第16話 百鬼夜行
誤字脱字が多いかもしれませんがご了承してください。それと、次回から登校時間が18:00くらいになります、遅れた場合は時間が過ぎます。
「ぐっ!」
斬られた右肩を押さえ、逃げ道を確保するため彰に蹴りを入れる。
みぞおちに蹴りが入るが効いていないのか顔色一つ変わっていない。
「なっ!」
蹴り入れられた左足を掴みもう一人の敵に投げ飛ばす。
投げ飛ばされる途中、地面に突き刺さった竜騎士を掴みぬいたことで勢いを軽減させ、ぶつからずに着地する。
「兄貴!」
「……問題ない、後でつなげばいいだけの話だ」
(なんだ今の力は!奴は適合者であって契約者ではないはずだ……あれが紅桜の能力なのか)
嘘である。実際はかなり焦っている。
依頼目的である紅桜の能力は百鬼兄弟ですら知らない、何故狙われているかもすらわかっていないのだ。
「彰、お前使いこなせるようになったのか」
「少し時間は掛かったけど、なんとか仮契約が正式にできた」
「そうか。なら、こっちで考えた新しい作戦で行ってもいいか」
「ああ、そうしてくれ。オレもすぐには思いつかねえから」
「俺と十兵衛さんが入れ替わる、戦力を集中させて早めに勝て、いいな?」
「了解」
「それじゃ、十兵衛さん!交代してくれ!」
宗治は急いでその場を離れ邪陰の群れの方へ向かう。宗治の声に反応し、十兵衛は彰の所へ向かう。
邪陰の相手をしていた十兵衛と彩希であったが思いのほか数が多い事、受付嬢さんのように民間人がいる可能性を考えて威力を弱めているせいで数が減らない。
そんな中、宗治のたてた作戦は彰と十兵衛と言う今持てる最高戦力である2人を百鬼兄弟に集中させることだ。
本来、彰が紅桜で片方を相手にしている所で十兵衛が足止めし、遠距離から彩希の再生能力と高火力、そして宗治の異能と能力を無効化する濡れ燕で追い詰めたいのだが、邪陰と言う予想外の戦力が多いうえ民間人も巻き込む可能性がある為この作戦にしたのである。
「ちょっと!アンタ何考えてんの!?」
「戦力を集中させて彰たちに任せる、俺達は邪陰の足止めだ」
百鬼夜行とも言える邪陰の群れの中でレーヴァテインを振り回しながら邪陰を薙ぎ払う。
彩希は押され気味な中、作戦への不満を宗治に吐く。
「足止めって言ったってアンタの能力じゃ無理でしょうが!」
「そうかもな。だから、彰と十兵衛さんが百鬼兄弟を早く倒せることに賭けた!」
「だからって、説明になってないわよ!」
「俺は早い相手と相性が悪いから抜けた。それに、東雲さんがあの二人を選んだのに意味があると思ってそうした!」
上司である東雲がいつから入れ替わっていたのかは知らない。だが、少なくとも彰と十兵衛を連れてきたときまでは入れ替わっていなかった、そう言えるのは妖魔刀剣を彰に渡しているからだ。
妖魔刀剣がどこに保管されているのかまではわからないが、入れ替わっていたのであれば目的である紅桜を渡す必要はなかったはずだ。
「どちらにせよアンタじゃ戦える相手は限られてるわよ」
「知ってる、だからお前の所に来たんじゃねえか。東雲さんが組ませたお前と」
「そう、じゃあ一緒に戦うわよ!」
「泳げ・濡れ燕!」
「放て・レーヴァテイン!!」
邪陰の群れに向かって宗治たちは戦っていく。
「軍人さん、大丈夫だった」
「なんとかな」
彰と合流した十兵衛は百鬼兄弟を見る。
兄である龍宗は腕を切断されたダメージが大きいのか冷や汗が止まらない。弟の音宗はいつ攻撃が来ても良いように彰と睨み合いをしている。
