「俺は鮭弁」

「私はサンドイッチセットで」

「全部で2100磨誾です」


 財布を取り出し全員分の金を出す。

 商品が積まれたカートから弁当を二つとサンドイッチの入った籠、オレンジジュースを一つずつ取り出し渡される。


「ありがとうございます」


 販売員さんにお礼を伝えて受け取る。ニコッと笑顔を見せた後カートを引き進んで行く。

 見送った後、彩希さんが財布を取り出し値段を聞いてくる。


「彰さん、サンドイッチセットって……」

「いや、いいですよ。ここ最近気を使わせていたらいしいですから」

「でも」

「彩希、貰えるものはありがたく貰っておこう」

「そういう事ですのでお金の方は大丈夫です」

「そうですか……」


 宗治の言い分もあってか彩希さんは財布をしまう。

 ここ最近、気を使わせていたのは雫ちゃんの事だろう。あの日、雫ちゃんと最後に会えたのも宗治達が仕事を引き受けてくれたからでもある、これはほんのちょっとした感謝の気持ちだ。


「それにしても、組織に所属してからもう1か月は経ってるのか……」

「そろそろお休みが欲しいわね」

「そうだなー、俺もちょっと疲れてきたかも」


 特務機関に所属してから一か月ちょい、百鬼兄弟やムクロ隊の件で内部がごたごたしていたのもあってか、休みと言う物が取れていない。と言うか休みがあるのかも知らない。ここに居るのは全員下っ端だ、唯一知っていそうなのが十兵衛くらいだが、聞いてみるか。


「十兵衛、この仕事に休みってあるのか」

「……あるに決まってるじゃん。どうしたの、軍人さん」

「いや、組織に入った時に死ぬ覚悟で入ったからさ、てっきりないもんだと……」


 驚愕と言った表情で十兵衛はオレを見る。

 なんだ、なんか変なこと言ったか、オレ。てか宗治と彩希さんも十兵衛と同じ表情してんだけど。


「彰、お前少し休んだ方がいいぞ」

「そうですよ、疲れすぎて考え方が……」

「軍人さん、俺の方からもおっさん達に言っておくからさ」

(え、オレなんか変なこと言ったか!?)


 正常な判断ができていないと思っている宗治たちによって彰は目的地に着くまでの間、寝かされた。

 ちなみに、彰の言葉の意味としては「死ぬかもしれないからそのつもりで仕事している」と言う意味である。


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