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サムライ✕ACCEL  作者: ミミササ
第一章・ムクロ編
40/58

第40話 病院の噂


 2日目、朝。

 前日に作戦を変えたとおりに宗治とオレの班で分かれて捜索をしている。オレ達は昨日、宗治たちが手に入れた情報である廃病院の確認、宗治たちはまだ調べていない場所の確認をしている。


「軍人さん、どこに向かってるんだ?」

「昨日、宗治達が手に入れた廃病院を調べに行くんだよ」

「軍人さんは何も知らないんだよな?」

「ああ、丁度オレが引っ越した後くらいに流れた噂らしいからな」


 十年前に住んでいたと言っても記憶はおぼろげだ、それでも廃病院の噂なんてものは聞いたことが無い。もし、そんな話があれば元気っこの雫ちゃんに連れられて肝試しをしていたはずだ。


「幽霊か……軍人さんは信じる?」

「信じるもなにもオレ達が戦っている邪陰事態が幽霊みたいなもんだろ」

「それもそうか」

「っと、ここがそうだな」


 記憶を頼りに病院があった様な場所に行くと廃病院らしきものがあった。

 外観は植物で生い茂っており、窓は雨風で割れ散らかっている。


「いかにも廃病院って場所だな、軍人さん。……軍人さん?」

「ん~」


 記憶を頼りに来てみたが、前に来たときはもっと綺麗だったはずだ。それに薄っすらとだがここに来た事ある様な気がする。


「どうした、考え込んで」

「いや、ここに来た事あった気がするんだが……思い出せないんだよな~」

「とりあえず、中に入って確認してみよう」


 中へ入ると外見と変わらず、雨風に荒らされた室内に湿気による木材へのダメージが酷く、慎重に動かなければ崩れてしまいそうだ。


「特に何もなさそうだな」


 一通り見回ったが中には何もなかった。


「強いて言うなら綺麗な部屋と電話機が一つずつあるくらいかな」


 三階の奥の部屋と電話機だけが綺麗に手入れされている。

 それ以外特に変わった様子はないのだが、一応注意だけはしておこう。


「一応、場所だけは覚えておこう。もしかしたら、ここを隠れ家としている可能性もあるからな、この後は昼食をとるがどこに行きたい?」

「俺、食堂でラーメン食べたい!」

「わかった、食堂な」


 廃病院を出て食堂へと向かう。今回手に入った情報は廃病院が少し怪しいだけだ。仕方がない、廃病院から宿までの距離はかなりある。午後からは宗治達と合流して、情報交換をした後に別の場所でも探すか。


「あれ、彰じゃん」

「お前は……綾部(あやべ)か!」


 食堂へ向かう途中、工場から作業着を着た女性が話しかけてくる。幼少期に遊んでいた綾部だ。


「久しぶりじゃん!元気してた?」

「軍人さん、この人は?」

「こいつは綾部、昔ここに住んでいた時に遊んでた友達だよ」

「こんにちはー!」


 綾部とは昔、オレがいじめられていた時に雫ちゃんと一緒に遊んでいた女友達だ。懐かしい、当時は雫ちゃんに振り回されて2人とも大変だったな。


「彰のその服装、もしかして軍人になったの!」

「まだ、学生だけどな」

「すごいじゃん!学校ってなんの学校?」

「士官学校だよ、カルマ都市にある」

「カルマ都市って、アンタ超都会な場所じゃん!?」

「一応貴族だしな、オレ」

「そう言えば、そうだったな」


 アッハハとにこやかに笑う。この距離間、当時の同級生の女子との感覚を壊していたのを思い出すな。一時期、嫉妬の目で見られていた時もあったくらいだ。

 笑っていた綾部は何かを思い出したかのようにハッとした後、言いにくさそうに聞く。


「そう言えば、彰は雫のこと覚えてる?」

「ああ、知ってるよ。この間も――」

「実は雫、彰が引っ越した後すぐに入院したんだけど死んじゃったんだ」

(…………は)


 その言葉を聞いた瞬間、理解ができなかった。

 だってずっと前から連絡は取れているんだ、ついこの間も電話でやり取りで来ていたんだぞ。なにを言ってるんだ。


「心臓病で長くないって言われてたけどね」

(は、いや、まてまて、雫ちゃんが死んだ?そんな訳無いだろ……だってこの間どころか入院してからずっと…………)

「廃病院の噂、知ってるでしょ?あそこが雫の入院していた場所なの」


 その時、頭の中の点と点が繋がった。いや、そんな訳はない。

 嫌だった。信じたくなかった。オレは脳内で即座に否定した。それでも、長年の知識や経験はその否定が嘘であると言わんばかりに事実を突きつける。


「あそこ雫の両親が経営していた病院なの。ほらあの子の両親、お医者さんだったでしょ」


 確かに雫ちゃんの両親は医者だった、貴族のオレの家も世話になっているくらい町一番の病院を経営していた。でも、あんな廃病院みたいな場所ではなかった。


「雫が死んだ後、後を追う様にご両親も自殺しちゃってね。彰は知らないかもだけど町じゃ有名な話よ、廃病院の霊は雫って言われるくらいには」


 否定できなかった。雫ちゃんが心臓の病気であることは知っていたし、治る様に応援もしていた。

 それでも、否定できない要素はあった。一時期連絡が取れなった時、士官学校に入学した時、他にも色々あるがどんな時でも声は元気だった。初めて連絡した時よりも元気だった。


「それでね、ってもうこんな時間!?アタシ仕事あるからまたねー!」

「…………」

「軍人さん?」


 考えもしなった、連絡が取れなくなった時。心配はしていたが、その後すぐに元気な声が聞こえたからよくなったものだと思っていた。

 廃病院の噂、少女の霊、病気で入院している雫ちゃん。全ての点をかき消したくなる。

 それでも、行きついた答えは一つだった。


「…………雫ちゃんは、死んでいる」


 そう理解した時、足元から崩れ落ちる。


「軍人さん!?大丈夫か!!」


 十兵衛が心配しているのがわかる、でも何を言っているのかまではわからない。


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