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♰07 命名『ルビィ』の対価。


本日、4話更新。(4/4)


   ●♰●♰●



 時間感覚が狂っている気がする。

 時計はないし、太陽ないし、食事もしないし。

 朝と夜はわかれど、一日中起きている状態では、よくわからなくなってしまう。


 そして、不定期に湧いて襲ってくる魔獣。どこかに巣があるらしい。そこからわざわざやって来ては、獲物だと思っている私に飛びかかって来るらしい。それとも、仲間の復讐かな。

 面倒になってきたら、巣を破壊しに行っていいかな。

 全然落ち着いて睡眠がとれる場所の確保が出来ない。



 試行錯誤で土魔法で壁を作ってはいるけれど、思った強度と高さが作れなかった。

 そもそも、土が悪い。サラサラである。

 水を含ませてから土壁を作ったが、それも失敗。

 魔力を流し込むことで強度を上げようにも、魔力が足りないということになる。

 むむぅ。難しい。

 魔法の防壁も考えたが、闇魔法のバリアも強度が心許ない。やっぱりデバフはついているけれども。

 欲しいのは、安眠が出来る安心感なのである。


 魔力が大量にあればいいが、生憎『MP』を増やすための『成長ポイント』の振り分けは出来なかった。

 残念。


「どーしようかなー」


 魔界に来て、何日経ったのやら。


 絶賛ぼっちの魔界ライフを過ごす私は、常々独り言を零している。



 名案が思い付くまで、ステータスを適当にいじくっていたあと【ノーネーム】に目が留まった。



「名前、決めよう」



 適当でいいでしょ。

 前世の名前は平々凡々な日本人名だったので、好きな響きの名前がいいな。


 何にしようと、今夜は赤っぽい満月で暗い赤い夜空になっている空を見上げた。


 そういえば、私の容姿って赤いな。

 生前赤色が好きだった影響なのかな。髪も瞳も赤い。


 んー。ルビーにしようかな。

 安直だから、ちょっとオリジナルティだと言い張って、ルビィにしよう!

 私は悪魔『ルビィ』だ!


「ん? 変わらない……? 自分ではつけられないのかな? 『ルビィ』」


 種族名が相変わらず『生まれたての悪魔』のように、『ノーネーム』も自分で変えようがないのだろうか?


 じぃいっと【ノーネーム】の文字を見つめていれば、やがて文字化けした。

 あ……と思った瞬間には【ルビィ】と表記された。

 喜ぶ前に、私を中心にドゥンと波動が広がった。


「……ん? 何今の?」


 何故爆心地みたいに波動が広がったのだろうか……? まぁ、名前が変更出来たので、いいっか。


「ん!?」と、やけに背中がわさわさすると思ったら、髪が伸びていた!

 あれ!? 角も大きくなってる!? お胸も大きくなってない!? あれ! ズボンの丈が短くなってる!?

 成長した!?


 鏡がないが確かに変化があり、その変化の理由として、今さっきの名づけ直後の波動が関わっているとしか思えない。


「名前を付けただけでしょ?」


【魔物の名づけは進化と同等の変化と強化をもたらします】


「進化! あっ!」


 【生まれたての悪魔】から【悪魔】に変更されてる! 脱・生まれたて!


 じゃあ、他にも魔法とか特技(スキル)とか変わったのかと意識が向いた瞬間に、どばばばばッとテロップの嵐が視界に直撃して、思わず仰け反り、そのままひっくり返った。


「びっく、したぁ~」と零しつつ、起き上がる。

 ええー、めっちゃ使える技が増えているなぁ。把握も時間がかかりそうだ。


「んー? こんな簡単に名付けられるなら、進化し放題よね? なんで個体名を持たない魔物が多いの?」


 『HP』も『MP』も減っていない。『成長ポイント』も勝手に消費していないよね? と、確認してみれば【成長ポイント:3330】と表記されていたので、またひっくり返りそうになった。


