第30話 緊急編成
とりあえず書けました。
早く……早く、暗躍の裏切り悪役令嬢と異世界VIRTUAL学園を終わらせて、新しいのを書かないと……。
「緊急招集ってオレ達なにかしたっけ?」
「軍人さん、軍人さん、俺はこの間の襲撃の事だと思う!」
彰と十兵衛は指令室へ向かっていた。
襲撃を受けてから数日間、新入隊員の彰たちに回ってきた仕事は情報工作の手伝いや施設の復旧などの偵察や戦闘とは無関係の雑用ばかりだ。
襲撃を受けたばかりで色々と大変なのは理解しているので仕方ないことだとは思う。
「そうなると、宗治たちも呼び出されてるのか……」
(マジでなんで呼び出されたんだ)
襲撃の件での呼び出しと言うのなら納得いくが呼び出される心当たりが……ないこともない?。
一瞬、脳裏に倒した邪陰”暴喰落粛童”の事がよぎったが呼び出される程の事でもないとすぐに選択肢から消す。
(十兵衛の読み通り襲撃の件で呼び出されたとして、オレ達以外に集まるとしたら今動ける全ての人員が集まっているとしたら……本格的な反抗作戦の会議になるってことか)
緊急招集と言う事は重要な件についての呼び出しだ、それから考えられることは絞られてくる。
その中でも一番現実的なのは反抗作戦による会議、動かせる人員のそれぞれの役割の分担が主な議題となるはずだ。
そうすると新入隊員のオレ達の役割は雑用か先輩達との合同作戦くらいだな。
(それなら楽な役割が良いな)
「お、彰もいんのか」
「十兵衛さん、彰さんおはようございます」
どうやら十兵衛の読みは当たっていたらしい。
指令室の扉の前に着くと先に来ていた宗治と彩希さんに遭遇する。
「おはよう!彩希さん!宗治さん!」
「宗治たちもいるってことは、やっぱり作戦会議か……」
「多分な、まだムクロ隊の足取りも掴めていないこの状況で緊急招集っつたら反抗作戦か襲撃対策の会議だろ」
宗治もオレと同じ考えらしい。
敵の情報はあの日、篠崎と言う男が発した『太古の遺産』が目的なのと邪陰を引き連れている事くらいしか知らない。
指令室の扉を三回ノックする。きっと中に入ると知らない先輩達でいっぱいなんだろうな……ダメだ、なんか緊張してきた。
「志藤 彰と八雲 宗治、以下2名です。失礼します」
扉開け中に入る。
室内は綺麗に整頓されており、ここ数日の慌ただしさを感じさせない程書類などもまとめられている。
てっきり初めて来たときみたく少しは散らかっているものだと思っていたが違っているようだ。
「…………」
何とも言えない緊張した空気が流れている。執務机に副長官が座っておりその隣には秘書、机の前には東雲さんと酒井さんの二人が立ち、向かい合わせになるように時清達4人が整列している。
(な、なんだ、空気が重いぞ……)
とりあえず時清たちと同じように一列に並ぶ、予想とは違い集まったのはあの日ここに居た人数だけだ。
予想が外れたとなるといよいよ何故呼び出されたのかがわからなくなるぞ、作戦会議という雰囲気でもないぞ。
「諸君、よく集まってくれた。急で悪いが諸君らには新しい任務に就いてもらう」
(新しい任務……?)
「先日、襲撃を掛けてきた『ムクロ隊』の捜索、及び拘束を頼みたい」
招集をかけたのは作戦会議の為ではなく、新たな任務を任せるための招集だったらしい。
「そのために、班をを編成させてもらった」
世詰さんから一枚の書類を端から順に貰っていく。
紙には二人一組が2つと四人一組が1つの3つの班に分かれており、それぞれに名前が記載されている。
(ま、マジかよ……)
名前を見ると二人一組の方にオレと十兵衛、宗治と彩希さんが載っており、他の四人は一組にくくられている。
(まんま、ここに来た時の編成じゃねえか)
「この編成はそれぞれの実績をもとに編成させてもらった。百鬼兄弟を倒した四人には2人組になってもらい、他の四名は1組になってもらった。文句があれば言ってくれ」
副長官が険しい顔で言う。
その表情から伝わってくるのは疲労と苦労の二重苦だ。長官が不在の間、特務機関の全てを仕切っているせいか寝不足なのだろう、目の下にくまができており目つきも少し悪い。
(第一王女と言えばオレより若いもんな、組織を指揮するって絶対苦労してんだろうに中間管理職よりきついだろ)
「敵の戦力は残り4部隊、そのうちの一番隊と二番隊に遭遇した場合は直ちに連絡しろ。そいつらの中に”死人”が混ざっている」
(”死人”って……なんだ、死体か?)
