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♰08 第十三王国の手の者。

   ●♰●♰●



【成長ポイント:100 会得】


 『魔力感知』を発動したまま、魔界に来て、初めての睡眠をとった。

 全然魔獣が来なかったのは、例の進化の余波にビビったのだろうか。

 特に、久々に眠れたという実感はない。


 じゃあなんで寝るんだろうね、ポイントのためだよ。

 あれ? そういえば、またポイントが増えたね? 会得できるポイントが。

 進化のおかげ? また進化ホヤホヤのキャンペーンで、多いのかな。


 魔法は新しく『無属性』が増えた。

 『清浄』や『修復』という便利な魔法も使えるのである。

 身体を清められるし、破けた服も直せるのだ。

 『修復』は建物にも使えるだろう! と嬉々としてポイントをつぎ込んで、あとはよさそうな家を選ぶだけである。


 『無魔法』には、『結界』もあったので、これもまたポイントをつぎ込んで、敷地内に不可侵入の結界を張れるように用意が出来た。進化で一気に出来ることが増えたぜい。進化さまさま!


 家が出来たら、次は服が作れるように試行錯誤したいなぁ。どんな服を着ようかなぁ。


 今はブラウスとズボンと、コートという格好。美少女なんだし、お洒落したいわ。ここ鏡見付からないけど。


 『火操作』『水操作』『風操作』など、魔法により各属性を繊細に操ることも可能になった。これで地上のように、生活に便利な魔道具がなくとも、生活には困らないだろう。

 料理が出来る。

 とまで考えて、その前に料理器具も食材もねーな、って気付いた。

 ……。

 野菜とか作れないかな。地道に土いじりをしたが、植物を育てられる土にはならない。

 残念ながら、その手の知識はない……。


「何が必要?」


【妖精か精霊の力で土は生き返るでしょう】


「妖精か精霊……? 魔界に相応しくないような種族に思えるけれど」


【魔界にはいません。魔界を忌み嫌っているため、魔物も嫌っています】


 詰んだー。ええー。

 来てくれないかな。せめて、この街だけでも緑まみれにしてくれ。


 街の外を見たが、砂ぼこりが立つ岩の道が続いているだけだったのよねぇ。

 鬱蒼とした森も遠目に見えたけれど、瘴気を養分で成長した木々なので、ぶっちゃけ毒。有害な植物。食べるな危険。

 耐性のある魔獣が巣を作っているそうで、今までの襲撃してきた魔獣は、そこからやってきたらしい。


 地上に戻ったら、どうにか交渉出来ないか、模索してみよう。

 なんなら、いい土を丸ごと持ってきて畑でも作るわ。庭師のマイキーにもアドバイスもらおう。


「!」


 『魔力感知』の範囲内に、侵入があって、そちらを振り返る。

 しかも、強いと感じた。こちらに近付くスピードが速い。複数……八体。


 速い理由は、翼を生やして飛んでいたからだ。


 全員【悪魔 男】と表記されていた。


 【???】と出ているのが三人。

 先頭にいる三人には、名前があるっていうことかな。

 後ろは【騎士悪魔】とだけ表記されている。一般悪魔よりは強い連中が、一気に八体か。

 不利さを感じつつ、黙って見上げた。


「てめぇーか。陛下に断りもなく、名持ちの悪魔になりがやった不届きものは!」


 先頭のリーダー格らしき褐色の肌と紫に艶めく逆立った髪の青年悪魔が、声を張り上げた。

 重たそうな角が上に伸びているし、細い尻尾もある。


 え? 許可が必要なの?

 一応この王国の住人ではあるけど、別に国王の下についてないし、要らないよね……?