「ハァ、ハァ、弟よ、あれを使え」
「兄貴!それだと依頼が……」
「関係ない、あくまで目的は紅桜と適合者だ。死んでも新しい適合者を見つければ問題ない」
「わかった」
「狩れ・竜騎士」
「喰らえ・紅桜!」
「沈め・村正」
龍宗は空を飛びその場を離れる。
飛び立った龍宗を追いかけるべく紅桜で地面を蹴り上げ、空に跳ぶ。十兵衛は村正で音宗の動きを止めようと異能の刃を使う。
『異能の刃・沈殿影法師』
繋いだ影が重く沈む。それでも音宗は抵抗せず、プラズマ状のマイクを出し、コードを妖刀天樂と繋ぎ合わせ能力と異能を組み合わせる。
「奏でろ・天樂。電気符号:音声・重音!!」
マイクから増幅される衝撃波のエネルギーがコードを通じて天樂へと流れる。流れた衝撃波エネルギーは天樂の能力で音の塊として大きくなっていく。
『異能の刃・電撃音衝波』
「「っ!!」」
誰が見ても、一目でやばいと感じさせるものだった。
増幅されたエネルギーの塊は周囲の建物を呑み込み、空に跳んだ彰の足元にまで届く程大きくなっている。
沈殿影法師に沈んでいてもこの大きさ、もし破裂でもすれば辺り一帯吹き飛ぶだろう。
「「はあああっ!!」」
十兵衛はより強く影を重くする。大きさは変わらないが、それは沈んでいるからであって実際はもっと大きくなっているはずだ。空中で身動きの取れない彰はそのまま音宗に向かって紅桜を振り下ろす。
――ドォンッ!!!!――
「なに!地震!」
「違う、彰たちの方だ……」
凄まじい破壊音と共に鈍楽亭の玄関を含めた周囲の建物は吹き飛ぶ。
音宗の攻撃は彩希が地震だと思ってしまうほどの威力だ。龍宗が竜騎士を使ったのはこの攻撃から逃れるために空へ飛んだのだ、そうとは知らない彰と十兵衛は至近距離で受けてしまった。
「なあ兄貴、紅桜折れてたりしないよな」
「安心しろ紅桜ならそこにある」
龍宗の指さす先には無傷の紅桜とボロボロになった彰と十兵衛がいる。
「やはり、紅桜の能力は身体能力の強化か」
「……」
「兄貴。こいつら生きてるし、適合者だけ持って帰ろうか」
「そうするか もう一人の方は始末する」
魔剣・竜騎士を振り上げ十兵衛に振るう。
「沈め・村正!」
ボロボロの十兵衛は村正を手に取り、龍宗に向かって横一文字に切り裂く。
「こいつ!まだ生きていたのか!」
「奏でろ・天樂」
――ガキンッ!――
襲われた兄を助けようと音宗は天樂を向ける。放たれた音の塊は紅桜を手に取った彰が弾き、蹴り飛ばす。
「ぐえっ!」
「音宗!!」
不意打ちを受けた音宗はそのままボロボロの民家へと飛んでいく。
(紅桜の能力は身体能力の強化じゃない!もっと別の何かだ!)
妖魔刀剣か契約者であれば能力や異能を物理的に攻撃するのは可能だ。紅桜だってそれは同じであるはずなのだが、龍宗の目には別に見えていた。
(今の攻撃で確信した、能力を防ぐのではなく弾いていた。これはもう一つ別に能力があるかしないと不可能だ!)
そう、紅桜は能力を斬ったのではなく、弾いたのだ。彰の身体能力が紅桜によって強化されているとしても音の塊である天樂の能力を弾くのは無理がある、能力の性質上触れればその場で破裂するはずだ。
(だが、、、。いや、そんな事よりも……)
今までの考えを捨て、龍宗の感情は目の前で攻撃された弟への思いでいっぱいになる。
「お前、なにしてくれてんだ」
大事な家族を攻撃されたことで怒りに満ちている。




