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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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20/57

♰20 精霊と魔界のルーツ。


赤いサンタは来ないので、赤い悪魔さん。


   ●♰●♰●



 続きましては、呪術対策。

 吸血鬼の呪術は基本、影や血を媒介にするとのことだ。

 器用で強い吸血鬼ほど、目に見えない影の針を使って血を奪い、それを媒体に対象に呪術をかける。つまりは、風魔法を封じられたのは血を奪われたということ。

 私の血は二人に渡り、その血を媒体に繰り返し封じられたのだ。


 ちなみに、『魔力感知』も『索敵』も範囲と範囲が重なり合うだけで発動する大技らしい。

 興味本位でやめろや、そんな大技ぶっこむの。怖いわ、あの変態吸血鬼ども。


 マゾ大公爵といい勝負なのではないかと天秤にかけたが、やめた。考えるだけ無駄だ。空しいことはしなくていいんだ……。

 と、私は意識を逸らしておいた。


 そんな呪術対策に選んだのは、封じられるなら、封じ返してやればいいという意地悪い手段を選んだ。


 まぁ封じてやると言う生易しいものではない……。呪いを打ち消す神聖な道具を行使してやるのさ! つまり、吸血鬼の浄化である♡


 悪魔が神聖な道具を使うとか、卑怯だとやいやい喚く双子吸血鬼を安易に想像出来た。

 なので、悪魔らしく私はその手段をとるのである。だって悪魔だからな! わーははっ! あのガラ悪イカレ吸血鬼どもに、目に物を見せてくれる!


 懸念する悪魔にも集められるかどうかだけど、普通に大丈夫だと冒険者ギルド職員からも『祝福(ギフト)』さんからも、お墨付きをもらったので各地で集めた。

 どうせ集めるなら、可能な限りの最上級の素材集めをしようぞ!

 いや別に、散策を楽しんでいるわけではないのよ!

 この景色綺麗とか思ってないわよ! いやそれは思ってますけどね!


 魔界は、廃墟の街しか見えてないもんな。


 最後にやって来たのは、魔界にはない清らかな空気に満ち足りたような森である。

 サクサクとブーツで地面の草を踏みしめて、茂みを横切り、木々の下をくぐった。

 妖精も多く住まうと言われている神聖な大森林だ。

 すぅーはぁー、と深呼吸して、上機嫌に闊歩。


「…………なんか、親しみある空気を感じるぞ」


 目的地は、森の奥の奥だった。

 悪魔が言うのもなんだけど、心洗われる清々しい空気が、次第に、じめじめねっとりしてきた気がする…………魔界の空気に似ている。

 空気が悪いのを、魔界の空気だと言っちゃうだけかな。

 あ、たまに魔界と繋がるんだっけ? もしかして、その出入口が近くにあるってことかな?

 植物が育たない魔界の空気が流れ込んでいるなら、森が可哀想だわ。


 トッ、トッ、トッ、と岩を足場にせせらぎを飛び越えた。


 『索敵』を張っているけれど、森には小動物も多いから、『魔力感知』も張って、強弱で脅威を見極める。


【精霊】 【???】


 妙に白さを感じる魔力がそこにいるな、と思いきや、そんな表記が現れた。


 目があるのは、神聖的な森に相応しい見目麗しい御仁。

 『精霊』に相応しい容姿だ。

 水の中のツタのような髪を長く垂らして、中性的な美しい顔立ち。白い睫毛も長く、瞳は真珠のように虹色に艶めく。色白な肌は、ライトグリーンの艶玉を出す。ふわふわの羽毛のコートを羽織っていて、地面の上でも引きずっている。


 物すっごく不機嫌にしかめっ面された。嫌悪まで剥き出し。


「こんにちは」


 ダメかな、と思いつつ、一応目が合ったので挨拶しておいた。


「悪魔が精霊に挨拶とは、嫌味か」


 ? 何故バレた。

 ちゃんと『偽装』しているのに。『鑑定眼』が上回っているのかな。

 それとも、精霊だから見抜けるとか?

