表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サムライ✕ACCEL  作者: ミミササ
序章・百鬼兄弟編
4/40

第4話 もう一組の協力者 その1


――獨録街・定食屋――


 脱獄犯を探すと言うことで妖刀は十兵衛に預け、私服に着替え捜索することになった。

 初めての任務と言うことで仕事は午後からでいいらしい。お言葉に甘えて今は定食屋で昼飯を食べている。


「はい、鯖の味噌煮定食とカレーうどん・大ね」

「ありがとうございます」

「いただきます!」


 運ばれてきた鯖を一口に切り分け頬張る。

 しみ込んだ味噌の味の濃さと鯖のしっとりとした身が口いっぱいに広がり、トロトロに染み込まれた生姜の辛味が鼻にまで伝わってくる。美味しい。


 今回、この任務に参加しているのはオレ達以外にも1組いるらしい。

 どうやら先に行ってしまったらしいので誰かはわかっていないが。


「美味い!」

「あらまあ、そう言ってもらえると嬉しいね」


 十兵衛は美味しそうにカレーうどんをズルズルとすする。


(頼むから汚さないでくれよ)


 十兵衛の服装は白い半袖のシャツにジーンズと至って普通の服装なのだが、”カレー”うどんと言う白い物の天敵を食べているのでかなり心配だ。

 それに、十兵衛の子供っぽい言動がより拍車をかけている。


(でも、確かに美味しいんだよな。学食で出たやつよりも)


 湯気が立つ味噌汁を手に取りズズズッと吸う。中には豆腐とワカメの定番ながらも王道物が入っている。

 箸で豆腐を食べていると十兵衛が話しかけてきた。


「ねえ、軍人さん。その沢庵(たくわん)頂戴。俺、沢庵(たくわん)大好きなんだ」

「ああ、いいぞ」


 沢庵の乗った小皿を前に置く。

 6枚ある沢庵の内1枚を口に運びポリポリと音を立て十兵衛は頬張る――。



「「ごちそうさまでした」」


 席を立ち会計に向かう。

 あれから十兵衛は汁を一滴も飛ばさずに食べきった。どうやら杞憂だったらしい。


「はい、お会計550磨誾(まぎん)ね」


 流石はスラム街と言ったところか、都市部の物価とは比べ物にならないくらい安い(日本円だと550円)。

 テンザイ府やカルマ都市なんかは約3倍の金額はする。

 財布を取り出し会計を済ませる。


 会計を済ませ外へ出る、時計台の時刻は12時半を差す。先に出ていた十兵衛が近づき問いかける。


「それで軍人さん、俺たちは何をしたらいいんだ?」

「この地図に書いている目印の場所に行って、人を探したらいいらしい」


 十兵衛に見える様にもらった地図を広げ、丸く書かれた赤い三つの印の場所を指さす。


「ここと、ここと、ここで。脱獄した囚人を見つけるらしい」

「それで、その囚人って言うのはどんな見た目なんだ」

「こんな見た目らしい」


 監獄時代の写真を7枚取り出し見せる。

 写真にはそれぞれの囚人7名が写っている。全員人相が悪い。


「これは囚人だったころの写真だから、今は見た目が変わってるかもしれない。だけど、この入れ墨が入っている奴はかなりわかりやすいからコイツをメインに……」


 顔を上げると十兵衛がいない。

 辺りを見回すと十メートル程先を全速力で走り抜ける十兵衛がいた。


(あの野郎!!勝手に突っ走りやがった!!!)


 急いで十兵衛を追いかける。


「待てっ!!勝手に突っ走るな!!!」


 全力で追いかけるが、昨日の疲労や怪我のダメージからか思うように体が動かない。

 段々と距離が空いて行き、しまいには十兵衛を見失った。


(あ、あの野郎、人の話を全然聞かねえ……)


 息を切らし、震える膝の叫びを抑えつつ回復するのを待つ。

 昨日今日の出来事でわかったことは十兵衛は見た目に沿わず中身が子供だと言う事。

 暴れたいときに暴れて、眠たくなったら寝る。そして他人のことは基本的に気にしない性格。本当に子供の様だ。


(ちょっと、そこで休むか)


 寄りかかった路地に裏道がある事に気付き、入っていく。


(いた……)