 なんか進化の際に、3000ポイントゲットしちゃってるよ。いいこと尽くしかよ。


 『異世界転生の祝福(ギフト)』が限られているとはいえ、得るものが多いなら、進んで名づけをしそうなものなのに。どうして個体名を持たない魔物が多いと云われているのか。


【進化にはそれ相応の対価が必要です。名を与える者が、力を授ける形となるので、生命力などを消費します】


 ……んんん? ちょっ……! 私は何を消費した!? 『HP』減ってなかったぞ!? 生命力!? 私、生命力どんだけ消費した!?

 問い詰めたのに、うんともすんとも文字が浮かばなかった。


 おぉおおおいぃいいい!


 頭を抱えて、悶えた。そもそも生命力って何……生きる気力ですか……減らさないでくださいよ。

 私がルビィルビィ言ってたから? 確認せずに実行しちゃったの……? 強硬実行?



 私は、元から生きる気力が…………あれ…………?

 なんで生きる気力が乏しいと思ったんだろう…………?



 首を傾げて、沈黙して思案したあと、冷や汗を垂らす。



 ()()()…………()()


 ()()()()()()()()



 知識はある。あんなマンガやあんなアニメ。内容は覚えている。

 ただ、一体いつ観たのか、その時の感想も、全く白紙になっていた。

 いろんな歌も覚えている。歌詞も歌手も。でも好きか嫌いか、いつ歌ったのか、思い出が消えてしまっていた。



「うげぇ…………『思い出』を対価に『ルビィ』の名を手に入れたの?」



 口元が引きつる。

 先程、『平々凡々な日本人名』と評価した名前そのものが思い出せない。

 その名の幼少期も、怠惰に生きたでろう人生も。記憶から消去されている。


「こま…………りはしない?」


 困ったと言いかけて、困る理由は特にないことに気付いて首を捻る。

 特に語るべき思い出はないだろうし、なんなら知識だけは残っている不可思議な記憶となっているから、わりと不便はないような……。

 どうせ転生してるしねぇ……。なくしたもんは、しょうがないんじゃないかな……。



 こうして、あっさりと、私は前世の人生と決別したのだった。



 次、ジョン達に会ったら、『ルビィ』と名乗ろう。



 さて、新しい技を確認しよう。

 あ。『祝福(ギフト)』さんにポイントを振り分けておこうかな。

 またグレードアップしてから、技とか見たら快適かもしれないから。

 グレードアップを三段階まで上げておこう。

 お金もそうだけど多く持っていると、気前よく使っちゃうよね。……大雑把な私だけ?


 300ポイントで二段階目のグレードアップ。面倒だったので、三段階目のグレードアップも500ポイントを支払って完了した。合計800ポイント消費。


 さて。どう変わったかな。と違いを確認しようとした。


【新技 一覧】

特技(スキル)】 【魔法】 【特性】


 ギョッとしてしまう。

 いきなり、新しく得られる新技を確認出来るようにテロップを出してくれるらしい。

 手厚いな……! 流石、グレードアップ三段階目!!


 どちらから確認すべきか、選択を迫る。

 一番気になるのは新しい項目ね。『特性』、お前のことだ。


 【特性】に意識を向ければ、中身が開かれた。

 毒耐性、麻痺耐性、物理耐性、魔法耐性……つまりは状態異常への耐性や、攻撃への対策で強化が出来るってわけね。ポイント振り分けに困るやつ~。


【上限を決めて、最適な自動振り分けを行いますか?】


 自動振り分け機能が搭載されているだと!? お願いしますっ!!

 お試しで100ポイントを自動振り分けしてもらった。魔法耐性が高めなのね。


【悪魔との戦闘を見越し、魔法攻撃対策で強化しました】


「え? 何故に悪魔と戦闘を想定してるの……?」


【同じく名持ちの悪魔が、名を得たあなたを品定めに来る可能性が高いためです】


「品定めぇ~?」


 何故そんなことをされなくちゃいけないんだ? てか知られているの?


