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サムライ✕ACCEL  作者: ミミササ
第一章・ムクロ編
29/59

第29話 被害状況

 ダークギャザリングが面白すぎる。


 あれから数日、特務機関は混乱していた。

 被害状況は第二支部の死傷者が6割、第三支部の死傷者が4割、第四支部の負傷者が1割、第五支部の死者が2割。本部を含めた全ての拠点が襲撃されたのだ。中には死者を出さなかったところもあるが、逆に死者だけをだしたところもある。


 組織全体が慌ただしい中、奈義は本部指令室で東雲と酒井を呼び頭を抱えていた。襲撃があった日、彰や複数の証言によりムクロ隊が邪陰を引き連れいてる事、中には黄泉帰理を経た者もいることが判明した。

 それ以外にも各地を襲撃した者の中には”死んだ”はずの者の報告もあったからだ。


「東雲、酒井。なにか足取りを掴める情報はあったか」

「あったら報告してますよ」

「右に同じく」

「そうか……」


 襲撃から数日たったが未だ目ぼしい情報は手に入れられずにいた。特務機関の創設から数千年、ここまで大きな襲撃を受けたのは初めての事だ。彰たち新人や被害が少なかった動かせる者を使って探しているが有力な情報は初日に報告されたムクロ隊の容姿以外ない。

 奈義は深くため息をつく。


「長官である兄さんの不在を狙っての犯行だろうな」

「そうなるとやはり、こちら側に内通者がいると言うことになりますね」

「せやろな」


 特務機関全ての施設を襲撃したと言うことは、本部や支部の位置を知っている上層部の人間がガラクに情報を流しているとみて間違いないだろう。

 そして長官である奈義の兄が不在の時を狙って襲撃、組織全体を混乱に落とし戦力を削っていく。まんまと敵の思惑通りになったと言う訳だ。


「襲撃を受けたのは全部で6か所。そのうち本部と第一支部のみは敵の殲滅に成功した、っと言っても捕虜を捕まえられたのは本部だけ第一支部は『鬼和番衆』が勢い余って全滅させてしまった」

「ほんで、第二支部と第三支部の報告やと『伝説の亡霊』と『骨斬り三蔵』の報告が上がっとる」

「改めて聞いても滅茶苦茶ですね」

「はぁ……ほんと、頭痛がする」


 上がってきた報告の中に二名の死人が入っていた、それが『伝説の亡霊』と『骨斬り三蔵』だ。

 前者は古くから存在する名家柊家の初代当主であり数々の伝説を残してきた歴代の最強と言われる柊の当主だ。続いて後者の『骨斬り三蔵』は30年前に終結した隣国、カリス王国との戦争”神華(じんか)戦争”にて戦死した実力者だ。


「敵の戦力はこちらの予想を超えている、また襲撃をかけられたら『鬼和番衆』と本部以外は全滅だな」

「拠点の移動どころか戦力の何割かはやられています、もう一度同じことが起これば次は『ガラク』が直接攻め込んでくるでしょう……」


 状況的には最悪だ。もしこのまま攻め込まれれば帝国中が混乱し特務機関の存在が(おおやけ)になる。もしくはそれ以上の可能性だってあり得る。

 秘書の世詰がお茶の入った湯呑を三つ、机の上に差し出す。


「問題が山積みだが、重要なのは『伝説の亡霊』柊 時道(ひいらぎ ときみち)と『骨斬り三蔵』倉骨 三蔵(くらほね さんぞう)、この2名の遺体と妖刀が消えていた事だ」

「柊の所は数年前に当主候補が行方不明になったのと同時期に消え、三蔵の方は数か月前に墓を掘り返した跡が見つかったと報告されています」

「そんでもって両方の妖刀も消えて、数日前に生き返って現れた……」

「明らかに契約者の仕業だな」


 神華戦争で死んだ者は英霊として慰霊碑に名前が刻まれるが遺体は別で保管されている、そして亡くなった者が所持していた妖魔刀剣は柊家を除き特務機関で厳重に保管されているのだ。

 柊家の持つ妖魔刀剣は柊家で管理されている。その中には『天帝五刃』と呼ばれる帝国最強の妖魔刀剣が入っているのだ。柊 時道の持つ妖刀は『天帝五刃』にも選ばれており、それを持った状態で死人として現れたのであれば危険極まりない。


