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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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40/57

♰40 闇の『迷宮の鍵』の所有者。

   ●♰●♰●



【迷宮内】



 闇の中に引き込まれたあと、パッと開けた視界は、薄暗い城の中だった。

 天井も高く、長く続く廊下の先は、真っ黒で見えないほど。

 『迷宮の鍵』は、『異形』への影響で作られるとのことだが、なんの影響があって城が出来上がるのか。


 ガシャンガシャンと金属がぶつかり合う音が響き、近付いてきたのは、騎士の全身鎧。色は黒。


 ガシャコンガシャコンと三列になってぞろぞろと迫る。

 【シャドーナイト】と表記される魔物の軍が行進した。


 私が炎の閃光を放つと同時に、大公爵は青い炎を放ち、双子吸血鬼は赤い炎の玉を飛ばした。


「あっつ! なんでみんなで火魔法使うかな!?」


 廊下が熱風で満ちてしまい、苦情を言う私は、素早く『収納』から氷の剣を取り出して、ピキンッと炎を凍らせる。


「も、申し訳ございません」と大公爵は、自主的に青い炎を消し去った。


「「ごっめーん」」と、双子は悪びれていない。


「そういえば、どうして大公爵の火魔法って青いの?」


 ずっと思っていたから、ここで尋ねた。


「どちらかと言えば、特技(スキル)です。特技(スキル)の上位能力、『ユニークスキル』です。『青藍の炎』と言いまして、調節可能の火ですので、カイロ代わりにもなりますし、盛大に爆ぜます」

「自在な火?」

「ええ、そうです」

「氷の方が似合いそうなのにね」

「『青藍の氷』を会得し直します」

「いやそこまでしなくていいよ」


 極端な奴だな。

 ガシャコンガシャコンとシャドーナイトがまだまだ迫るから、剣を振りかぶって、氷柱を放つ。

 廊下の後ろからもシャドーナイトの群れが来たから、双子が爪の斬撃を放った。


 その間、『祝福(ギフト)』さんから『ユニークスキル』の説明を受け取る。

 その個体の特有の特技(スキル)らしい。それは普通の特技(スキル)とは、能力と威力が段違いなのだとか。『青藍の炎』は自由自在な威力を誇る変幻自在の炎というわけだ。


「ふむ、多いようですな。ルビィ様、どちらに進みますか? 蹴散らしてみせましょう」


 そう言ったロンは、老執事から巨大狼の姿に変わる。

 前方の先に強い気配がするので、そっちに行くと指差すと、ロンは突進しては本当に文字通り蹴散らした。

 オモチャの兵隊の如く、吹っ飛ぶ鎧。中身がないので、兜を噛みちぎっては踏み潰す。


 そんなロンの脚を危うく、双子の攻撃が掠るところだった。


「おっと、ごっめーん」

「バカみたいにデカくて邪魔すぎたー」


 ケラケラと、双子は挑発。


「邪魔なのはお前達です。燃やしますよ」

「あんだと! 火を使うなって言われたろ!」

「騎士の鎧のように木偶の棒だから、食い散らかすぞ! 小童ども!」

「狼が図に乗んなよ!」


 ぎゃーわー!

