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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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11/57

♰11 二つ目の『取り引き』は討伐。

主人公視点→ ●♰●♰●

三人称視点→ ◯♰◯♰◯

   ●♰●♰●



 新たな『取り引き』は『願い:近くに巣食う魔物の討伐』で『対価:当面の衣食住』である。

 『取り引き』相手は、ジョンの妻であるリリンさんだ。


 守られているだけじゃない強い奥さんって感じで好感が持てるそのリリンさんは早速、私の服を仕立てようと背格好の似たメイドのワンピースドレスを借りて着替えた。


「うーん。胸回りがきついかな」

「うっ! す、すみません」


 いや、こちらこそ。胸が無駄に大きくて、ごめん。


「護衛を担当している騎士です。ダロンテ・ギアンヌと申します」


 仏頂面の日焼けした若い男性が、ぶっきらぼうに挨拶した。

 自己紹介も、リリンさんに言われてしぶしぶだったみたいだし、やる気が見られないなぁ。

「ルビィです」と、私も短く自己紹介しておいた。


 馬車に乗って、仕立て屋へ。

 馬車の中では、関係者の侍女の二人も乗ったので、改めてお礼を伝えられた。

 一人は、古参の中年女性のふくよかな体系のメアンリーさんと、まだまだ若いカリンさんだ。


「本当に怖い人ではないので、びっくりいたしましたぁ!」

「コラ、カリンったら。失礼なことを言うんじゃありません」


 カリンはほわほわした性格と喋り方をする女の子で、メアンリーさんはみんなのお母さんみたいな人だと思った。

 『祝福(ギフト)』さん。『観察眼』で【演技ではない】ってわざわざ表記しなくていいからね。カリンさんから、そのテロップを消そうか。


「ルビィ様っていくつなんですか?」

「え? ……0歳」

「ええー! なんですか、それ! …………マジですか?」


 マジですが。ピチピチの0歳よ。


「私の父は、ジョンと言っても過言ではないのよ。パパって呼んでいいかな」

「「「ぶっ!」」」


 三人がツボった。


「で、では……わたくしはママと言い張るわ!」


 肩を震わせたリリンのノリの良さに、馬車の中は笑い声が響いた。

 今頃、ジョンは盛大なクシャミをしているに違いない。ごめんね、ジョンパパ。



 仕立て屋では、動きやすさを重視するドレスを買ってもらった。


 お洒落も取り入れた動けるドレスとして、前開き仕様の軽い裾が伸びたタイプのドレスをいくつか。

 そして、魔物討伐に行くための短パンやズボン、それにブーツも作ってもらった。ブラウスもより取り見取りでたくさん。

 買いすぎじゃない? と思ったが「いいのいいの!」と、リリンさんに押し負けた。



「ルビィ様は、絶対にセクシー系がいいと思うんですよね」

「いえいえ、あえてのキュート系ですよぉ。豊満なお胸様にキュートな柄の下着……殿方はノックダウンですよぉ」

「黒のセクシー系とピンクのキュート系がいいわね!」


 どの殿方を悩殺することを想定しているのかな?