 ……あー、そういえば、精霊と仲が悪いんだっけ。魔界が嫌いだから。

 『祝福(ギフト)』さんが教えてくれたような。

 教えてくれたのは、魔界には妖精も精霊もいないってこと。

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…………()()()()!! 精霊がいらっしゃる!!


「な、何を物欲しそうに見ておる!」


 嫌な予感を察知したようで、たじろぐ精霊さん。


「精霊さんに頼みたいことがあるので『取り引き』しませんか?」

「悪魔と『取り引き』なんてするわけなかろう!! 『魅了』をかけてくるな!!」


 チッ。かからんか。

 私の色仕掛け、微動だに通用しないわ……。好感度マイナスだな。しょぼーん。


「さては精霊の力を使って悪巧みを!? 魔物を連れてこの森に来おったのか!?」

「なんか冤罪を吹っ掛けられた……。私はただ、この先にあるという泉の『光り石』を取りに来ただけだよ? やっぱり魔界が繋がってるの?」

「『光り石』だぁ? ますます怪しい! ちょうどその方角に魔界が繋がった! 魔物も湧いている!」

「疑惑が深まった……。吸血鬼をぶちのめすために、呪術対策に素材で欲しいだけだよ?」

「む? 吸血鬼だと? ……名持ちだろ、貴様。それほどの吸血鬼なのか?」

「うーん、まぁ、強いね。相手二人だし。精霊さんは『鑑定眼』持ちなんだね」


 悪魔だってこと以外にも、名持ちだとわかっているし、そうなんだろう。

 精霊さんの周囲には、ふわふわと浮かぶ仄かな球体は、トンボの翅をはみ出させるし【妖精】とも表記されている。

 精霊と妖精……幻想的で眼福。


「私はルビィ。魔界で植物が育てられるようにしてほしいの。『取り引き』してください」

「はぁ!? 魔界で植物!? 正気か、貴様!」


 ギョッとされた。正気さを疑われるほどのことなのかな。


「最初は、廃墟の街を緑いっぱいにしてやりたかったのに……色々立てこんじゃって。他国に移ろうにも、なるべく植物の育ちやすい場所にしようと思って。緑に溢れた街って素敵じゃない?」

