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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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38/57

♰38 初めての失敗と家畜飼育。

   ●♰●♰●



 ジョンも帰ってきた夕食時。



【魔界へ帰還推奨】



 またもや、赤いテロップが表記された。

 制限時間は、10時間と前回より20時間短い。【第十三王国の最果ての村】と書いてあるから、眉をひそめた。

 獣っ子達の村に何かが……? 追手か? 襲撃か?


「ごめん。急用が出来た。料理長達に謝っておいて」

「どうした?」

「村に戻らないといけない。多分、何かあった」


 一緒に食事をとっていた大公爵も双子吸血鬼も、私に続いて手を止めて立ち上がる。


「ルビィ様。一体、何が?」

「最初の村に戻るべきだ。理由は不明だが、戦闘準備な」

「御意」


 ロンもそばに寄った。とはいえ、私はドレス姿なんだけどね。

 長剣だけは『収納』から取り出して装備した。



【魔界へ帰還】 【第十三王国 最果ての村】



 村の様子は、一見変わりない。

 薄暗いから、時間帯は夜。石造りの建物が並ぶ小さな村に、人気が少ない。

 獣っ子達の姿が見当たらないので『魔力探知』をすると、薬草を植えたところにあった。他の住人もいるようだ。そっちに『飛翔』で駆けつけると。


「「「ごめんなさぁあああい」」」


 と、号泣している獣っ子達がいた。


 怪獣化け猫とともに、ボロボロの姿。巨大鳥の魔物の死体が何人か転がっていて、守護を任せた薬草が見事にぐっちゃぐっちゃにされていた。

 推測するに……植物狙いでこの巨大鳥が村を襲ってしまったのか。それで赤いテロップが……。


「まもれっ、まもれなぐで、ごめんなざいっ」


 犬っ子ちゃんが、顔をべちゃべちゃにして泣いて謝る。

 隣で黒豹の子も謝っているようだが、全然何言っているか聞き取れない。


「村長。被害状況は?」

「他からも魔獣が来て対処したあとに駆けつけた時には、子ども達も奮闘しましたが、薬草は守れず……」 


 熊公……薬草の被害は明白だからね。子ども達の心配ですよ。


「なうぅうう……」と、化け猫がぐずりながら尻尾で泣きじゃくる獣っ子達を隠す。


「怒ってないよ。ポーションあるから、怪我が酷い子から治してあげる」

「ごべんなざいルビィざまぁああ」

「今回は失敗したけれど、怒らない怒らない」

「ごべんなざいぃいい」


 べそ掻きだな。

 ポーションも換金ついでに買わないとだな。足りなくなるわ。


「あーあ、こんな小鳥からも守れなかったわけ?」

「猫失格じゃね? もう首ちょんぱでよくね?」

「そこ、勝手な真似するなよ」


 ガクブル震える化け猫を前にガラが悪い双子に、釘を刺しておく。


「何事も失敗はつきものだ。それに初めてで失敗もよくあること。これはみんなの失敗だ。私達のね。よく頑張ってくれたよ」


 ポーションで傷を癒したところで獣っ子達に言い聞かせると、獣っ子の涙が滂沱した。


「なおぉおおんっ!!」


 お前もか、化け猫……。号泣の化け猫だ。


「失敗から学んで、次に挑むんだ。また挑むことが出来るなら、いいじゃない。みんな致命傷もなくてえらいよ」


 大した傷がないのは、ちゃんと致命傷は避けたからだろう。


「でも、まだまだ強くならないとね。対策を練ったあと、また頼めるように、強くなって?」


 えぐえぐと嗚咽で震えつつも、獣っ子達はコクコクと頷いた。


 倒した魔物は焼き鳥にすると言っている熊の村長に獣っ子達を休ませるように言いつけて、私は荒らされた薬草を見た。


「……萎れてるな」


 薬草は何本かは無事だが、大半は萎れている。


「また魔素でしょうか?」

「うーん、最初の枯れ方だから、これは瘴気だね。水やりの時、瘴気が入れてしまったんだろうなぁ。そこも考えなかったわ。リスタに水の浄化用も頼まないとなぁ。自分で出来るかしら」