【名づけにより、進化した余波が第十三王国に広がりました。名づけの悪魔が誕生したことは知られています】


 マジか。あの波動のせいで、知られているのかぁ……。

 派手に、脱『生まれたて』を宣伝したか。国中って。


【脅威か否か、第十三王国の国王の手の者が来ると想定します】


 グレードアップした『祝福(ギフト)』さんは、流暢にぺらぺら話してくれるなぁ。説明してくれて助かるけど。


【攻撃力を高める強力な魔法を先に会得しますか?】 【逃亡手段用に特技(スキル)を会得しますか?】


 めっちゃサポートが優れているわぁ~。ありがとう。


 先ずは、命第一で逃亡手段を確保することにしよう。

 弱肉強食の国王の手の者なんて、ヤバそうだもんね。


【飛翔】


 空を飛ぶ特技(スキル)ね。


【転移】


 瞬間移動か。いるいる。ポイントで会得。


【魔力感知】


 周囲の近付く生物の魔力を感知出来る特技(スキル)ね。

 『成長ポイント』を追加で100ポイント投入すれば、広範囲まで『魔力感知』が可能になって、その強さや弱さも確認出来るとのこと。これで警戒が出来るね。


 魔法の方は、まだ条件も必要なものが多かったので、それを達成するために火魔法を空に打ち上げた。

 すると『MP』が全く減らなかった。微動だにケージが減らない。力加減を強めても、変動なし。


 進化でかなり『MP』まで増えて、通常の魔法ではケージが欠けない……だと……!?


 どんだけだよ。一番強いであろう火魔法を火力全開で、空に打ち上げて初めてやっと、ちょびっと欠けた。

 それもあっという間に回復したのか、何事もなかったかのように満杯状態に戻る。



 ……私、もしかして、最強な進化した……?



 そういえば、前世の知識だと、悪魔にも階級とかなかった? 悪魔に『生まれたて』や『王』がいるなら、その間にいる悪魔にも何かしら階級別に名称があるんじゃないだろうか。

 名を得た私は、本当にただの悪魔?


【第十三王国の住民ながら、第十三王の下についていないため、一般の『悪魔』のくくりとなります】


 一般悪魔……。


【『悪魔王』の下についた場合、強さに応じて階級が決まります】

【騎士 男爵 伯爵 大伯爵 侯爵 大侯爵 公爵 大公爵】

【『悪魔王』は『君主』の階級となります】

【また軍事用の階級もあります】 【宰相 大将 中将 少将】


 わかりやすく階級の上下関係の構図まで表記してくれた『祝福(ギフト)』さん。

 騎士の中でも、『大将』『中将』『少将』でザックリ三つに分かれて、『騎士団総長』が一つに束ねているとか。

 男爵とか貴族らしい階級はあくまで強さを示すらしく、そこそこに強いのが一番下の『男爵悪魔』とのこと。『一般悪魔』より強いという認識でいいらしい。

 私って、『男爵悪魔』より弱いってこと?


【否。階級に当てはめると『侯爵』に匹敵します】


 すっ飛んでるなー。

 全然強さのすごさがわからなくて、そっかーって反応しか出来ないけど。


【ただし、経験の浅さが欠点なのが否めません】


 それもそうよね……わかる。

 『男爵悪魔』だけの騎士団に攻め込まれたら、普通に負けるとは想像がつく。


 というか。私って、第十三王に下った方がいいの?


 『祝福(ギフト)』さんに尋ねたのに、無反応が貫かれた。


「答えないんかーい!」


 盛大にツッコミを入れたあと、その第十三王から騎士を送り込まれた時に対処が出来るように、また技の会得や使い道を考えるなどの整理を再開した。



 


明日から、毎日1話更新! 19日まで!


(2023/12/07⭐︎)

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