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サムライ✕ACCEL  作者: ミミササ
序章・百鬼兄弟編
3/41

第3話 契約者と妖刀

 翌日。


――鈍楽亭――


 東雲さんに呼ばれて、十兵衛と共に部屋に行く。


「おう、来たな。そんじゃ……って、どしたん?。目つき悪いで」

「東雲さん。オレ、初めてですよ。銃声が目覚ましだったの……」


 早朝、銃声と共に目が覚めた。

 気のせいかと思ったが、すぐに二発目の音が聞こえたので窓のふすまを開け外を見ると複数人での銃撃戦が始まっていた。


 隣の窓を見ると十兵衛もオレと同じように驚いていた。

 その後すぐに、十兵衛が全員斬ったおかげで被害は0だったが、今まで体験したことのない衝撃的な目覚ましだった。

 おかげでオレも十兵衛も寝不足だ。


「そう言えばそんなことあったな、まあこれから慣れてくよ~」


 慣れたくねえよ!!。銃声が目覚ましの日常なんてまっぴらごめんだ!!。

 十兵衛もきっと隣で頷いてると思う。さっき隣で立ったまま寝てたけど……。


(はぁ……これが日常になっていくのか。待てよ、昨日の話によると一時的って言ってたから、まだ希望はある!!)


 一瞬気が滅入ったがすぐに淡い希望に気が付く。一時的がどのくらいなのかはわかっていない。


「そんじゃ、昨日はなしとった続きやけど。そもそも君たちの前任者が受けた任務は『邪陰の討伐』やのうて『百鬼兄弟の確保』なんや」

「それじゃあ、なんで邪陰って化け物が関係してくるんですか」

「それがわからんのや。本来、邪陰は人に操られずに本能のまま自由に動くからありえへんのや。しかも一回じゃなくて複数回起きたから重要任務ってことになった」


 どうやら思っていた以上に重要な任務らしい。

 なんでそんな任務をオレに?。

 

「そこで君達に声がかかったてわけ。もちろん仕事やで給料は出るよ。」


 給料は発生してもらわないと困る。

 こんな化け物退治、無料(タダ)ではやりたくない。もし、そういわれたら途中で逃げてやる。

 ……逃げられるのか?。


「あと、僕は君たちの直属の上司やで」


 マジか。

 この人、昨日遅れてきたうえオレを置いて列車に飛び乗ったからな。かなり不安だ。


「重要任務ってことで彰くんの所属先も変わっとる。一応遠征しとる学生ってことやけど、国の記録としては『怪奇異変特務機関』所属ってことになっとる」


 怪奇異変特務機関。どこを調べても存在しているかどうかわからないと言う、有名な都市伝説でしか聞いたことが無い。


 ――怪奇異変特務機関。その名の通り一般では扱えない化け物などを担当している機関である。

 所属人数は不明。構成員は皆他の組織に属している者で構成されており、その実態は上層部以外には知られていない。――


「ここまで聞いてて思ったかもしれんけど。そんなん元から所属しとる僕らが相手すればええと思うやろ」


 それはそうだ。

 オレみたいな成績が中の下の奴よりもっと上の奴らを使えばいいし、なんなら十兵衛みたいな強い奴に頼ればいい。


「でもな~それができん理由があるんよ。理由はわからへんけどが相手がこっちの情報を持っとるってことや。本来そんなことはありえへんけど、捕まった脱獄犯(やつら)が言うには「百鬼さん達から教えてもらった」って」

「それってつまり」

「どこかで情報が漏れたか、”内通者”がおるってことや」


 内通者がいる可能性を考えると新しい人材に担当してもらうのも納得できる。

 だがここで一つわからないことがある。


「なんでオレが任務に指定されたんですか」


 当然の疑問だ。

 十兵衛程の実力と家柄の者が任されるのはわかる。だが、ただの貴族という肩書しかないオレに任務を与えられるのは納得できていない。

 さあ、聞かせてもらおうか。なぜオレが指名されたのかをなぁ!!。


「ああ、彰くんに任務を任せたんは貴族出身のシノビの末裔って言う、なんか強そうな家系やったから」


 顔を手で覆う。

 そう言えばそうだった。貴族なのは自覚していたがオレ忍者の末裔だった。

 幼少期から無茶な特訓をさせられてきたせいで運動が苦手なのに無理やり総合士官学校に入学させられて、のらりくらりと過ごしてきたんだ。


「軍人さんアンタ、シノビだったのか」


 いつの間にか起きていた十兵衛がキラキラとした目でこちらを見つめる。

 やめろ。オレはそんなに凄くない、無理やりやらされてたんだ。だから、そんな目で見るんじゃない。


「それと十兵衛はこう見えて、まだ1か月しかたってない新人や」


 改めてコイツすげぇな。

 上司に向かっておっさん呼ばわりした挙句、大事な説明は全部寝るとかいう。ホント東雲さん優しい。変わらないでほしい。


「君たちの任務は『百鬼兄弟の生け捕り』と『邪陰』の始末、この2つってことや。まずは、脱獄した囚人の目撃情報があった場所に行ってもらおかな」


 東雲さんはカバンから写真と地図を取り出しこちらに渡す。地図を広げると赤く丸の記された場所が複数あり、そこが情報のあった場所だとひと目でわかる。

 一通り説明を受けて改めて思う。


(やっぱ夢じゃねえよな)


 ――この男。怪我をしたというのに未だ現実味の無い状況を夢だと思っていたのだ――。


(ぐおおおお!!!やっぱこれ現実なのかあぁぁ……)