 と思いつつ、女子トークに身を任せて下着も買ってもらった。



「あと、武器を買いましょう」

「武器? 別に要らないけど」

「いえ。魔法使いに扮した方がいいわ」


 つまりは人間らしく武装した方がいいということ。

 だから、武器屋に来た私は杖を選ぶことになったのだが。


「鈍器に適した杖ください」


【観察眼:殴ることを想定した杖を購入か!? という顔】


 やめて、『祝福(ギフト)』さん。


 魔法杖は、魔法威力を上げて、射程を整えるための武器だ。

 もっと凝ったものだと、属性別に強化したものもあるそうだが、その場合はオーダーメイド。

 手早く手に入れたいなら、適度に威力が上がって、射程も整えられて、いざという時は叩くことが出来るものがいいだろう。

 強度がある素材で出来た杖を渡された。地面につけられる長杖タイプ。全属性をそこそこ上げるノーマルタイプ。遠距離射程を定めるに最適。


 宝石店に連れて行かれそうになったけれど、他の店を案内してほしいと頼んで回避。

 まだ私が願いを叶えていない時点で、色々してもらうのは申し訳ないので。


 便利な魔法道具店やスイーツの美味しい店を案内してもらって帰宅。


 護衛は、最初から最後まで不機嫌そうだった。

 『観察眼』ですら【不機嫌気味】と出てるくらいだから、勘違いではないだろう。



 私は『大事な客人のルビィ』とだけ説明をされて、使用人に紹介をされた。

 それだけで躾けが行き届いた使用人は、詮索は無用だと理解してくれるとのことだ。


「お手入れいたしますぅ~!」


 事情を知るカリンさんが私のお世話を担当するとのことで、入浴を手伝ってもらった。

 魔法で清潔にしていたとはいえ、やはり洗い流す方がスッキリする。


「侍女の力を見せてやります!」と、泡風呂に浸かりながら、ヘッドスパを受けた。

 極楽極楽。


 着ていて楽ちんなドレスに着替えて、夕食を伯爵夫妻ととり、そのあと伯爵夫人の部屋に招かれていけば、ジョンも来ると聞かされて、人払いを済ませてからの情報の共有を始めた。


 標的の魔物の巣窟の位置。特徴。おおよその数。地形の情報まで。


「わかった。明日行ってもいい?」

「え? すぐにか? もう少し休んだらどうだ? 魔界から逃げて来たばかりだろ」

「もう回復は終わったから、大丈夫」


 嘘ではない。再会のお茶をいただいたあとから、『HP』のケージは元通りだ。


「被害が増える前に対処すべきでしょ」

「それは……助かる」


 食い下がることをやめて、頭を下げるジョン。


「そうだ、ルビィ。人型相手の戦闘に慣れたいと言ったじゃないか。例えば剣術を学ぶとして、騎士団に指南を受けるのはどうだろうか?」

「え? いいの?」

「恩人の娘が冒険者を目指していて剣術を学ばせたいと話を通せばなんとか……。ただ……加減をしてくれるか?」


 それだけは気になるらしく、緊張を含んで尋ねた。

 私の方が、人間相手に力加減……。


「明日魔物相手に力加減を学んでくるよ」


 ちょっと遠い目をして微笑む。


「う、うん、頼む」


 引きつった笑みで頷いたジョンだった。


「騎士と言えば……」と、ふと過ったから言ってみる。


「リリンさん。ダロンテさんっていつもあんな感じ?」

「ダロンテ? ああ……今日は少し機嫌が悪かったかしら」


 やっぱり?


「彼はイマイチわからないんだよな。生真面目に張り付いて護衛するかと思えば、やる気なさげな雰囲気を出している気がして」と、ジョンは自分の顎をさする。掴みどころがないってことかな?


「気に障った? 注意するわ」

「いえ、気になっただけだから、構わないわ。じゃあ明日、陽が出る頃にサッと飛んで行ってくるね。……ちなみに、空飛ぶってアリ?」


 人間の常識を教えておくれ。

 通常レベルの魔法使いでは、先ずナイとのこと。

 しょうがないから、『姿暗まし』を使って飛んでいくことに決めた。




 翌朝。

 カリンさんに付き合ってもらい、早朝から起床。

 別に食事は必要ないしあとで楽しめばいいやということで、着替えを手伝ってもらい、『姿暗まし』もちゃんと効果あるかを確認してもらってから出発した。


 地上を飛ぶのは、初めてだ。

 洋風のお洒落な田舎の街って感じで素敵だなぁーと、一瞥しては突き切った。


 馬車道を大きく逸れて、鬱蒼とした森に入る。

 そこで、地面に足をつけた。

 ちゃんとした森を散策したかったんだ。『鑑定眼』を活躍させて、キョロキョロ。

 もちろん、『魔力感知』も発動させて周囲の警戒も怠らない。


 そういえば、『鑑定眼』ってグレードアップ出来るのかな?