副長官が発した”死人”と言う単語に疑問を持つ。
まさか死体が動いて戦っているとか言うんじゃないだろうな、いや邪陰とかいう化け物がいるんだ死体が動いているのも不思議じゃないか。
「”死人”と言うのは死んだ人間が確認されたと言う事だ。中には柊家の初代当主、柊 時道や神華戦争で死んだ倉骨 三蔵がいる、どちらも特務機関に歴史を残した実力者だ」
「っ!!僕の先祖様もいるんですか!」
「そうだ、特に『伝説の亡霊』柊 時道と遭遇した場合は戦闘を行わずに逃げろ。戦闘専門のプロの部隊を向かわせる」
「プロの部隊……?」
なにやら話が壮大になってきた。
死人が確認されたのまでは納得がいったが『伝説の亡霊』?が出てきたり、戦闘専門のプロの部隊がいたり……滅茶苦茶だ。
(そういえば神華戦争って30年前の戦争だよな?バリバリの軍人が相手ってことか、親父世代の人だったら怖いな……)
「あの、すみません質問いいですか」
「なんだ?」
「なんで死んだ人が確認されたんですか、もし仮に生きていたとして遺体等は管理されているはずだと思うんですけど……」
時清がまっとうな質問をする。
裏で契約者が操っているのは確定だが、幻術の可能性もある。時清の言う通り生きていたとして遺体が使われているのであれば管理問題と言う事になる。
「……数か月前、倉骨 三蔵の墓が掘り返されている事件があった。犯人は不明、遺体はその時に持ち去られた」
「それは……」
「時道の遺体は柊家で管理していたが、数年前に柊家の次期当主であった時利が行方不明になったのと同時に消えた」
まさかの事実に驚愕する。
墓が掘り返され、行方不明と同時に遺体が消えたと言うことは……。
「柊 時利がガラクと関係している、と言う事か」
「そういうことだ」
「そんな、兄さんが……」
(なるほど、兄さんと言う事は時清は弟か……どおりで前にあった時より小さく感じたわけだ)
有馬の淡々とした回答に時清は絶望の表情をする。
柊家は御三家と呼ばれる程大きい家だ、その家の次期当主がテロ組織と関わっているとなると大問題だ。驚きを通り越して絶望するのも無理はない。
「柊 時道の遺体には帝国最強の妖魔刀剣『天帝五刃』の一振り『妖刀・空御仁』が握られていた」
(天帝五刃?なんだそれ)
本日二度目の初単語『天帝五刃』が出てきた。
ざっくりとした説明で帝国最強の妖魔刀剣という事はわかったが、どこが最強なのかはわからない。
「天帝五刃と言うのは帝国の歴代最強の妖魔刀剣の事だ、その中でも空御仁は刀身に触れた異能、能力すべてを無力化する”絶対無効”の妖魔刀剣だ」
「僕たち柊家はその先祖様の功績で貴族になったんです、一応妖魔刀剣を作っている一族でもありますから……」
初情報なんだが?
柊家が妖魔刀剣を作ってたのか……それでも今の今まで貴族階級の地位を保ててるのは控えめに言ってもすごくないか。
「柊家の初代当主と言えば剣術でも有名ですね、ワタシが使っている”真斗馬流”より古い歴史をもつ”心眼一刀流”の開祖ですね」
「じゃあ時清やボクよりも練度は圧倒的に上って事!?」
「そうなるね」
剣術の開祖と言うことはかなりの実力を持っていると言う事だ。
心眼一刀流、帝国四大剣技の一つであり水無月一刀流に次ぎ2番目に古い剣術だ。
「とりあえず、そう言う訳で諸君らには無理を言ってすまないが、ムクロ隊の捜索と拘束を頼みたい」
「「「「「「「「了解」」」」」」」
「頑張って~な」
「それと、東雲と酒井は別で捜索を頼む」
「え……」
「当然、提案者である貴様ら2人にも働いてもらう」
「了解しました」
「……了解で~す」
東雲さんはいやいやながら返事するがこの提案をしたの東雲さんだったのか……どおりで班分けが見覚えあるわけだ。
こうして、東雲さん達を含めたオレ達4班はムクロ隊の捜索、拘束任務に就いた。