 騒がしい連中が喧嘩しながらシャドーナイトを大量に蹴散らしていく。

 やっぱり協調性ないな、こいつら。直接攻撃をぶつけ合わせないだけ、幾分かマシである。


「そうだ! 競争しようぜ!? なぁ! ルビィ♪」


 そう提案したのは、双子の片割れ、元ディス。


「いいね♪ 一番多く倒した奴が一つ言うこと聞かせるで!」


 もう片割れの元ジェスも乗っかった。


「……いいよ」


 シャドーナイトの軍勢を見て、私は承諾。勝負に乗ることにした。


 両手を合わせて、引き離すと同時に『魔糸』を強度に練り上げて伸ばす。先端は土魔法で生み出した塊と、そして風魔法も付与する。巨大手裏剣のようにぶっ飛ばした。


「ロン、避けて!」と、ザックザクとシャドーナイトの首を刎ねていく巨大手裏剣もどきが向かう先にいる巨大狼のロンに叫ぶとちゃんと避けてくれる。

 そのあとも、シャドーナイトの首を刎ねていき、バタバタと倒れて消滅していく。


「私の勝ちね」

「「……ず、ずりぃ……」」

「勝ちは勝ちよ」

「お見事です、ルビィ様」

「流石です、ルビィ様」


 双子は不満げだけれど、大公爵もロンもなんだか誇らしげ。

 でも、終わりじゃなかった。また廊下から湧いてきて、シャドーナイトの軍勢で埋め尽くされた。


「これ攻略しないと無限に湧いてくるの?」


「恐らく」と大公爵が頷く。


 廊下の奥の奥に、大きな気配を感じるし、それが攻略の鍵のはず。


「ロン、乗っていい?」

「どうぞ!」

「じゃあ突っ切って」

「御意!」


 白い大狼の上に跨って、シャドーナイトの軍勢を押し切ってもらった。

 後ろで双子は「ずるい」と喚いているが無視である。


 長い長い廊下をロンに走ってもらいながら、同じ手裏剣もどきで先にシャドーナイトをバタバタ倒していく。


 やがて、大広間に到着。玉座の横に立つのは、今までのシャドーナイトより一回りほど大きな鎧だった。それが四体。

 大剣を構えていたそれは、『祝福(ギフト)』さんによれば【シャドーナイト ジェネラル】と表記してくれる辺り、やっぱり今までの雑魚とは違うのだろう。


【見抜く:この場のジェネラルを倒せば攻略完了。この『迷宮』の支配権を手に出来る】


 支配権? ああね、演出かかっている風に玉座を開けている様からして、この迷宮は主のいない城をコンセプトにしているのだろう。

 つまりは、『迷宮』の攻略の報酬は、この『迷宮』の戦力となる。支配権を手に入れたら、シャドーナイトが使い放題ってことだ。


 現状二つの魔国を手に回している私には、手頃な猫の手である。攻略すべきね。


「全部私が倒したい。いい?」

「「別にいいよー」」

「手伝いも不要ですか? ルビィ様」

「足止めくらいはいたしましょうか?」


 気が利くな。


「そうだね、先ずは一体ずつ相手するよ」

「りょーかい」

「動きを封じる」

「私もお相手しましょう」

「御意」


 そういうことで、他三体は足止めをしてもらうことになった。

 双子はお得意の呪術で拘束、大公爵とロンは戦闘で引き付けてくれたので、私も残る一体と戦闘開始。


 シャドーナイトということで効果的なのは恐らく光属性だけど、悪魔なので持っているわけのない属性である。

 がしかし、私は光属性の浄化というアイテムを所持しているのだった。

 間合いを詰めた瞬間、兜の中に押し込んで発光させただけで、爆破。意外と弱い。


 さて、次。


「ロン」と声をかけて、ロンに引いてもらって交換してもらう。一度戦ったのでジェネラルのダメージケージも表記されているので、戦いやすいが、やっぱり浄化アイテムで事足りる。多少剣を交えたが、隙を突いて浄化アイテムで爆破したあとは、大公爵のところも同じく。最後に、双子のところ。


「「卑怯すぎね?」」と文句を垂れる双子は、まだ私に浄化アイテムを使われたことを根に持っているのだろうか。


【攻略が完了されました】 【闇の『迷宮の鍵』の所有者に認められました】 【支配権を手に入れた】


「ダンジョン攻略かんりょー」とグッと背伸びをした。


「これだけですか? 物足りないですね」と、少々不満げに城内を見上げる大公爵。


「これで戦力は少しは増えたよ」


 私は言いながら、玉座に向かっていき、そこに腰を下ろした。

 足を組んで『祝福(ギフト)』さんに目をやる。


【シャドーナイトを出現させますか?】の文字にイエスを込める。そうすれば、玉座の間を埋め尽くすほどのシャドーナイトが床から湧いて出てきた。


「頭数はあるけど、弱いじゃん」


 数には感心するが、双子は言外に役に立たないと零す。


「試す?」

「ん? うん」


 元ジャスが頷くので、シャドーナイトを一つ向かわせた。

 剣を振り下ろされた元ジャスは素手で剣を受け止めたが、すぐにかわす。


「へぇ! なんか手応えが出てる! さっきと違う!」と感心した。


「なるほど、ルビィ様の力が反映されて、強化されたのですね?」

「正確には、私の闇魔法の力だね」

「ほう……ならば、闇喰らいをどこからか調達するべきですか」


 所有者の闇魔法のレベルが反映されていると知り、大公爵は独り言をごちる。

 闇魔法を極めて、この軍勢を強化したいのか。

 それも悪くないけれど、闇喰らいはそう簡単に見つからないでしょ。


「さて、攻略も済んだし、戻るか。外で試そう」


【迷宮から出ますか?】


 意識を向ければ、地上に戻って、手には黒い鍵が残った。そのまま、シャドーナイトを出現させる。

 うん、迷宮内と同じだ。


「そうだなぁ、魔物を一頭、狩ってきて」


 十体のシャドーナイトがどれほど動いてくれるかを確認するためにも、ついでに魔界への土産に狩らせておく。


それを見送ったら「ロンはまた素材を売ってきてもらっていい? 他の冒険者ギルドで売るのはわかる? あとポーションも買ってほしい」と振り返って声をかけるが、そこに割って入ったのは大公爵。


