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サムライ✕ACCEL  作者: ミミササ
第一章・ムクロ編
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第46話 骨斬り三蔵


 山に入り神社に続く石畳の階段を上っていく。年月が経ったからか、はたまた人が来ないからなのか苔が生えて滑りやすくなっており足元が危険だ。


「十兵衛、足元に気をつけろよ」

「うん」


 階段を一段、一段上がるごとに昔の記憶と照らし合わせる。

 昔は遊ぶことに夢中でなんとも感じなかったが年が立った今、古臭くなったせいか少し不気味に感じる。

 不気味さを感じつつ階段を上っていくと鳥居が見えてくる。


「ん?」


 鳥居を超え社が姿を現すと賽銭箱の隣に何者かが座っているのが見える。


「誰かいる」

「軍人さんの知り合い?」

「いや……少なくとも記憶の中には居ないな」


 その姿は黒い軍服に黒い帽子、黒い外套、どこからどう見ても帝国軍人だ。それも特務機関に所属している。だが東雲さんから援軍の連絡は来ていない。


(なんでこんなところに特務機関の人間が連絡も無しにいるんだ?)


 今はムクロ隊の襲撃で組織全体が混乱している状況だ、連絡も無しに人員を割くことなんてあるのか……?。

 その時、ある事を思い出す。緊急編成の時に言われた死人の情報だ。


(まて、”死人”の中には神華戦争で死んだ人物もいたはずだ……!!)


 本部で聞いた情報では死人は2人、そのうちの一人『伝説の亡霊』は鬼和番衆によって討伐された。そして残る死人は一人、かつて神華戦争にて命を落とした英雄倉骨 三蔵(くらほね さんぞう)

 階段から境内へと続く石畳を歩き、鳥居の前に立つ。


「十兵衛、本部で聞いた話を覚えてるか」

「”死人”の話だな」


 十兵衛の目が鋭くなり戦闘態勢に入る。どうやら気付いたようだ。


「死人の中には神華戦争で死んだ者もいた」

「ああ、おそらくコイツが倉骨 三蔵だ!」

「…………」


 三蔵は立ち上がり、こちらを見る。その目は怪しく光っており、向けられた視線からは殺気が感じられる。


(ど、どうする、先手を打ちたいがオレの生存本能が逃げろと言っている……)


 彰は生まれて初めて向けられる無情の殺気に恐怖する。

 今までの戦闘では死の淵と言う生存本能の意識が生きることに力を注ぎこんでいたが、今この時だけは生存本能が勝てないと言っている。

 紅桜に手を掛けるが抜きはしない。相手の動向を窺いつつ、能力と異能を分析するためだ。


(ひとまず、様子を窺ってみるか……)

「……エ……カ」

(なんだ!なにか喋り始めたぞ……!)


 突然の行動に驚く。

 今まで無口だった三蔵がいきなり喋り始めた。隣にいる十兵衛を横目で見るがオレと違って警戒心を高めている。


「オマエ……コウジカ……」

(…………誰だ!)

「オマエ、コウジダロ」


 喋り始めたと思ったら変な事を言い始めた。

 いったい誰と勘違いしているのかわからないが殺気を解除して気を抜いているのは確かだ、畳み掛けるなら今しかない……!。


(殺気を解いた今、様子見は一旦放棄して畳み掛けるか!)

「喰らえ・紅――」

「飛び出せ・抜骨(ばっこつ)


 金属がぶつかる音共に紅桜が弾き飛ばされる。何が起こったのか理解が追い付かない間に十兵衛が村正を抜き斬ろうとするが、妖刀から伸びる骨の様な刀身に叩かれ飛んでいく。


(なんだ、なにが起こったんだ……)


 一瞬の出来事だった。彰が紅桜を抜いた瞬間に三蔵は妖刀の能力を使った、能力は刀身から骨を生成する能力。

 刀身から骨を地面に伸ばした反発力で距離を詰め、勢いそのまま妖刀で紅桜を弾き飛ばした。この僅か1秒の出来事を彰の脳は処理できていなかった。


「オマエ、コウジダロ。ヒサシブリダナ」

(わ、わからない……こいつが何をしたのか、なにを言っているのか)

「ドウシタ?ヒサシブリスギテワスレタカ」


 気さくに接してくる三蔵に動揺する。

 彰の記憶に、いや人生に神華戦争で戦死した知り合いは一人もいない。それなのに三蔵はいったい何と勘違いしているのか、わかることは殺されていない今が幸運だという事だけ。


(とりあえず一旦距離を……)

「マテ」

「ぐっ!」


 その場を離れようと動かした体を掴まれ、地面に叩きつけられる。全身に伝わる衝撃が痛みとなって感覚をマヒさせる。

 その様子を見た三蔵は疑問を抱く。


「オマエ、ヨワクナッタカ?」

「弱いもなにもオレはコウジって人じゃ、ないんでね!」


 腕を掴み三蔵を持ち上げる。体をひねり持ち上げた体を地面に叩きつける。


「飛び出せ・抜骨」


 地面と体が接触する瞬間能力を使い、地面に向かて骨を射出させ後方へと飛ぶ。


「喰らえ!紅桜!」


 仮の契約ではなく、紅桜との取引で契約した彰の意思に紅桜が反応する。

 飛ばされた紅桜が宙を浮き手元に来る。


(さっきの感覚でわかった、三蔵は”契約者じゃない”。もし契約者ならオレ程度の力、簡単に振りほどけるはずだ!)

「ベニ……ザクラ……」


 一か八かの近接戦だったが妖刀を使ったと言うことは契約者ではない。契約者は邪陰の能力と人間離れした身体能力を持っている、故に彰の投げは簡単に防げるはずだ。


「……オマエガコウジジャナイノハワカッタ、コウジハベニザクラヲモッテイナカッタ」

「そうかい」

「ダガ」


 三蔵の目つきが変わる。

 憎悪、怒り、悲しみの複数の感情が入り混じった目だ。その視線は彰、にではなく紅桜に向けられる。


「ベニザクラ、ソレダケハイマココデハカイスル」

「それは困るな、オレの武器がなくなる」

「カンケイナイ、飛び出せ・抜骨」

「沈め・村正」


 三蔵の影から十兵衛が能力を飛び出す。異能の刃は彰を巻き込む可能性を考慮して使っていない。

 村正が触れるより先に抜骨の刀身から骨が生成され、一直線に圧縮される。カチカチと骨が鳴ると四方八方に飛び散る。


「!!」


 反射的に飛び散った骨を叩き身を守る。それでも攻撃の手は緩まない、防いでいる間にも三蔵は斬りかかってくる。


「喰らえ・紅桜」


 飛び散る骨を躱し抜き三蔵に近づき斬りかかる。

 刃が体に触れる直前に体をひねり躱されるが強化された身体能力で蹴り飛ばす。


「大丈夫か!」

「なんとか、それより軍人さんアイツ相当強い」

「30年前の軍人だからな、場数が違う」

「…………」


 十兵衛と共に三蔵を睨み合う。

 相手は30年前の神華戦争で戦死した英霊だ、東雲さん達が危険視する程度にやばい相手だと言うことは理解している。


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