 風魔法で薬草をさらい上げて、集めた。


「焼きましょうか」

「いや……これはこれで使い道があるよ。家畜を肥やすんでしょう? その餌にしようよ」


 ボッと手に青い炎を灯す大公爵を止めてから、ロンに目を向ける。


「この村でも、倅の村でも、魔獣を家畜にはしておりませんでしたね。ですが、別に挨拶に行った村では、何体か飼ってました」

「これを餌にあげるついでに、家畜の様子も見てみようかな」


「「えー? なんで?」」と、首を捻る双子吸血鬼。


「いや、興味があるからだけど。興味ないなら、その辺で時間潰せば?」

「「一緒に行くー!」」


 行くんかい。


「しかし、いけませんね。最早、ここはルビィ様の縄張りですよ。こんな狼藉、許すわけにはいけません」


 底冷えする眼差しをする大公爵は、険しい表情だ。


「じゃあお前ここで永久待機してろよ」

「お前が見張れや」


 ハッ、と鼻で笑い退ける双子吸血鬼。

 青と赤の視線が交わるなり、バッチバチと火花が散った。


「そうですかそうですか! あなた達がお留守番しますか、能無しですものね? 双子ども!」

「ああん!? 誰が能無しだよ、活躍してねーのはお前だろうが!」

「活躍ならしてますが!? 微力ながら、ルビィ様の役に立ちましたが!? 立ちましたよね!?」

「オレらの方が、いっぱい働いたよな!? 肉狩りとか血抜きとか!」

「そうだよ、血抜きとか!」

「はいはい、役に立ってくれてありがとう」


 バチバチしている三人に、お礼を言っておく。


「はぁ、小童どもめは捨ておきましょう、ルビィ様。自ら褒めてもらいたがるとは、卑しい……」


 やれやれと呆れ果てるロンは心底蔑む眼差しを三人に向けるものだから「「「ああん!?」」」とブチッと青筋を立てて険悪ムードになったのだった。

 ホント、仲良くしない奴らである……。



 『飛翔』で移動して、新たな村に降り立つ。


「ロン殿!」と駆け寄るのは、灰色狼耳の男だ。


「この前話した世話になるかもしれぬお方を紹介に参った。こちらが肉を分けてくださったルビィ様である」と、ロンはそう私を紹介した。

 肉は全部私の施しということにするらしい。口止め料である。


「ははっ! この村の村長を務めております! 何なりと!」

「……服」

「はい?」


 私は村長の服を凝視した。


「その小汚い服脱げってさ」

「!?」


 やめんか、悪ノリ吸血鬼。

 この村は他と同じく石造りの建物が並んでいるのに、服は格段と違っていた。前までの村は原始的な布切れに対して、田舎貧乏村の村人らしい服装に進化している。

 灰色狼の村長は、ズボンとVネックのシャツに、ベストまで着用していた。


「ああ、衣服は家畜と交換で『アラクネ』の『アネッサ』様からいただいています」

「アラクネ?」


【蜘蛛型の魔物の中で最強種】


 蜘蛛の魔物。それで最強種な上、名持ちとなると、かなりの強さかな。


「家畜に興味があるんだけど、見せてもらってもいい? 餌になる薬草もあるから、食べさせてもいいか、確認したい」

「え? や、薬草ですが!?」


 魔界に植物がないのに、薬草と聞いて、瞠目する村長。

 とりあえず、家畜を見せろとロンが話を進めるので、私は横目で張り巡らされた『魔糸』を見やる。見えない糸が、ちらほら。


「目障りなら燃やします」

「いや、過激……」


 ただそこに蜘蛛の糸があるのに燃やすと微笑むのは、なかなかの過激さだと思うよ、大公爵。


 村長が案内してくれたのは、大きな石造りの建物だ。飼育小屋代わりのようで、足元は岩。

 中にいたのは、ウサギに似た魔獣。手足がちまっとして、長い耳が垂れ下がっているずんぐりむっくりな生き物を、石のレンガで壁を作り、一匹ずつ分けている。


「ウサギ、食べるの?」

「ルビィ。地上のウサギってあれだろ? 愛玩動物だろ?」

「このウサギは可愛くねーよ? 腹減れば自分の耳むしゃむしゃ食うし、なんならどうせ共食いさせてんだろ?」


 私の疑問に、可哀想なものを見る目を私に向けながら、双子が言った。


 え。共食い飼育!?

 ギラギラな凶悪顔だし、耳ちぎれて、血塗れ。確かに、可愛くはないウサギ魔獣だ。


「は、はい。この魔獣は生まれて七夜で成体になりますので、繁殖と食事をさせる以外は一体ずつに」


 村長は、肯定した。

 もうウサギは可愛がれないな……。


「妊娠、出産も早いのですが、共食いで食い繋ぐしかないので、そう簡単には増やせないですね」


 生まれるのも早いが食べれば減る、か。


「では、食べ物を変えましょう。肉の味を覚えていない生まれたてなら、草食に育てられるのではないでしょうか」


 大公爵の提案の通りだな。


「そうだね、ウサギだもの。草食にしよう。ここのウサギ魔獣は、完全草食にしてやろう」


 ウサギ魔獣を完全草食化計画!