「帝国最強の五振り『天帝五刃』を持った状態といのなら、それ相応の相手を用意しよう」

「んで、作戦会議はええんですけど向こうの目的は『太古の遺産』っちゅことは忘れんでください」

「『太古の遺産』、何故そんな物が欲しいのかわからんな」

「それはアタシにもわかんないが阻止すべきだろうと、その話は兄さんが来た時にしよう。その前に一度整理しよう」


 太鼓の遺産を狙っている訳は知らないが、そのためだけに特務機関に宣戦布告し襲撃を掛けたんだ阻止した方がいいだろう。


「残る敵は4部隊。第二支部から第五支部までを襲撃した一番隊から四番隊の隊長、副隊長の計8名」

「その内の2名は死人である柊 時道と倉骨 三蔵」

「ムクロ隊の目的は『太古の遺産』で唯一の情報源やった五番隊の篠崎っちゅう男は舌を噛みきって自害した」

「……ざっくりとまとめてみたが、ここまで手のひらの上で踊らされているとは」

「相手さんもそれなりに手を打って来とるって訳やな」


 湯呑を手に取り、奈義はお茶を飲み干す。

 今ここに呼び出している2人は本部に居た動ける人間だ、それ以外の調査分析官は支部に居るか療養中のどちらかだ。

 今、本部で動かせるのは指令室に居た新入隊員と直属の上司だったこの2人、それ以外の隊員は被害にあった支部の応援や襲撃の情報工作、本部の警備等の業務にあたらせている。


(今動けるのはあの日ここに居た者達だけか……)


 再び頭を抱え悩む。

 今すぐにでも目の前の問題を排除したいが動かせる人員は限られている。その中でも戦力となりえるのは新入隊員達だ、特に彰を含めた4名は百鬼兄弟と言う厄介な問題を解決してくれた実力者だが、本部へ来て早々に襲撃に会い(ロク)な説明も無しにいきなり任務を与えても遂行できるかどうか……。


(どうする……!今動かせる人員の中で優秀なのは新入隊員の8人だけ、あとは目の前にいる2人。動かすのは問題ないが、碌な説も無しに新入隊員は受け入れられるのか……)

「……東雲言いたいことがあるなら言え」

「そですか、なら僕から一つ提案なんやけど」


 東雲の心を読む。

 考え込むその様子を見かねた東雲は自ら提案する。


「僕らの担当しとる彰くん達に出てもらうのはどやろか」

「……彼らは新人だぞ、いきなり説明も無しに受け入れられるかどうか」

「そんなら心配いりませんよ、僕彰くんにあんま説明せんと任務に就かせたんで」

「「……は?」」

「せやで大丈夫やと思いますよ」

「待て待て、お前どのくらい説明してないんだ!?」

「妖魔刀剣の事と契約者のことと、あとは……前任者と百鬼兄弟のことくらいやな、ああ!死刑囚の事も話したな!」

「それって全部じゃないか?」

「いんや、妖魔刀剣の使い方とか教えてへんで、僕」

「つまり、詳しいことは教えていないと……」

「そういう事やな」

「……よくそれで納得してくれたな」


 あまりの説明不足に呆れる。

 契約者でない者に妖魔刀剣の使い方を教えないのは致命的だ。そして、それを受け入れる彰の精神にも2人は感心する。

 詳しい説明も無しに現地に送り込むとか……どんな考え方をしたらそんな事になるのやら。


「それでどうします、僕の担当は動かせますけど……酒井の所はどや?」

「俺の所は……全員優秀だ、中には柊家と有明家の奴がいる。それ以外の2人も剣術を収めている、それなりにできる奴だとは思っている」

「その4人出せる?」

「バカ言え!優秀と言ってもお前の所とは違う、戦えてもせいぜい四人一組でないと……」

「そやったら、酒井の所は四人一組で僕の所は二人一組、そんで僕ら二人で捜索っちゅうのはどや?今自由に動けるんは僕らだけやし」

「……やむおえないか」

「酒井も納得してくれたし、どうします?副長官」


 東雲の魅力的な提案に返事は一つしかない。


「東雲、酒井。至急、新入隊員をここに招集しろ」


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