♰41 『ユニークスキル』と『魅了』の話。
●♰●♰●
伯爵邸へ寄って、無事だということを報告。そして、元子爵邸へ。
元子爵邸の私の部屋が、真っ赤な天蓋付きカーテンのベッドに合う寝室に変わっていた。手がけた双子吸血鬼は、ドヤ顔だ。
地上と違って魔界の時間は緩やかなので、一休みをすることに。
「双子はちょっと出てって」
「「ええーなんで?」」
「勝負に負けたんだから言うこと聞きなさい」
「「……寝室で何する気?」」
「話だけよ」
胡乱気な目で見てくるな。大公爵と話をするだけだ。
しっしと追い払うと、しぶしぶと出ていった双子は、また寝室に顔を出すと「ヤるなら全力で止めるかね!?」と声を上げたので、顔を氷漬けにしてやった。のたうち回って、退室。
「それで、お話とは?」と全然双子の心配をしていない大公爵は、にこにこして話を待った。
「『ユニークスキル』のこと聞きたくて。どうやって手に入れたの?」
「ああ、私の『青藍の炎』ですか。『祝福』で手に入れようとお考えなのですね」
察しがいい。
まぁ、大公爵と二人で話すなら、必然と共通の秘密である『祝福』に繋がると推測出来るだろう。
「私の『青藍の炎』の場合、『火操作』で遊んでいただけなのですよね……」
「遊んでいただけで特技の上位能力を手に入れちゃったと?」
「恐らく、気付かないうちに条件を満たしたのでしょう。そういうことで、私から助言出来ることがないのです。申し訳ございません」
しゅんと眉を下げる申し訳なさそうな顔の大公爵。
「ちなみに具体的にはどうやって遊んでいたの?」
「燃やし尽くしておりました。地上でも、魔界でも」
……放火魔かな?
いい笑顔で言われて、私はリアクションに困った。
「誰誰を葬ってくれという取り引きが多かったこともありますので、火で骨まで残さずに葬ったことは百に及びます」
「私も転生早々に人間を丸焼きにしたけれど、大公爵も大概だよね」
「それほどでも」
褒めてないんだよね。
「大公爵も、悪魔に転生したから、人に手をかけることは抵抗なかったの?」
私の場合、転生しちゃったって割り切ったし、そもそも悪人だったし、ジョンを助けてあげたい気持ちを優先した結果だったが、大公爵はどうだったのかと気まぐれに尋ねてみた。
「前世の記憶を失くしたあとだったので、特に躊躇はなかったですね」
「…………そう」
大公爵のキョトリ顔を見て、あ。これ…………前世の記憶がまだあった時点で、殺した私の方が異常みたいだな。黙っておこう。と思った。
どちらにせよ、悪魔として順応したのなら、特に人殺しは躊躇しないのだろう。魔物だもの。
「ユニークスキルを得て、パワーアップを狙っていらっしゃるのですか?」
ベッドに寝そべる私に、大公爵は笑顔で尋ねる。
「うん」
「ちなみに希望はあるのですか? 具体的に欲しい能力があるとか」
「今のところないけど」
「では、私としては魅了系に特化した能力をお勧めします」
「魅了ぉ?」
寝そべったまま頬杖をついて不満げな声を出してしまう私に対して、大公爵は笑みを崩さない。
「魅了系にも色々ありますので、ルビィ様に相応しい魅了系のユニークスキルが得られるはずです」
「いや、なんで魅了系なの。状態異常、精神支配系の能力を得てもパワーアップとは思えないんだけど」
「いえいえ、そんな」と大公爵が首を振る。
「あの双子の吸血鬼をも魅了したではないですか、ルビィ様。その点、第三王の魅了の魔族よりも、適性が上かと推測できますよ」
私の魅了への適正が評価されるのは、まぁいいけども。
「『魅了』なんて、見目がいいだけでその辺の悪魔も習得出来るものでしょ。上位能力があったとしても、パワーアップになるの? 好感度なしの敵には通用しないでしょ」
「微笑み一つで相手の動きを封じられるかもしれません!」
希望的観測では?
