♰48 名づけの順番は守るべき。
●♰●♰●
リスタと合流して、魔界へ。
【魔界】 【最果ての村】
村に降り立てば、村人総出で建設が進んでいるから賑わっている。
「ルビィ様だ!」
「ルビィ様! おかえりなさい!」
私に気付けば声をかけて明るい笑顔で手を振る村人達。ひらりと、手を振り返す。
熊の村長は慌てて「おかえりなさいませ、ルビィ様! ルビィ様のお住まいがもうすぐ完成します!」と報告しに来た。
住まい? と首を傾げる。
手が塗装塗れのまま、村長は案内してくれた。
畑の方面にあった一軒の建物。大きな扉があり、中は広々とした一室。大人数で塗装をして整えていた。
これが私の住まい? というか、何故私の住まいを用意しているんだろう。
「『ルビィ様のベッド』が入るようにしました」
「私のベッド?」
ベッドがあるの? 作ったってこと?
ドドドッと走ってくる音が聞こえてきたかと思えば、青い縞模様の化け猫が見えた。
「なーう!」と満面の笑みの化け猫魔物、ガットバー。
【ガットバー(ルビィ様のベッド)】と表記されている。
呼称が私のベッドになってる。私がいつもベッドにしているから、呼称にまでなったよ、おい。
まぁいいか、と顎をコショコショする。
子ども達も私が戻ってきたと聞き、駆けつけた。
「ルビィ様、何か変わった? 綺麗になった」と犬耳の女の子がキョトリと見上げる。
「ありがとう」と、笑って頭を撫でておく。
「ルビィ様、花咲いた!」「咲いたら、オヤサイ食べさせてくれるって言った!」と、私は囲まれてしまう。
リスタは改良に改良を加えて『成長超促進』を付与して『栄養分』も豊富に込めた。
数日で野菜の花がもう咲いたようだ。ちゃんと咲くまで世話出来れば、地上から持ってきた野菜を食べさせてやると約束していた。
「よし、じゃあ見せて」
「「「はぁーい!」」」
はしゃぐ子ども達と畑に向かいながら、『偽装』を使えるかを尋ねる。
そもそも、魔界住みの子ども達は、人間に偽装する必要はない。なので答えとしては皆が使えないということだった。
「人間のフリが完璧に保てる子は、地上でお仕事の勉強をして、私の家で仕事をしてほしいんだけど」
「「「おしごとぉ?」」」
「うん。地上の方が美味しい物いっぱい食べれるよ?」
ここは、やはり食べ物で釣る。元気よく挙手されたので『偽装』を習得した子達に使用人見習いをさせよう。
料理に使える薬草と香草も順調に育っているので摘み時だ。先ずは、摘み方を教えて集めさせた。
魔界生まれの薬草採取完了だ。野菜はジャガイモと人参。人参は、ウサギ型の魔獣の餌のためでもある。飼育小屋のところにも、植えておいた。
「ふむ、順調だな」と、大精霊のリスタもお墨付き。
魔界生まれの野菜の成長は、上々だ。
ロンの戻りを待つために、夕食を作る。
私の住まいとともに、調理場も優先的に作られて、暗くなる頃には完成していた。
そこで持ってきた調理器具で野菜スープを煮込んで、香草で揉み込んだ魔物の肉はこんがり焼く。野菜ゴロゴロのスープの旨味に感動する子ども達に村人達。これで料理の幅は広がるだろう。
次は果物も作って収穫して食べさせたいものだ。場所はバカみたいにあるので、小麦だって育ててお菓子作りも出来るようにしたい。
「お待たせいたしました、ルビィ様。地上の魔物討伐の人員を集めてきました」
ロンが戻ってきた。例の魔物討伐のための人手。狼耳の青年の頭を鷲掴みにしたかと思えば下げさせた。
「不肖の孫と入れ違いだったので、捕まえるのに時間がかかってしまいました。孫息子です」
「グルルッ」
「手伝わせます」
唸る孫を殴って黙らせるロン。
孫息子か。ずいぶん野性的で、堂々とした上半身裸だ。不機嫌な仏頂面は、性格に難がありそうなのを表していた。無理矢理連れてこられたようで、不服そう。