「悪魔らしくない発想だな! 貴様!」

「悪魔らしくない自覚はあるよ」


 なんでギョッとされるかな。解せぬ。


 そこで急接近する気配に気付く。

 二人して顔を上げると、目の前に現れたのは【ワイバーン】だ。腕は、翼の空飛ぶ怪獣蜥蜴だ。

 恐竜の顔で牙を剥き出しに飛びかかるので、その顔を叩き切った。

 結界を張り、その中を火力全開で灰にしてやる。そのあと、風魔法で灰を魔界の空気の方へと送り届けた。


「本当に……悪魔らしくないな」


 訝しげに見てくるが、さっきよりは警戒心が和らいだ気がする。『観察眼』が言っているのだ。


【鑑定眼:森に火が燃え移らないように、結界で配慮したことに感心しています】


「他にも魔物はいるみたいだね。討伐するから、『取り引き』しませんか?」

「せんわ。魔物の討伐なら、我が行える。悪魔の力など頼らん」


 フンッと鼻を鳴らして、腕を組み、拒否姿勢を貫く精霊さん。

 また断られた……しょぼーん。


 キリンキリンッ。鈴の音より、金属がこすり合う音を奏でながら、別の光りの球体達が精霊さんに飛びついた。

 グッと眉間にシワが寄った精霊さんが、ビュッと飛んで行ったのは、私も目指していた奥地だ。

 なので『飛翔』で追いかけた。


 見てみれば、黒ずんだ泉と立ち尽くす精霊さんを見付けた。

 キリンキリンと、か細い音が周囲に鳴り響き、小さく騒々しい。


「どうしたの? この泉……」

「魔界の瘴気にやられて穢れたッ! 浄化するには『光り石』に力を込めて放り込めねばっ……」


 忌々しそうに悔し気に顔をしかめた精霊さん。


「『光り石』って……ここに沈んでいるんじゃ……?」

「…………」


 黒の水が揺らめくと『光り石』らしき輝きが、チラチラ見える。

 精霊さんの反応からして『光り石』だな、アレ。


 瘴気で穢れた黒い水は、どうやら精霊さん達には猛毒らしく、妖精も近付かない。

 その黒を浄化するために『光り石』が必要なのに、手元にない。

 目の前にあるのに、黒に穢れているから、取れない。

 ……詰み。


 もう猛毒を受ける覚悟で、水に手を突っ込むしかない。


「私が取るよ? あれは私には無害だし」


 【無害】って、しっかり表記されているしね。


「は? 見返りはやらんぞ」


 めっちゃ警戒するね。


「いいよ。私ももらうついでだから」


 ひょいっと飛んで、バシャンとブーツが浸かる位置で『飛翔』で留まり、手を突っ込み、石を拾った。

 手のひらに収まる円形の白い石。キラキラしているパールみたい。


「一個でいーい?」と、振り返って確認。

「……おう」と、しぶしぶ答える精霊さん。


 じゃあ、二つで十分だな。本当に無害で、水とともに黒は手から滴り落ちる。

 ひょいっと『飛翔』で戻る。


「はい、どうぞ」


 ぶっきらぼうな顔で「ん」と受け取り、白い光を込めると、ポイッと放り込んだ。

 そこから、ぱぁっと黒が浄化された。

 『光り石』は、浄化の源。精霊が力を込めたことでその威力は、一瞬で瘴気を浄化する神聖な道具と変わった。


「わぁー、すごー。吸血鬼の呪術とか、効かなさそうだね。精霊さん」

「フン、アホを言うな。吸血鬼の呪術など発動した矢先に、瞬時に打ち消してくれるわ。敵ではない」

「そっか。ところで、魔界で植物を作ってくれないかな?」

「くどいわ! 断ると言っているだろ!」


 流れで『取り引き』を取り付けたかったけれど、クワッと断られてしまった。

 ちぇっ。


「わかったぁー。また頼みに来るよ」

「来るな!」


 そうは言われたが、突破口なので、また来ることにしよう。

 武器と道具が出来上がるまで時間があるしね。




 キンバリー伯爵邸に顔を出してから、しばらく精霊を口説くと言えば「無茶だろ!」と止められた。


 いいじゃん、暇だし。


 ってことで、気まぐれに騎士団と手合わせをして、精霊の森に足を運んだ。



「本当に来たのか、悪魔め」

「お土産も持ってきたよ。フルーツてんこ盛りスイーツ! 私が提案した調味料で甘くしたお菓子なんだよ、妖精さん達にも足りるかわからないけれど、食べるー?」

「ハンッ! 悪魔から食べ物を受け取る物好きがいるわけが……ってもらうんかーいッ!!」


 言っている矢先に集る妖精さん達は、果物の誘惑か、砂糖の誘惑に負けたらしい。


 悪魔と戯れる妖精さん達。ミスマッチ。


 というか、悪魔に餌付けされる妖精さん達か。


「ところで、精霊さん。魔界で植物を」

「育てん!! くどいわ!!」

「あはは、ごめんごめん。もう妖精や精霊の力が必要だと思ったんだけどねー」


 フルーツ盛り合わせタルト、うまうま。


「何故植物にこだわる? 貴様」


 ギロっと見てくる精霊さん。


「えー? 気分?」と、こてんと首を傾げる。


「気分で精霊を魔界に呼ぶとは、ふざけとるぞ!!」

「やっぱり、魔界生まれの植物を創造した方が、長い目で見るといいじゃない? 精霊なら、適任でしょ」

「……魔界生まれの植物? そこまで考えるか」

「あーん」

「いらんわ!」

「ぱくっ」


 『光りの石』の泉を見張るように、二人で並んで座った。


「結界で保護したり、ポーションを水代わりにしたり、思いつく限りは試したけど、ダメだった。土もサラサラと死んでるし、空気も瘴気が濃いし、空が明るくとも太陽もないしねぇ」