 お。解説を詳しく増やしてくれるって。ポイントを投入っと。早速、その辺の草を見てみた。


 【香辛料】 【傷薬】 【痛み止め】 と効果までが表記されているし、意識を向ければ、効率のいい調合や使い方まで出てきた。

 おお! 『祝福(ギフト)』さん。やりますなぁ。


 そんな感じで暢気に歩いていて、ようやくうじゃうじゃと魔物の気配を、範囲内で捉えた。


 情報通り、巨大化け猫のような体躯でシャァアアーと威嚇してきたくすんだ黄色の毛むくじゃらの魔物。

 一応『ガットバー』という種族名がある魔物。

 この世界の言葉で、化け物って意味らしい。

 だが、魔獣との違いがイマイチわからないんだよね。


 獣らしく、もう突進してきたので、杖を振りかぶってスパコーンと叩いたつもりが、普通にボコンッと音を響かせた。頭へこんだ。……力加減を覚えねば。

 手合わせしてもらう予定の騎士をペコペコにへこませそう。


 悪魔ではあっても、力差は成人男性と変わらないから大丈夫かと思ったけれど、本気を出せばこんなもんである。

 戦いの場で、人間相手の加減を覚えておかなきゃ。


 次に飛びかかった『ガットバー』は優しく叩いたが、今度は弱すぎたようだ。頭を振って、態勢を整えられた。

 んー、人間相手なら今のでいいのかな。わからん。


 すると、その『ガットバー』に『HP』のケージが現れた。


「そうだった!」と、大声でツッコんだ。ケージを確認すれば、加減が出来てるかわかるね。


【弱点・水 風】


「出るんかい!」


 と弱点までわかってしまうことに、ツッコミ。

 ええー! 『鑑定眼』をグレードアップしたおかげ? 早く知りたかったわ……。

 そうすれば、昨日の悪魔達も弱点ついて倒せただろうに。しくしく。まぁ知れてよかったよ。殺さないために残りの『HP』がわかるのも、減り具合もわかるのも、人間相手に加減することを身につけられる。

 うじゃうじゃと一斉に飛びかかってきたので、風を乱舞させて八つ裂きにしてやった。

 これも加減。あんまり両断とかしない方がいいかなって。致命傷ぐらいの深さに留めておく。くっ。手加減って難しい。


 大半を仕留めてきたら、どうやら勝ち目がないと危機感を覚えたようで、離れていく小さな群れも『魔力感知』で把握。


 どうしたものかなぁ。

 一匹逃したら、その倍に増えかねない……。討伐した方がいいよね。


 こっちを放置して鬼ごっこするわけにもいかないので、手を空へ伸ばして、振り下ろすと同時に雷をそこらかしこに叩き落とした。

 雷鳴が轟いて、ギョッとしてしまう。

 ヤベッ。爽快な晴れ空の朝に雷鳴を轟かせてしまったわ。あちゃー。

 街の方まで聞こえちゃったかな……。魔法だってわかるだろうけれど、大丈夫だろうか。


 あまり地面を抉ってないし、威力は抑えたから、大丈夫だよね。


 あとは、穴ぐらの巣の破壊も必要だ。また住まれては困るので土魔法でせっせと埋めた。ぎゅっぎゅっ。


 この辺りの生物の気配はない。魔獣の縄張りだからか、小鳥一匹いない。


 ん? ……気配が一つ、街の方から来る……?

 魔獣ではないな……。強さは……人?


 なんで人がこっちに来るんだ?


 ここは危険地と指定されている森。雷鳴が聞こえたからと言って、来るわけもない……。

 怪しんで見据えたが、周囲を見回して、人外同士の戦いの跡ではないと確認。


 そのまま、出迎えるように、接近者へと足を進めた。




(2023/12/11)

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