【その通りです】


 だよねー。


「答えろ! 誰が名付けた!? 他の王国の悪魔か!? 反逆分子か!?」


 たいそうな被害妄想をお持ちで。他国と仲悪いんか。


【無法地帯の多い第十三王国は攻め入る旨味がありません。しかし、敵は多いと予想】


 だよねー。わかるー。

 攻め入る理由はないけど、逆はあるから疎まれてそう~。


「あー。特に反逆するつもりはありませんので、放っておいてもらっていいですか?」

「ふざけるな! 名を持ちながら、王の下につかぬのなら、それは立派な反逆だ!」


【名前という力を持ちながら、それを王のために振るわないのなら敵と同じ、と言っています】


 通訳ありがとう、『祝福(ギフト)』さん。


「ここが廃墟の街だと知っているでしょ。私はここに居座るから、放っておいて。それとも何? 廃墟になるほど放置した街すらも自分の物だから、私の力も自分に振るえってこと? それがアンタんとこの王様のお言葉?」


 全然知らんけど無法地帯が多い国の統治なんて、ロクなもんじゃないだろう。

 その偏見の元、軽蔑と嘲笑を込めて言ってやった。私のおちょくりに、褐色の青年達は青筋を立てた。


「街なんてどうでもいいだよ! 我が王を愚弄するな!! 弱者は死ね!!」


 沸騰点の低い青年である。彼の指示の元、『騎士悪魔』の五体が向かってきた。

 右腕を一振りして、風の刃を放つ。腹を切り裂いて、この場を離れる。


 『騎士』クラスはなんとかなるが、問題は『???』の連中だ。

 『ネームド』となれば、一筋縄ではいかないだろう。


 予想通り、黄色頭の青年に行く手を雷の格子で塞がれたところ、水の爆弾を連発でぶつけられた。

 三発はまともにくらってしまったが、『風操作』でその場を飛んで離脱して、水爆弾の雨から逃れた。

 少し『HP』が欠けた。


 手を振り上げて、宙にいる三人に雷鳴を叩きつけて、墜落させる。

 大したダメージにならなかったのか、すぐに態勢を直した悪魔達は攻撃を仕掛ける。

 視界を奪う『目暗まし』をかけられたが、耐性の高さが功を奏して『無効化成功』した。

 しかし、多数相手の戦闘にデバフを受けるのは、マズすぎる。魔獣を蹂躙することに慣れているが、人型との戦闘に不慣れすぎて、逃げ惑うしかない。


 だめだな、戦闘慣れしていないことが致命的すぎる。


 風の刃の攻撃をギリギリでかわして、反撃で特大の『火炎爆撃』をぶち込む。


 かなりダメージは与えられているようだが、数と場慣れによる連携で追い込まれている。

 『騎士』も、再び参戦するしね。



 しょうがない…………逃げるが勝ち!



 建物に逃げ込んだ私を見て「バーカ!! 袋の鼠だ!!」と高らかに笑う褐色の悪魔。


 壁が死角になったところで、私は魔法を準備した。

 狙撃の火魔法を無数。出来る限り多くの魔法陣。

 それを設置して、パチンと指をかき鳴らして、爆ぜさせて発射。


 当たって仕留められればラッキーだが、見届けるつもりはない。


 連射される狙撃魔法の対応に追われている隙に、私は地上へ戻った。



【地上へ 転移】




 青い空の下。澄んだ空気に感じるそれを吸い込む。

 キンバリー子爵邸のそばで、一息ついてどでかい息を吐き落とす。


「つかりた……」


 厄介なことになったものだ。

 あれで運よく仕留められたとしても、新手が来るだろう。

 同じ手が通用するわけもないので、なんとか人型、魔法使い相手との戦いに慣れないと。経験を積むために、冒険者の真似事でもしようかな。


 今はジョンからの対価待ちで地上に来れるけれど、いずれは魔界に縛り付けられる悪魔だ。

 あんな傲慢な悪魔の下につくなんてごめんだもんな。身の守り方は学ばないと。


 立ち上がって、『清浄』で綺麗にしたあと『修復』で切れた服を直した。

 キンバリー子爵邸に入ろうとしたが、はたと気付く。


「人気がない……?」


 貴族にしてはこじんまりしているらしい屋敷からは、人気がなかった。

 門を押し開けて玄関の扉をノックしても返事はない。『魔力感知』で確認しても、中には誰もいなかった。

 もぬけの殻だ。




 

2023/12/08

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