♰46 伯爵邸で一時休憩中。
●♰●♰●
キンバリー伯爵邸へ、夕食をとるついでにアズライトを改めて紹介した。
というか、アズライトが自己紹介したいと言い出したのだ。
「ルビィ様から名を受け賜りました、『アズライト』です。どうぞ、この名で呼んでくださいませ」
胸に手を当てて、煌びやかな笑顔で名乗る。
というか、呼ぶように要求していた。
「ええっと……では、アズライト殿と」
「ただのアズライトでいいよ」
「ええ、構いませんよ」
ジョンが呼び方に困っているので、私が言えば、ご機嫌なアズライトはむふーと緩んだ顔で肯定。
「……なんか、強くなってませんか? 自分の気のせい?」と、交互に見てくるダロンテは、相変わらず野生の勘が鋭い。
「名づけしたら『進化』したんだ。主従関係を結んだから、私も『進化』したの」
「どれくらい『進化』したんだ? ルビィの階級は『侯爵』だったよな? アズライトは『大公爵』で……それで進化?」
よくぞ聞いてくれた、ジョン。
「『悪魔王』」
「え?」
「悪魔王♡」
笑顔で畳みかける。
ダロンテの顔色が真っ青だ。
「ルビィは王様になったということ?」
「ううん。種族の階級として頂点に立ったってことだけ」
「いや、それはすごいことなんだろ? 立ったってことだけ、じゃなくて」
首を傾げるリリンさん。ジョンは、ツッコミを入れる。
「ルビィは生まれ立てと言ったくせに、名前を持って戻って来るんだもんな……さらに『進化』するとは」と、しげしげと感心したジョン。
「ジョンはそんな悪魔を召喚したんだぜ」とウインクしておく。
苦笑するジョンの隣で、リリンさんが代わりにウインクを返してくれた。
面白がって投げキッスをすれば、それもお返しされた。
双子が便乗して投げキッスしてきたので、はたき落とすアクションをしておく。
「「ガビーン」」
うるさいよ。
「それで、方針を固めたよ。第十三王を倒す」
「……勝算はあるのか? ひとえに王を倒すと言っても、国と戦うってことなんだろう?」
ゴクリと息を呑み込むジョンに頷いて見せる。
「今回、アズライトが進化して私にも恩恵がきたからね。双子の方の恩恵にも期待して、あとロンの方は上書きでしてこっちも期待しておくんだ。私も双子達の方も、パワーアップが出来るからね。そうやって戦力を増やそうと思う。他にも、可能な限り戦力を得るつもり。それで頭を討ち取りに行く」
しっかりと戦力を集めて、挑む。それを聞いて、多少は安心した様子のジョン達。
「その間、最果ての街や村では生活改善をする」
「いい王様ね」
「つまり、王様になるのか。魔界の第十三王に」
「んー、そこは変更するかもしれないが、一応その方針だね」「どうしてそこはなるって言い切らないの?」
「いや、正直、今の十三王の国政は気に入らないから討ち取りたいけれど、私より相応しい王がいるっていうなら押し付け、ゴホン、任せるよ。その方が国民のためでしょ」
口を滑らせたが、ドヤ顔で押し切る。
「ルビィは玉座でふんぞり返っててもいいのに」
「好奇心旺盛のルビィなら、いつも視察してそう」
双子は、ニヤニヤした。
「そりゃするでしょ。だいたい、今の十三王が最果てに目を向けないから、私達が今好き勝手出来ているんじゃん。喧嘩売った私達を、今頃、どこを探しているのやら」
まぁ、絶対に見付けられないと踏んでいるけれどね。
だからこそ、畑作りも街作りもしているし、続けるつもりだ。
「流石に森を生やせば噂を聞きつけて使者でも送るのではないか?」と、リスタが懸念を口にする。
普通、魔界に植物は生えない。異常事態とも言えるから、生えているという噂を聞けば、人手を送るのは当然の処置。
「それはどうでしょうか。魔界に緑をもたらすなんて偉業は思いつきません。武力を高めるしか能のない愚王のことです。先の戦いでまたもや戦力を削がれ、怒り狂いながら探し出せと喚いている頃でしょう。命令を受けた者は仕方なく、ルビィ様が最初にいた廃墟の街をさまよっているに違いありません」
アズライトは、これまた意地が悪そうなほくそ笑みを零した。
だって、あちら側の手掛かりは、あの廃墟くらいなのだ。今回のアズライトの進化を魔界のどこかでしてしまったら居場所のヒントを与えたかもしれないが、そうならないためにわざわざ敵地に乗り込んだのである。
強いて言えば、地上に避難していると考えているだろうし、そうなると悪魔の生態上、魔界に帰還することをひたすら待つしかないのだ。罠くらい張っているのかもしれないが、私がそれにかかることはない。
私に精霊の加護があって植物を生やせることはなんて情報は得ていないから、耳に入ったところで直結はしないしね。
「こちらも口止めを行っていますし、村人から王の耳へと入ることもございません」と、ロンは心配ないと言う。
「まぁ、緑を広げるのも、注意しておこう」と、私はそう決めた。
「そうか。何か役に立てることがあれば言ってくれ」
ジョンが言うと、ロンが挙手した。
「ルビィ様。この機会に提案させていただきたいのです」とのこと。
「子ども達を使用人見習いとして働かせてみるのはいかがでしょうか。もちろん『偽装』が完璧に出来る子達が、最低条件。キンバリー伯爵邸で学ばせたあと、元子爵邸で使用人を務めればいつでも元子爵邸に帰って来れますし、子ども達も経験となるでしょう」
「ああ、いいね。頼めるかな? ちゃんと人間のフリはさせるから」
頭に浮かべるのは、獣耳の子ども達。
「人間のフリが出来ると言うなら、お手伝い要員として学ばせられるわ」と、リリンさんが微笑んだ。
「ありがとう。いい子ばかりだから、よろしくね」
ニッコリしておく。
「提案ありがとう、ロン」
「いえ、なんのこれしき」
ホホッと自分の髭を撫でるロン。
「ルビィ様。ならば、魔境で魔物討伐をする人選も行いましょう。魔物素材を売った資金で、必要な道具を買い揃えるのがいいかと」
ずいっと前に出て、次に提案してしてきたのは、アズライト。
「取り急ぎ、必要な道具を地上で買い揃えるのもいいだろう」とリスタ。
そうだな、あれこれ地上で買った方がいい道具はある。色々リストアップしておこう。
「人選なら私めが」とロン。
「いいえ、私が」とアズライト。
「私めが」「私が」と張り合う。
「ロンに任せる」と、私は決める。
ロンの方が適役でしょ。アズライトがあからさまに落ち込んだ。
「アズライトは私と手合わせよ。進化後の強さを確かめてみましょう」
そういえば、アズライトはぱぁあっと目を輝かせた。チョロい。
「階級は同じだけど、どっちが強いんだ?」と、双子の片割れが首を傾げた。
私はアズライトと顔を見合わせる。
「……手合わせは、進化の強さを確かめるだけですよね?」
なんで緊張しているの。アズライト。
「別に強さの上下を確かめるつもりはないよ。強さと能力を確かめるだけ。明日魔境でやろう」
「かしこまりました、ルビィ様」
アズライトは、承諾。
ロンは先に魔界へ戻って人選を済ませるとのことだ。
リスタも森に戻るから、残る私とアズライトと双子で元子爵邸で休むことになった。
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2024/04/01





