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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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44/57

♰44 苛烈なルビーの虜の悪魔。(アズライトside)

主人公視点→ ●♰●♰●

三人称視点→ ○♰○♰○


『アズライト』side

  ○♰○♰○



 『アズライト』の名を与えられた同じ異世界転生者の悪魔。


 おおよそ300年以上前に転生したが、あくまで地上の時間の話だ。緩やかな魔界で過ごす時間も多く、時間の経過はあっという間だった。


 ルビィとともに、元の世界との時間の経過など気にしてはいないが、恐らく『アズライト』もルビィも大して離れた時代の人間同士ではないと信じて疑っていない。どうして異世界転生したかは、理由も深く考えない。所詮、異世界から異世界への転生。神のみぞ知ること。考えるだけ無駄なのかもしれない。


 『アズライト』は、魔界で誕生した。『異世界転生の祝福(ギフト)』を翌朝まで調べ尽くして、徹底的に強くなろうとした。

 すぐに外見を由来に『水銀』の名をつけたのは、事故のようなものである。

 『進化』したからいいかと割り切って、会得した『成長ポイント』を割り振り、強者を目指した。

 『悪魔召喚』で地上に降り立ち、乱獲のように魂を得て、『取り引き』をこなした。『覚醒』の条件を見つけ出せたのは、きっとゲーム知識が豊富だったからだ。ゲームオタクの可能性が高い。自己の名づけで前世の思い出は消費されたが、知識が多いのでそう思っている。ただし、うっかり睡眠で会得できる『成長ポイント』を見落としたのは痛恨のミス。


 『アズライト』は、物足りなさを感じていた。

 『大公爵』まで上り詰めたが、満たされない。

 第十三王から下に就けと勧誘をされるが、ちっとも心惹かれない。

 相手も他国にやりたくはないのか、しつこくは迫らないが、幾度もオファーをするために城へ呼び出してきた。それも要因の一つだった。『取り引き』を立て続けにミスで失敗してしまったあと、当時の名前である『水銀』が今更ながら気に障り、衝動的に放棄した。


 『祝福(ギフト)』にはデメリットが大きすぎると警告されたが振り払って放棄した。


 名前は放棄出来たが、レベルは大幅にダウン。『大公爵』から『侯爵』まで落ちた。それだけではなく、今までサポートをしてくれたシステム、『異世界転生の祝福(ギフト)』も使えなくなったのである。今では『鑑定眼』や『索敵』の表記はされても、助言は表記されなくなってしまった。『成長ポイント』も、もう割り振れない。


 我に返って、後悔しても後の祭り。


 泣く泣くセーブポイントでセーブしそびれたゲームをやり直すように、また条件を満たして『覚醒』をして『大公爵』に返り咲いた。それで何かが変わるわけではなかった。やはり満たされない日々。面白みが何もない。相変わらず勧誘されるが、本当に心が惹かれない。むしろ嫌だった。


 何を好き好んで肉ダルマみたいな男に仕えなければいけないんだ、と思った。


 しかし、いい加減のらりくらりかわされるのも嫌になったようで、十三王は下に就くように迫った。



 そんな時だった。ルビィが、目の前に現れたのだ。



 鮮明な赤の長い髪。灯火のように可憐な少女に見えて、苛烈に目に焼き付く赤の少女。絶対絶命な状況下でも絶望しない。むしろ燃え滾るような赤を見た。


 実際、手負いで追い込まれたルビィは不敵な笑みを釣り上げて、謁見の広間を大破させる爆裂の魔法を放ったのだ。『侯爵』より下の階級は被害が大きかったが、十三王は広間を壊されたことに怒り狂った。探せという命令にいち早く挙手したのは、もちろん胸の高鳴りが治らなかったから。



 きっと天命だと、本気で思った。この肉だるまではない。仕えるべき主は、彼女なのだと。



 今までは心が死んでいたのではないかと思えるほどに、興奮が止まらない。心が躍る。心が惹かれる。

 ドン引きした様子で蔑む目を向けられるだけで、ゾクゾクする。



「(――――ルビィ様は、私の全てだ!)」



 本気で心酔した。


 しかし、ままならない。

 ルビィの捜索をしていると誤魔化していた十三王に、わざわざチクッた双子吸血鬼のせいで移住計画は頓挫。さらには第三王まで敵対する構図の出来上がり。


 魅了されるのはわかるが、断じてルビィは双子吸血鬼のモノではない。


 精霊王の加護を得るという偉業は素晴らしいと賞賛するが、精霊王の保護者面はいただけない。


 自分こそは尽くせると言わんばかりの恩返し勢の千年狼とは、どちらがより役に立てるか張り合う。


 『異世界転生の祝福(ギフト)』の相談を受けられるのは自分なのだから、リードしていると自負している。自分が一番役に立っている、と。


 魔界で植物を生み出すことは微力ながら力になったとも思う。足りないのなら、力不足だと罵ってほしい。それを糧に精進する所存。



 自由気ままに見えて、情に厚く、慈愛が深いルビーの宝石のような美しき悪魔。

 子どもっぽい言動を垣間見せるのに、所作は貴族の夫人のように洗礼されている。なんでも遊びでキンバリー伯爵夫人を真似たところ、染みついたとか。美しく魅せる姿勢が自然体となっているのだ。魅了されないはずもない。『魅了』のスキルを使わずとも、メロメロだ。


 よく食べるのは愛らしいし、子ども達に優しく笑いかける横顔は女神だと思うし、寝顔は健やかで天使だ。

 悪魔なのに。ギャップコンボで、メロメロだ。


「(ああ! 私はあなたの忠実なる僕です!!)」


 そして、願いが叶う。『アズライト』の名が与えられ、名実ともにルビィの(しもべ)となった。



「(私は『アズライト』……! 私の名は『アズライト』! ルビィ様の『アズライト』!)」



 『超進化』の繭の中にいる『アズライト』は、幸福に満たされていた。心が熱い。絆を、確かに感じた。


 名で結ばれた絆が、そこにある。温かい。灯火のように小さく仄か。それでいて苛烈に焼き付く。彼女のような絆の存在が、刻まれていた。



「アズライト!!!」



 その声で呼ばれて、覚醒する。『超進化』は、完了した。


 ユニークスキル『青藍の炎』は、アルティメットスキル『青藍の(ほむら)』と進化した。それを放つ。


 『青藍の炎』よりも精度も威力も高くなった『青藍の焔』でルビィと双子を除いて、辺りを青い焔で覆い尽くす。


「「あちぃい!!」」


 双子が軽い火傷を負ったようだが、そこは御愛嬌である。


 決して、ルビィだけは傷一つつけない。青い焔の中、ルビィを見付ける。


 舞い上がる鮮明な赤い髪。そこに埋まる二つの艶やかな黒曜石のような角。上向き睫毛の下の深紅の瞳。色白の小顔。ぷるっとした赤みのある唇。黒のコートの下のVネックのシャツには膨らんだ胸。コルセットベルトで絞められたほっそりしたウエスト。短パンから伸びる美脚。髪の毛の一本一本から細部までが、心を惹きつける。



「(ああ、麗しい我が主!!! 私のルビィ様!!!)」



【悪魔 男】 【アズライト】 【悪魔王】



 悪魔の最強の階級『悪魔王』の風格を漂わせる貴公子は、不敵な笑みを深めた。


 青い冷たい瞳をギラつかせて、青い焔を燃え上がらせながら。

 


 


逆ハーの第一号、アズライトでした。

いいね、たくさんいただけました! ありがとうございます!


2024/03/24

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