 夢だったら良かったなと思ってたけど、まさか現実で化け物と戦うとか……泣きたい。


「あ!そやそや、忘れとった」


 絶望をよそに東雲さんは思い出したように話す。


「彰くんに”コレ”渡さなあかんのやった」


 そう言うと押し入れから昨日見た紫色の刀袋を取り出す。


「彰くん、実はな邪陰に銃や爆弾っちゅうもんは効かんのや。そこで邪陰に唯一、攻撃ができる武器を君に渡す」


 渡された刀袋を開け中身を取り出すと、一本の刀が入っていた。

 十兵衛の黒い鞘とは違い、赤い鞘の刀だった。


「刀、……ですか」

「そうや。それは『妖魔刀剣』って言うて。特殊な技法で邪陰を刀身に閉じ込めた、対邪陰特攻用武器や。それがあらへんくても戦れる奴もおるけど、君の場合は無理やでな」


 妖刀(これ)がじゃ無いと化け物には攻撃ができない。そう言われて昨日の出来事を思い出す。

 列車が襲撃されたとき、初めて会った十兵衛や東雲さんは銃ではなく刀を持っていた。文明が発展したことで火薬を使った兵器等が生まれた事により、現代において近接戦闘を除き、刃物は時代遅れとされている。


 だが、東雲さんの話から思い返すと任務に不可欠な専用武器だと考えると辻褄が合う。

 そして東雲さんはさっきまでこれを忘れていた、つまり……。


(え。オレ、物忘れで死ぬところだったの)


「軍人さんの刀カッコイイな!」

「そうだな。十兵衛の刀もカッコいいぞ」

「そうだろ!俺の妖刀『村正』もカッコイイだろ!!」


 妖刀村正?ってことは刀に名前でもついてるのか?。

 だとしたら、オレも付けた方がいいのか。名前からとって志藤丸?それとも彰丸?。

 名前を考えているのがわかったのか東雲さんは「ああ」と口を開く。


「その刀の名前は決まっとるで、妖刀『紅桜』。妖魔刀剣は作られる過程で名前が決まる、刀やと妖刀の後に両刃剣やと魔剣の後に付けられる。せやで考えやんでもええで」

「……はい」


 バレていた。

 正直言って少し恥ずかしい。誰しも武器にオリジナルの名前を考える事はあるが、他人にそれを見透かされるのは少し恥ずかしい。頭から湯気が出てきそうだ。


「ほんじゃ、もう一つ説明せなあかんな。十兵衛、村正(それ)しもといて」


 持っていた妖刀を指さす。十兵衛は自身の影に妖刀を置くと沈むように影に溶けて行った。

 なにそれ!!?オレもやりたい!!。


「見ての通り妖刀は影の中に入ってった。こういう異能(スキル)って言う特別な力を持つ奴を契約者や超越者(アクセラレータ)っちゅう。これがさっき言うてた無くてもなんとかなる奴や」


 こんな物を見せられたら普通は驚くだろう、だが今は影と同化して消えた妖刀に興奮が絶えない。

 知らない者からすれば奇術あるいはマジックの様に見えるだろう。公演でもすれば金を稼げる。

 そこである事に気が付く……。


(あれ?これ、結構重要な事じゃね?うっかりで忘れられたらオレ死んでたよ。)


 昨日と言い今日と言い、所々抜けている所があるけど本当に大丈夫なのか?。


「契約者って言うのは肉体に邪陰を直接封印した奴らで、力の一部か全てかで強さや呼び方が変わるけど、まあ今回は気にせんでええよ」

「えっと、つまり異能(スキル)って言うのは体内に封印した邪陰の力そのものってことですか」

「簡単に言うとそうやな。十兵衛は力の一部を封印しとる」

「俺、こう見えて、実は結構すごいんだ」


 十兵衛が誇らしげに言う。

 軽く考察も交えたが、改めてみるとアクセラレータって結構便利なのでは。封印の仕方とか教えてもらえないかな。


(契約者ってすごいのでは?。能力にもよるけど、使いようによってはかなり任務が楽になるぞ)

「封印の仕方は」

(きたっ!!)


 記憶しようと脳をフル回転させ、聞き漏らさぬよう感覚を研ぎ澄ませる。


「倒した邪陰の力を取り込んだらできる。失敗したら食われて死ぬ」

「……」


 真っ白に燃え尽き固まる。

 封印って思ってたほど楽じゃなかった。これから死ぬかもしれない事が色々起きるかもしれないけど、せっかく倒したのに化け物に食われて死ぬのだけはごめんだ。


「まあ、そんな落ち込まんといて。妖魔刀剣(それ)にも一応異能(スキル)はあるから」

「本当ですか!!」

「あ、ああ。なんか急に元気でたな」


 東雲さんは若干引いているが関係ない。これが無いと今後のオレの命に関わってくる。


「契約者と同じで能力はある。ただ能力が何かまではわからん。それに関しては、妖魔刀剣が教えてくれやな誰もわからん」

「妖刀が教えるってことは喋るんですか」

「いや、頭の中に浮かんだ言葉を言えば妖刀が能力に答える」


 紅桜を握るが言葉どころか文字すら浮かんでこない。仮に浮かんだとしてもどれが答えなのかはわからないだろう。


「そういう事やで少しづつ慣れてこや。ちなみに僕と十兵衛は自分の妖刀の能力はわかっとるで」


 その言葉を聞き十兵衛の方を見る。ニヤッと口角を上げ、ぶん殴りたくなるような顔で「え!まだ自分の妖刀の能力わかってないんだ~」と馬鹿にしたように見ている。


(こ、コイツの煽り顔 めっちゃ腹立つ)

「これから色々大変になると思うけど、お互いコンビを組んだ相棒として頑張ってえな。僕は基本的にこの旅館におるし、おらん時は街の屋台におるでな。ほな、気いつけてえな」


 こうしてちょっと抜けている所がある上司の東雲さんと動きの読めない十兵衛との幸先が不安な任務が始まった。


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