 光合成が出来れば、多少マシなのではないか。

 そうは考えるけど、その前に魔界に耐えられる植物を手に入れるには、この精霊さんの手助けがいるのだ。


「……そもそも、何故魔界と魔物が存在するか、知らんのか?」

「ん? この世界の成り立ちとか、そういうの?」


 なんか急に壮大な話題になったな、と首を傾げた。

 確かにこの世界のルーツとか知らないけれど、それを言うなら前世の地球という場所も知識的には、特に知らんが……創世記的な話?


「悪魔のルーツは?」


 ピッと、人差し指を鼻先に突き付けられた。

 素直に知らないと首を傾げる。


「まぁ、一説にすぎんが、悪魔は地上に増えすぎた魂を消化するために創造された魔物だと言われている。魔族も人と敵対する存在なのは、争いで命を奪うため。吸血鬼は、人から血を奪うため。高位の魔物の創造理由は、地上の何かしらを奪うため、言い換えると減らすため、掃除するためと言える。よって、魔界とは掃除屋の住処だ」


 ほへえー、と間抜けな顔をして口をポカンと開けてしまう。


「つまり、魔界が瘴気に満ちているのは必然だ。地上の穢れを奪い取っているのだからな。そんな穢れた場所に、植物が生まれるわけがなかろう」


 淡々と語る精霊さんは、そばにある草を包むように手を添えた。


「そうかな? 道端でも育つのだし、魔界向きに改良したのなら、育つと思うのだけど」


 高速道路の排気ガスに満ちたアスファルトの隙間から咲く花だってあったはず。

 前世の記憶だけど。過酷な環境でも育つ植物もあるはず。


「精霊さんは、生まれる前から、何かしらに耐えられる身体を植物に与えることは出来ないの?」

「なんだと!? 出来る!」

「じゃあ解決案がわかれば、魔界でも育つ素敵な植物が生み出せるんだね」

「…………」


 なんで悔しそうな顔をするかな。


「だいたい()()()()()()()()()()だとしても、一応住んでいるわけだから、植物で環境を小綺麗にしてもいいんだよ」

「我はそこまで辛辣に言っておらんぞ」

「そう、魔界生まれの植物も存在してもいいと言うことなのだ!」


 ドヤァ!


「それで、精霊さんにぜひともそんな植物を創造してほしいです」

「しない。…………我には、名前がある。リスタヴィンスという名だ。名前の呼び方も知らんのか」

「いや、名前、教えてくれなかったよね」


 キッパリ断った割には、名前をやっと教えてくれた精霊さんことリスタヴィンス。

 ツンデレさんかな。


【精霊王】 【リスタヴィンス】


 表記されたものに、目を飛び出しかけた。


「あれ!? リスタヴィンスって、『精霊王』だったの!?」

「なんだ、知っていて不遜な態度を取っていたのかと思ったぞ」

「どうりでふてぶてしい態度だと。あ、『精霊王』だから、言葉遣いを改めた方がいいですよね。ご無礼を申し訳ございません、精霊王様」

「やめんか、今更! 気色悪い!」


 ぶるっと身震いするほどの拒絶感。そこまで。


「わかった。じゃあ、リスタって呼ぶね」

「とんでもなく遠慮なしだな、おい」


 ツッコミが鋭いな。

 でもキッチリ拒絶しない辺り、ツンデレさん。



 


ツンデレ精霊王さん、登場。


悪魔ムーブ中?


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2023/12/24

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