第13話 拠点襲撃 その2
もう一度言います。投稿は遅いです。
「それで、またこの組分けか……」
宗治はため息をつく、彰の提案した作戦は十兵衛と彩希の二人と彰と宗治の二人に組み分けることだ。
「すまん、十兵衛と彩希さんは契約者だから実力も近いだろうと思って……」
「それじゃ、俺達が死ぬだろ」
宗治の言う通りだ、確かに彩希と十兵衛は契約者特有の身体能力を持っている。
この二人で組めば戦力としては十分だが、余った宗治たちの戦力は弱まってしまう、戦力が一極に固まってしまう。
この組分けに不満を持つのは当然だ、なんなら一番無謀だと言うことくらいわかっている。
「そうだ、だから賭けないかって聞いたんだよ オレが紅桜を使いこなせるかどうかに」
今、この中で一番強いのは十兵衛、そして同じ契約者の彩希さんだ。
二人に並ばずとも対契約者に特化した妖魔刀剣を持つ宗治は一番の決め手になる。
そんな中、紅桜を使いこなせない上狙われているオレは一番の足手まといだ。だが、もし受付嬢さんを助けた時の様に少しでも制御できたら、十兵衛並みの戦力にはなるだろうと考えている。
「紅桜の強さがどのくらいかは知らないが もし、使いこなせたら十兵衛並みの強さになるとオレは考えてる」
「理由はわかった。だが、なんでさっきと同じ組み合わせなんだ」
ごもっともな質問だ。ペアを組むなら別に宗治とじゃなくても良い、これには少し弱いが理由がある。
「お互いの戦闘方法が知っているからだ 襲撃を受けた時、少なくともお互い連携が取れていた。これが理由だ」
襲撃を受けた時、十兵衛と彩希さんは脱獄囚を捕まえることができていた。オレ……は記憶が無いけど襲撃を防げたのなら、この組み合わせが良いだろう。
「なら、ここに来た時の組み合わせでも良くないか。俺と彩希はそれで慣れてるし」
「それも考えた。その上でこの組み合わせにした 紅桜の暴走を止められるのは宗治だけだからな」
「なるほど、俺は万が一の保険ってわけか」
宗治は紅桜を使いこなすのが失敗した時の保険でもある。
宗治の荷が重くなるが今はそれに賭けるしかない。それ以外の方法が思いつかないのもあるが、いつ襲撃されるかもわからない今は悩む時間すら無い。
「待って それって宗治がやられたら、、」
彩希さんは不安そうに聞く。
宗治が死ねば全ての作戦が狂う、そんなことはわかっている。でも、それだけで動かなかったら今度こそ全滅する。脱獄囚の時とは違う、殺しのプロが相手だ。
「東雲さん、、じゃなかった紫嘉茂にも言いましたが『ここに来た時から死ぬ準備はできている』宗治、お前はどうする」
「言わせんなよ そんなもん、とっくの昔にできている」
「じゃあ決まりだな 作戦はオレと宗治が襲撃、十兵衛と彩希さんは外で百鬼兄弟の襲撃を警戒してくれ」
作戦は暴走の可能性を考えて、オレ達が廃工場に襲撃し実力のある十兵衛たちが鈍楽亭で防衛をすると言った感じだ。
――21:10。外に出ると辺りは真っ暗に包まれ、物音一つしない。昨日とは別世界かと思うほど静かだ。
「十兵衛と彩希さんはここで警戒してて下さい」
「はーい」
「わかりました」
「彰、襲撃方法は中に潜入か?それとも紅桜で暴れてか?」
「無論、潜入だ 紅桜は失敗した時のリスクが高い」
いきなり紅桜で暴れても宗治をいきなり襲ったり対策を取られていればどうしようもない、なら潜入して襲撃するのがベストだ。
廃工場の目印である時計台を探す。
「さてと、時計台は…あった」
空を見上げ建物を見ると、昼間見た大きな時計台が目に入る。
改めてみるとスラム街には似つかわしくないほど立派な時計台だ。
「こうやって見ると第二都市って感じがするな」
「なにをしてるんだ 早く行くぞ」
「すまん、改めてみると浮いてるなーって思ってな」