「あ、いい?」とやる気に満ちてしまったが、村長の許可を求める。


「えっと、それは可能なのですか?」


 先ずは、そこよね。


「先ずは、主食を草にするウサギ魔獣の飼育を可能にすることから始めないといけないわ。元々、魔獣。獣だから草食化は難しいかもしれないけれど、挑戦しないと始まらない。ここで完全草食の魔獣を飼育してもらえない?」


 挑戦してほしい。そして飼育は丸投げだ。


「食事となる草は、任せてもらえばいいよ」

「ルビィ。精霊いないけど、『創造』出来んの?」

「リスタに浄化道具もらっておいたから、ここの瘴気を浄化したあと、植物で満たすよ。あと水を工夫しないとだな」


 顎を摘まんで、水について考え込む。

 瘴気については、浄化道具がある。

 ああ、でも、水も浄化道具を使えばいいのか。


「乳離れした魔獣がいます」

「じゃあ、薬草を食べさせて様子見しようか」


 飼育係は小鬼の青年で、掌に収まる生まれたてを見せてくれた。

 皺くちゃの子ウサギ。ネズミみたいだな。

 『収納』から回収していた薬草をちぎって、口に運ばせた。スンスンと鼻をひくつかせて、ちまちま食べ始める。


「お気に召したかな。これ、栄養価のある薬草だから、これがいいのかも。この子のスペースは? 薬草を植えるよ。勝手していい?」


 尋ねても、拒否は認めないけれどね。村長は頷き、指示を下す。


 飼育屋は瘴気を浄化し、水を貯めた桶には浄化道具を沈めて清める。そして、肉を食べたことのないウサギちゃんの飼育スペースに、薬草を『創造』して植えた。一画、全てを薬草に。


「おお! 植物が生えた! すごい! こんなに多く、いいのですか!?」

「肉の代わりだからね。それに肥やしたいのだから、食べたいだけ食べさせよう」


 村長だけではなく、飼育係の魔物達も、興奮で目を輝かせた。

 飽きるまで、しゃもしゃもと薬草を無心に食べているネズミ、じゃなくて子ウサギの魔獣を一同で眺めていたけれど、私はその村長達の服装に目を移す。

 普段着と違い、作業着のようだ。エプロンまで。


「ルビィって、ホント多趣味すぎね?」と言ったのは、どっちだったろうか。

 見れば、双子が私の横顔を眺めていた。


「植物育てて、家畜飼育に手を出して、まだ興味あることに首突っ込みたいの?」


 そう言ったのは、元ディスだ。


「次は衣服? ドレスなら地上の方がよくね?」


 そう元ジェスが言う。


「魔界じゃあ、ドレスのヒラヒラをあしらうことないでしょ。それこそ趣味、もとい娯楽じゃない。この辺の衣服をちょっと娯楽に近付けたいとか思っているだけだよ」

「流石ルビィ様です」

「ルビィ様万歳」


 胸に手を当てて尊敬の眼差しを向ける大公爵とロン。


 そこでリスタが『精霊契約』を辿って『転移』してきた。


「むぅ。流石に魔界から地上では一直線には『転移』出来ぬな。伯爵邸から魔界に来る羽目になった」


 突如現れた精霊に、村長達腰抜かしてるけど。


「ルビィ! 魔界に戻るなら一声かけんか! 朝になってからいないと気付いたぞ!」

「ごめん。最初の村の薬草が荒らされちゃったんだよ。今、残骸をウサギに食べさせてる」

「ウサギ? 猛獣ネズミじゃなくて?」


 疑いの眼差しやめてあげて。厳密にはウサギ似の魔獣だよ。


「家畜の飼育ついでに薬草も育ててみてる。この建物内も浄化済みだよ」

「ルビィ。ならば、最適な植物もある。草食動物の腹を満たしやすい増殖力のある草を、魔界用に『創造』してやるぞ」


 やってもらっている間に、これからの予定を話すと、リスタは顔色を変えた。


「『アラクネ』だと!? 討伐してくれる!」

「なんで殺気満々なの」

「『アラクネ』には、妖精を食われた嫌な経験がある! 好かん! 絶対に許さんぞ!!」

「何もその『アラクネ』と同一というわけじゃないでしょ? 気持ちはわかるけど」


 可愛い妖精を食べたことある魔物に敵意剥き出しになるのは、仕方ない。

 きっとキッチリそのアラクネを討伐しただろうけど、妖精を食べたアラクネとは限らないしね。

 村長達が真っ青になっているよ。やめてあげよう。


「我は帰る! お前もその用が済んだら、森に来い! 妖精達が会いたいと囀って煩い!」

「わかったぁ。なるべく時間が経ちすぎないようにするね」

「待たせるでないぞ!」


 プンスカするリスタは、この場の植物を見たあと、地上へ戻っていった。


 村長達がめちゃくちゃ心配するのを宥めて、『アラクネ』の『アネッサ』の元へ行くことに。



 


我が家の猫君の鳴き声が「なう」なんです。


いいね、ブクマ、ポイント、よろしくお願いいたします!

2024/03/18

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