「まぁ、ロンに任せるよ。孫くん、よろしくね。ロンから聞いていると思うけれど、魔物を討伐して食料を確保して、素材集めを頼むね」と声をかけておく。
見知った顔もいる。各村や街で顔を合わせたのだろう。討伐を任せられるのだから、腕に覚えがある魔物のはず。
「「「お任せください」」」とそれぞれ、頭を下げる辺り、やっぱりこちらもご飯で釣れたのだろうなぁ。
夕食の匂いに、ソワソワしている。
ロンはどの街から何人連れてきたか、ちゃんと記録してくれたそうだ。それにより、各出身地への報酬を振り分けるとのこと。各地の必要な生活道具のリストアップも、済ませたそうだ。
仕事の出来る執事だと褒めたら、血涙を流しそうなほどアズライトが悔しがった。
ロンのポジションになりたいのね、アズライト。
「なら、率先して仕事しなさいよ」
「なっ……! 横暴な命令、ご馳走です!!」
ロンに出遅れてないで自分で仕事をこなえばいいじゃん、と言ってやったら、ショックを受けたと見せかけて大喜びした……。
「アズライト様、なんか変……」
「アズライト様、変……」
「変だ……」
子ども達も、変態さを感じ取って引いている。
名前がついたことを自慢されて、褒め称えていたのにね。
『ルビィ様のベッド』と呼称がつけられたガットバーをコショコショぐりぐり。
「お前にも名前をつけてあげようか?」
「なう!?」
見開いた目を輝かせた。
がしかし、ぞわわわっと毛を逆立てる。ガタガタと震えて縮こまるからどうしたかと思えば、双子吸血鬼が牙を剥き出しに殺気立っていた。
「ルビィ……次、名づけするのはオレらだよな?」
「その猫、マジ首ちょんぱすんぞ……」
殺気マシマシだ。本気度が違う。
ガタガタブルブルと震えっぱなしのガットバーのために、順番を守ろうか。
「双子の強さって、悪魔の階級だとどれ?」
「えー? 今必要?」
「名持ちの時は『大公爵』くらいだったかなー」
「今は?」
「「ええ~……『侯爵』くらい?」」
ちょっと面白くなさそうながら答える双子。
それで最初は『大公爵』のアズライトと『侯爵』の私との対決は避けたのか。二回目に会った時に大精霊のリスタもいたら、そりゃ逃げたくもなるよね。
「名づけで進化するなら、『大公爵』級には戻ってほしいよね」
「「そこはルビィの愛でしょ」」
「……」
『大公爵』級に戻れば十分だけど。私の愛で左右されるのかはさておき、双子の進化も重要よね。
なんせ彼らの能力は足止めに適しているし、弱体化もいい。多勢の相手をしてくれるならば、頼もしい。
「もう決めた?」
「ねぇ決めた?」
「何が?」
「「名前!」」
ずいずいと迫る双子。
「…………」
沈黙した私は、そーと視線を逸らした。
「え? 何その反応?」
「違うよね? 考えてないとかじゃないよね?」
「ルビィ、違うって言って!」
「ねぇルビィ!!」
左右で袖を掴んでグイグイ引っ張るけれど、素知らぬ顔を貫いておいた。駄々っ子は無視。
でも正直、双子への名づけに消費する魂エネルギーが足りないのが現状。
かと言って人間殺しに行くのもなぁ。無作為に殺す気はない。
悪人ならいいけれども、そう簡単に見つかるわけもないしね。そこはしょうがないから、HPを対価にするしかないか。『悪魔王』になった分、HPは多くなっているしね。大丈夫だろう。
「どっちが兄なの?」
「「え?」」
キョトンと目を瞬かせる双子だったが、スッと細めた。
「ルビィ……同時に名づけする約束だろ」
「え? そんな約束してない」
「した。絶対にしたから。兄の方が先とか言うなよ」
釘を刺してきたよ、こいつら。仲いいな、おい。この双子。
二人同時なんて……無茶言う。
まぁいいか。どっちが先かと、喧嘩しないのなら。
どっちが兄とか決めてなかったし、名前もここの段階ではまだ決めていない状態。名づけは慎重に★
2024/04/03