「ルビィ様の『魅了』は強化されていらっしゃるのですか?」
「うん、一応ね。最初は無理だったけど、人間なら軽く自害もさせられる」
「骨抜きの完全支配ですね。思考誘導など、魅了支配は色々あります。どんな相手でも隙を生み出すユニークスキルがあってもいいかと。あって損はなし、そしてルビィ様には一番手に入れやすい能力かと存じます。それさえ手に入れれば、あとは他のユニークスキルを得るコツも掴めるのではないでしょうか?」
提案する理由は、私に相応しいこともあるし、他のユニークスキルを得るための練習ともなるという考えのものだった。
まぁ確かにあれば、便利よね。戦闘面で活躍するかはともかく。
何故か、フフンと得意げに鼻を高くしている大公爵。
「じゃあ、双子に聞いてみようか。詳しそうだし」
と言えば、とても嫌そうに顔をしかめた。こら。
「双子、呼んで」
「…………はい」
とても嫌そうな顔でしぶしぶ廊下に出て呼びに行った大公爵だった。
すぐに双子吸血鬼は寝室に飛び込んだ。というか、私のベッドに遠慮なく飛び込んだのだった。
ばふんと、二人に挟まれた形の私の身体が跳ねた。
「呼んだ? 夜のご奉仕がご所望?」
と軽口をたたく元ディスの顔を氷漬けにしてやったら、ベッドの下まで転がり落ちた。
片割れの心配をせず、左側の元ジェスは「なぁに? ルビィ」と話を急かす。
「魅了系のユニークスキルって知ってる?」
「魅了系の? ええ? ルビィ、得るつもり?」
赤い瞳を真ん丸にした元ジェスは、少し考える素振りを見せる。
「魅了系のユニークスキルで戦力を増やす腹積もり? 三王もそんな感じだけど……まぁ、ルビィなら上書きで奪えそうだ」
「そういえば、第三王の騎士団は魅了にかかってる者ばっかりだったね」
「三王の場合、遠目で姿を見ても抵抗ない奴は『魅了』にかかるんだよ。名前知らねーけど、広範囲重視の魅了系ユニークスキルだね」
と復活した元ディスが、私の肩に顎を乗せながら教えてくれた。
「あの偽乳なら遠目で目に付くよね」
「「それな~」」
頷き合ってしまう。
「んで、オレ達は魅了耐性高いし『魅了』レベルも高いだけで、ユニークスキルは持ってないんだけど」
「魅了系ユニークスキルと言えば『魅惑の目』とか『魅惑の笑み』とか、『魅惑』系の名前のヤツが、魅了耐性があっても油断と隙でかかることがある」
「中でも『魅惑の匂い(フェロモン)』はヤバい。アレは下手すると、幻覚で発動者を愛する者と思い込むから、そこから言葉巧みに操られて陥落する」
思ったよりあるし、詳しいのね。
「なんで持ってないのに詳しいの?」
実体験みたい。
「オレ達の親だって魅了が専売特許の吸血鬼だもん」
「特に父親が『魅惑の匂い(フェロモン)』持ちだからね。同じ吸血鬼を魅了して傘下にしているくらいだもん」
「そうなんだ」
ここでその父親は手を貸してくれないか、ということは聞かなかった。
口ぶりからして、良好な関係ではないことは察することが出来たからだ。触れない方が吉だろう。
「ルビィなら『魅惑の目』がいいなぁ」
「ルビィの目に魅了されたぁい」
するり、と腰に手を這わせてくる双子。
そこで静かにキレたのは、黙って見ていた大公爵だ。
「燃やす……! そのベッドごと燃やす!」と青い炎を手の中にメラメラと燃やしていた。
「大公爵」
むくりと起き上がる。鎮火された手の中の青い炎。
「遊んでいたらユニークスキル使えるようになったんだよね?」
「はい、そうです」
「「遊んでいたらユニークスキルが使えるようになった???」」
何言ってんの、な状態の双子はスルーだ。
「じゃあ遊びで『魅了』使いまくっていい?」
私は寝そべっている双子に尋ねた。
魅了耐性の高い吸血鬼の双子に。
「オレらを魅了?」
「ルビィこそオレらに魅了されるんじゃないの?」
フッと不敵に笑う双子は、首元のボタンを外して寛げて見せた。
ベッド上で色気を撒き散らして、【魅了】をかけてくる。瞬時に【無効化】をした。
私も髪を耳にかけて、小首を傾げて「お願い」と甘い声をかける。そして【魅了】を発動。
とろんとした熱い目をした双子は見事に【魅了状態】となったが、すぐに【無効化されました】となった。
「「はう♡」」と『魅了』がかかったことに喜ぶ双子相手に、しばらく遊んでいよう。
もちろん、『祝福』さんでも変化がないか気を張りながら、ユニークスキルを会得することに挑戦だ。
魅了の悪魔を目指します、ルビィちゃん。
45話まで毎日1話更新します!
いいねをありがとうございます!
2024/03/21◇