第二都市なのだから立派なのは良いのだが、隣にあるスラム街に建てると似合わな過ぎて浮いているように見える。
「?ああ、俺も初めは浮いてるよう、、に…見え、、、」
「どうした?」
「いや、浮いてねえか 物理的に」
「は?」
宗治の言葉にもう一度時計台を見る。
特に変わったことはない…と言いたいが時計台が揺れているのが見てわかる、それどころか闇に紛れて無数の何かが集まっている。
よく見るとそれは化け物の群れが集まっているようだ。
「……はあああああああ!!!?」
もう一度よく見る、そこには無数の邪陰が時計台に這いつくばり集まっている。
見間違えなんかではない、これは間違いなく百鬼兄弟の一手だ。
「彰!」
「全員構えろ!既に百鬼兄弟は攻めて来ていた!!」
彰の言葉に反応し十兵衛は影から自身と彩希の妖魔刀剣を取り出し、全員が抜刀する。
――時計台の上。
無数の邪陰が這いつくばり、空を駆け回る。魑魅魍魎の中、時計台のてっぺんに2つの影がたたずんでいる。
「兄貴、適合者って言うのは先頭の奴かな?」
「おそらくな まあ適合者だったらすぐにわかる、行くぞ」
百鬼兄弟は時計台から飛び降り、龍宗は弟を抱えながら鈍楽亭へと突き進む。
その速さに突風が巻き起こり周囲の建物を吹き飛ばす。
「なんか来たっ!」
疾風は彰たちの前で停止する。
吹きあがった風の中から現れたのは金髪の男と白髪の男、百鬼兄弟の音宗と龍宗である。
「初めまして そして、さようなら」
「ぐはっ!」
「軍人さん!」
言葉を言い終わると同時に、一瞬にして彰の懐に入り殴り倒す。あまりの速さから
時計台にいた邪陰も一斉にこちらに向かってくる。
「くっ!十兵衛さんと彩希は邪陰の相手を!」
「アンタはどうすんのよ」
「俺は百鬼兄弟の相手をする!」
宗治は2つの事で焦っていた。この作戦で確かに宗治は重要だ、だがそれは彰ありきの重要性だ。その彰が一瞬にしてやられてしまったのだ。これが1つ目。
2つ目は百鬼兄弟の戦力だ。十兵衛と同等かそれ以上の強さだとは予想し対策していた、予想外だったのは邪陰と言う隠し玉を大量に持っていた事。
本来邪陰を操ることは契約以外ではありえない、故に百鬼兄弟が危険視されていた。操れたとしても数体程度が限界だと誰もが思っていた、しかし今目の前に居るのは想定を上回る何十体もの邪陰だ。素人である宗治にもその異常性がはっきりとわかる。
(どうする!十兵衛さんに並ぶはずの彰が一瞬でやられた それに加えてこの数の邪陰、なんとか俺一人で百鬼兄弟の相手をするしかない……)
「泳げ・濡r――」
「沈め・村正」
宗治が能力を使うよりも素早く十兵衛は村正を影に沈める。
「これはっ!」
「お、おおっ!」
異能によって伸びた影は百鬼兄弟の影と重なり村正の影響を受ける。
『異能の刃・沈殿影法師』
「異能の刃!」
「一部の契約者しか使えない異能と能力の奥義か 厄介だな」
沈殿影法師は十兵衛の異能である影に村正の沈む能力が加わった、影の深淵に沈む力である。沈めば最後、影に閉じ込められるのだが、これに契約者のみ抗うことができるせいで百鬼兄弟は耐えている。
この状況は宗治にとっては好都合だ、手に入れられた唯一のチャンスなんとかして勝ちたい。
「宗治さん!遠距離からの攻撃を頼む!」
「彩希!レーヴァテインを使え!」
この中で遠距離からの攻撃方法を持っているのは彩希だけだ、宗治が濡れ燕で自分だけ能力を無効化しても百鬼兄弟に対する攻撃手段はない。
「言われなくても!」
彩希は魔剣・レーヴァテインを抜き槍投げの様な姿勢を取り、百鬼兄弟目掛けて能力を使う。
「放て・レーヴァテイン!」
輝く剣を掴んだまま前に突き出すと紫色の光が一直線に百鬼兄弟へと向かっていく。




