表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/57

♰56 腹ペコ姉弟を勧誘。

短め!


主人公視点→ ●♰●♰●   

三人称視点→ ○♰○♰○

   ●♰●♰●



 グルルルゴロロロロッ。

 魔族姉弟のお腹から響き渡る怪獣の唸り声のような腹の虫の音。


「な、なんでも話します……どうか……どうかお肉を恵んでください」

「後生……」


 表情筋が動いていないけれど、顔色が悪い姉弟が追い縋る。『闇喰らい』を食べた魔物は稀に大食いになるとの話だが、確かに大食いのようだ。まだまだ足りなさそうな壮大な腹の虫の音だった。


「じゃあ、先に追手が他にいないか、ここにいることを他に知っている者はいないかと答えたら」

「「いないっ」」


 ブンブンと頭を横に振り回した二人を観察したが、嘘をついているようには見えないので、そのまま餌付けを再開する。

 もりもりと肉を平らげていく二人。暴食である。どれだけ食べても足りないかのように、腹の虫は鳴り続けたが、しばらくして止んだ。

 香草で揉み込んでおいた肉を自由自在に操れる『鮮紅の焔』でこんがり焼いて、タレをかけて渡す。


 念には念を、と顔バレしていないロンが、例の廃墟の街を見てくると行った。アズライトは不服そうだが、顔バレしていないロンがこの場合、最適だ。


「ご馳走、感謝」

「感謝」


 たらふく食べた姉弟は、手を合わせて頭を下げた。かなり食べたな、この二人。


「ワタシ達は、確かにルビィっていう名の赤い悪魔を見つけ出すように言われた」


 リーチェが答え始めると、隣でローチェは頷いた。


「でも、その前に第三王国を攻め入ってて、食べる暇もなかった」


 遠い目のリーチェの隣でローチェはコクコクと頷く。


「見つけるまで戻るなと厳命されて、空腹で廃墟の街をさまよってて死にかけた……」

「そしたら、いい匂いがした」

「美味しい肉が焼ける匂い」

「生き返った」


 真顔が至福に緩んだ瞬間だった。


「整理しよう。第三王国を攻めているの? 第十三王国は」


 そこ、かなり重大な情報では?


「第三王国から攻めてきたから反撃すると、王は言っていた。そのまま三王国を攻めるつもりだと思ったけど、三王国も一筋縄ではいかない。一度撤退命令が来たかと思ったら、激おこで赤い悪魔探しを命令された」


 リーチェは淡々と語った。


「ああね。あの廃墟の街で第三王が自分の騎士団を召喚したからじゃん? アレを口実にされちゃったんでしょ」と、カルクリューがけらりと笑った。


 ああ、あの時か、と思い出す。戦争の口実にされたと。


「脳筋の十三王が、これを機に戦争を吹っ掛けたのでしょう。しかし、ルビィ様が私の名づけをしたことでそれどころではないと優先順位を変えたのでは?」


 嬉しそうに言うアズライトだが「それって、大人しくしていれば、十三王か三王のどちらかが倒れてくれたんじゃないの?」と、げんなりしてしまう。


「ルビィ、弱気~?」

「え~、ルビィが弱気ぃ」


 双子がケラケラするが、正直言って二か国の王を敵に回しているのだから、片方が片付いた方がいいと思うに決まっているじゃないか。

 第十三王なら相手する気満々だが、第三王は別である。「むぅ」と口を尖らせた。

「「可愛い♡」」と、双子がデレ顔になる。


「脳筋の王が、隣国に戦争を仕掛けた。でも、私の挑発を受けて優先順位を変えて、戦争は一時中断して、あなた達を追手に放った」


 ということらしい。大食らい姉弟は、コクコクと頷いた。


「じゃあ、あなた達に提案するわ。十三王を裏切って、私につかない? 大食いなんでしょ? これから食生活を豊かにするから、あなた達はお腹いっぱいに食べることが出来る利点がある。どうする?」

「「!!!」」


 大食らい姉弟は、涎を垂らす締まりない顔になる。チョロいな。


「なんで勧誘するの?」

「どっか気に入る要素あった?」


 双子が、首を捻る。


「こっちの手駒が増えるのに越したことはないでしょ。名づけられたアズライトを相手させるために放った刺客だから、それなりに強いだろうし」


 こちらの味方につけられるなら、そうするべきだ。最も、情報が正しいならばな。


(ロン、どう?)


 『意思伝達』で探りに行ってくれたロンに尋ねる。


(他はいません。話は本当のようですね)とのことだ。


 私の目配せを受けて、アズライトは笑顔で肉をちらつかせた。


「ほら、食べたいのでしょう? イエスと言えばいいのです。簡単でしょう?」とニコニコ。悪魔の囁きだ。


 大食い姉弟の目は、肉に釘付け。揺れる肉を、凝視して追いかけている。ダラダラと汗を垂らして真剣に悩んでいるようだけれど、悪魔の囁きにもう負けそうだと目に見えていた。


「あなた様の味方になりますジュルリ。肉を、肉をくださいジュル」

「下僕にだってなりますジュルリ」


 目がイッちゃっているんだが。肉の下僕かな。こっちがドン引きしていると、慌てた様子で。


「上書き『主従の名づけ』だって受けます!!」とまで言い出した。


「いいの? あなた達の名付け親は?」

「親代わりの師匠です、ジュル」

「第十三王に殺されました、ジュル。師匠は十三王の下につくことを拒んだので、ジュルリ。自分達は勝てないと判断して、下りました。お腹空きました」


 大食い姉弟は、話している間も涎を啜りつつもお腹を最大に鳴らす。


「へぇ……十三王に楯突く理由はあるってことね。『主従の名づけ』で縛らせてもらえるなら、そうする」


 そう決めると、双子から不満げな視線を送られた。なんだ、と見つめ返すと「オレ達よりすんなり名づけするなんて不公平だ」としょうもないことを言い出したので無視をしておいた。


「じゃあ食べていいよ」

「「いただきます!!」」


 悪魔の餌付けに飛びつくのに、躊躇いなかった。


「オレらが腕試ししていい?」と提案というかおねだりをしてきたのは、カルクリュー。


「ついでです。『闇喰らい』の『闇操作』も披露しなさい」と、アズライトは姉弟に命じた。


 リーチェとローチェは、私を凝視つつも食べる手を止めない。もぐもぐ。ひたすら、もぐもぐ。


「『闇操作』を披露しつつ、カルクリューとグラアウルと戦って」と私から頼んだ。


「「もぐ!」」

「いや、口の中飲み込んでから返事しろよ」


 口いっぱいに肉を頬張りながら返事した二人に、グラアウルは呆れたツッコミを入れたのだった。



 



気付けば六ヶ月も書いてなかったので、仕事の合間になんとか1話書けました。

おかげさまで書籍化のお仕事がいっぱい……!

ハロウィンがすぐそこ! ハロウィンに盛り上がるタイプの作者は、この人外溢れる『悪魔転生』を10月頑張りたいですね……!(希望)


また書けましたら更新しますね。

2024/09/25

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『執筆配信』するVtuber★よかったら登録ちゃんねるお願いします! 4dd343899d708783cb0612ee69cc788c.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