「いえいえ、それなら私がこなしてきますよ、ルビィ様!」と、すっごい笑顔で買って出てきた。


 まぁ、取り引きをこなしてきた悪魔だし、任せてもいいか。

 双子は論外だから、人間社会に馴染んでいるロンに任せようとしただけども、大公爵だって前世は人間だし平気だよね。


「じゃあ大公爵に任せるね」

「承りました、ルビィ様!」

「終わったら、元子爵邸ね」


 今日売ってもらう分の素材を渡しておく。

 まだまだいっぱいあるのよね。まぁ、折を見て売ればいいか。


「双子とロンだけど、私はリスタの森に寄るから、元子爵邸に戻るなり自由行動でいいよ」

「「ええー、ルビィといるー」」

「リスタはお前達が来るの、嫌でしょ」

「「知らなーい」」


 駄々っ子。


「では、元子爵邸の模様替えの許可をいただけませんか?」


 ロンが言い出すと、双子が食いついた。


「「ルビィの部屋、模様替えする!」」


 赤い瞳を爛々と輝かせる双子吸血鬼。不安だな……。


「まぁ、好きにしていいよ。この魔物の素材で足りるといいけど」


 ちょうどシャドーナイト達が魔物を一頭ずつ狩って戻ってきた。それを血抜きさせて解体も任せた。

 そういうことで、ここで別行動だ。



 私はリスタの森へ、転移した。


 澄んだ空気のペリドット色の森。清々しい気分にさせてくれる。魔界と大違いだ。

 奥に進むにつれて、妖精達が私に気付いてまとわりつく。可愛がっていた聖獣の子ども達も、脚にじゃれてきた。


「来たか、ルビィ。遅かったじゃないか」とプンプンしたリスタ。


「ごめん。『迷宮の鍵』が手に入ったから、攻略してたんだ」


 一応言い訳しておく。


「『迷宮の鍵』だと? なんでそんな物を急に手に入れているんだ」


 片方の眉毛を上げて怪訝なリスタに、経緯を話しておく。

 リスタも、あれからのウサギ魔獣の飼育について教えてくれた。

 今はその飼育小屋の浄化用の石を作っている最中だった。


「ふむ。少しは戦力を得たのは僥倖ではないか」

「そうだねぇ。ぶっちゃけ、十三王は討ち取った方が最善の選択だとは思うんだけど、現実問題、力の差だよね」

「及ばんか」

「前に対決しただけでも、本気出してなかったのに深手負わされたからね。歴然だよ」


 寝そべっている聖獣に凭れて、私は愚痴る。もふもふ。

 膝の上では取り出したクッキーを、妖精達が食べている。


「十三王の首取れば、王国を任せる人材を大公爵が抑えてくれるって言ったし、それで第三国を牽制出来れば、万事解決なんだけどね。そう上手くいくわけもないだろうし」

「そうだな、楽観視出来る状況でもあるまい」


 作業を続けながら、リスタは悩ましげに唸る。


「大公爵達に名前をあげて進化すれば戦力アップに繋がるけど、私もアップしないかなぁ〜、無理だろうなぁ〜」


 名前を得る彼らはともかく、私はパワーアップはしないのだろう。


「『闇喰らい』は食べないのか?」

「え?」

「興味を示していただろう? それに手に入れた『迷宮の鍵』も、ルビィの闇魔法のレベルが上がればその分強化されるわけだ」

「そうは言っても、見付けるのは困難でしょ」


 気付かれていたか。

 でも希少な種族だから見つからないだろう。望みは薄い。そもそも食べるのは気が乗らないのよね。


「戦闘面でパワーアップするなら、ユニークスキルとか得ればいいのかな」


 ふと、大公爵のユニークスキルを思い出した。

 スキルって特技って表記されるから、ユニークスキルは超特技と表記するべきじゃない? なんて、戯言だけどね。


「ユニークスキルか。特技(スキル)の上位能力だからな、パワーアップには繋がるが……習得条件が不明だ」


 リスタの言葉を聞いて、それならば『祝福(ギフト)』さんの出番ではなかろうか。

 私が習得出来るユニークスキルはないかと尋ねてみる。

 がしかし、特に表記されなかった。ないのか。それとも表記するための最低条件が満たされていないのか。大公爵に聞いた方が早いだろうな。


 そのあとは、家畜の食事に相応しい植物を話し合って練習して、まったりした時間を過ごした。



 


5話更新完了! しましたが、明日もまた5話貯めたので1話ずつ更新します! 45話まで!

いいね、ブクマ、ポイント、ありがとうございます!

2024/03/20

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