 路地の先に十兵衛が居た。

 まさかとは思うが、アイツ街を一周してきたんじゃ無いだろうな。

 もし、そうだったら、体力お化けだぞ。


「はぁ、十兵衛。どこ行ってたんだ」

「ああ、軍人さん。写真にいたやつを見つけたから捕まえてたんだ」


 足元を見るとボコボコに殴られたであろう人が横たわっている。

 目は青く腫れ、頬はたんこぶの様に膨らみ、歯が何本か抜けている。これじゃ、囚人かどうかわからない。


「十兵衛、今度やる時は顔以外にしなさい。これだと喋れないし判別が難しい」

「はーい」


 ポッケにしまった写真を取り出し一枚一枚照らし合わせる。

 一枚目、顔つきが違うからはずれ。

 二枚目、性別が違うからはずれ。

 三枚目、髪型は違うが体格や顔つきが似ている。


「ええっと、安藤上あんどうのぼるでいいんだよな」

「……」

「他の囚人はどうした」

「……」

「わからないか?」

「……」

「なあ、十兵衛」

「?どうした」

「殺してねえよな」

「生きてるよ」


 あまりにも喋らないのでてっきり殺したんじゃねえかと思った。

 あと、生きてるよは殺してませんよって意味だよな、トドメ刺してないけど多分生きてるよじゃないよな。じゃないと怖いから!!。

 後々、怒られるの嫌だから!!。


「た、すけ、、て」

「仲間の情報教えてくれたら病院に連れてってあげるよ」


 良かった生きてた。

 もし死んでたら探さなきゃいけないうえ、十兵衛の行動も考えなきゃいけないから大変だ。


「たす、、、け、て、、」

「教えてくれたら病院に連れてくよ、その後もう一回投獄されるけど」


 脱獄したのだから当然だ。

 むしろ、更なる重刑はもちろん、死刑の可能性だってある。


「たすけ、、、て、」


 様子がおかしい。

 先程から同じ言葉を繰り返している。痛いならまだしも助けてと繰り返し言うのは違和感がある。


「離れろ!!軍人さん!!!」


 十兵衛に襟を掴まれ後ろへと投げ飛ばされる。

 直後、安藤の体が急激に膨らみ破裂、辺り一面に血の水溜りが広がる。


(あ、あぶねー!)


 十兵衛に投げられていなければ今頃破裂に巻き込まれて死んでいただろう。

 ありがとう十兵衛。できるならこれからもその調子で助けてほしい。


「軍人さん怪我はねえか!」

「おかげさまで、なんとか」

「よかった」


 十兵衛はほっと胸をなでおろす。

 お互い返り血で赤く染まっているがそれ以上に人が突然破裂した事に驚いている。


「軍人さん、これは異能(スキル)による攻撃だね」

「と言うことは近くにいるってことか」

「おそらく」


 十兵衛の目が鋭くなる。

 昨日や今朝の時とは違い修羅場を潜り抜けてきた歴戦の猛者のような目をしている。


「バレてるかもしれないから、早いとこ見つけなきゃ逃げられるかもな」

「軍人さん、ここから一番近い目撃現場ってどこ」


 地図を広げ確認する。


「すぐそこの小さい商店街だ。そこの魚屋に入れ墨のある囚人に似た男の目撃情報がある」

「わかった。急ごう」



――商店街――



 ボロボロの商店街に入り入れ墨の男を探す。


(鳥の入れ墨をした奴ってどれだ!?)


 スラム街と言うこともあり、ガラの悪い奴がちらほらいるせいで、どれが目撃情報にあった囚人か判別が難しい。

 頭に黒い鳥の入れ墨がある男は何人かいるせいでより困難に陥る。


「軍人さん、軍人さん」


 トントンと肩をたたき小声で十兵衛が話しかける。


「あれ」


 指さす先には写真と同じスキンヘッドに黒い鳥の入れ墨が入った男が魚屋で買い物をしていた。

 写真を取り出し比較する。

 ビンゴ!!写真と同じ顔だ。

 十兵衛にも写真を見せる。顔を見合わせ怪しまれぬよう買い物客として、目の届く範囲で着けて行く。


(頼むから気付かないでくれよ……)


 買い物を終えた男が商店街を出る。

 こっそり後をつけて行き、曲がり角に差し掛かったところで突然、男の姿が消えた。


(バレたかっ!!)


 急いで追いかけようと曲がり角に近づくと物凄い力で襟を掴まれ、引っ張り込まれる。

 勢いそのままに地面に叩け付けられ目を開く。視界の先には刃の切っ先が突きたてられており、何者かに体を押さえつけられているせいで身動きが取れない。


「お前は誰だ」


 頭上から声がする。

 どうやら相手は二人組のようだ。


「……言わねえよ」


 黙秘する。

 当然だ。そもそもこの任務は外部に情報を漏らしてはいけない。それにもし、情報を吐けばこの任務どころか作戦そのものが終わるだろう。

 きっと今からひどい拷問をされて死ぬのだろう。ああ、オレの人生はここまでか。


「そう、か?」


 最後に相手の顔を見てやろうと視線を上げる。


「…………」


 知り合いだ。

 士官学校に入る前から知っている顔だ。


「……なにやってんだ彰」

「こっちのセリフだ、宗治(そうじ)


 オレを襲ったのは、体を押さえつける何者かと幼馴染の宗治だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