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マリーゴールドで繋がる恋~乙女ゲームのヒロインに転生したので、早めに助けていただいてもいいですか?~  作者: 有木珠乃
第3章 16歳:出生

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第65話 「エリアスを助けたいの」

ブックマークといいねをありがとうございますm(_ _)m

 

 連れて行かれるエリアスを見て、私はその場で崩れた。


「お嬢様!」


 駆け寄ってくれたニナに支えられて、どうにか椅子に座る。が、背もたれのない椅子だったからか、ニナは私の傍にずっといてくれた。

 それがどれだけ有難かったか、計り知れないほどに。


「ニナ、これからどうしたらいい?」


 エリアスもそうだけど、お父様も。


 顔を上げて、ベッドに横たわるお父様を見た。あれだけ騒いでいたのにも関わらず、目を閉じて眠っている。

 それだけ、毒がお父様の体を(むしば)んでいるのだろうか。


「とりあえず、気持ちを落ち着かせてみてはいかがですか?」

「気持ち?」

「そうです。旦那様もエリアスも、それを望んでいると思いますから」

「お父様とエリアスが?」


 そう言いながら、ベッドと扉を流れるように視線を動かした。


 私に知らせないようにしたお父様。何もできずに見送るしかなかったエリアス。

 そんな二人が果たして、望んでいるのだろうか。


 ふと、二年前のことを思い出した。

 私の護衛を外された時のエリアスの反応だ。


『いくら爵位を継ぐとはいえ、これはあんまりじゃないか』


 さらに私との逢瀬も制限がかけられた。

 お陰で最初の頃は、散々愚痴を聞かされたっけ。途中から仕事の愚痴なのか、お父様への不満なのか、区別がつかなくなるほどに。


 だから少なからず、お父様に対してよくない感情を持っているのは確かだった。


 ポールの言う通り、お父様がいなければと考えるかもしれない。

 けれど、頭のいいエリアスなら気づくはずよ。私たちはまだ、婚約していない。

 そんな状況下でお父様がいなくなったら、どうなる?


 成人していない私では、カルヴェ伯爵家を維持することはできない。加えてお父様がいなければ、エリアスは養子になることだってできないことくらい、分かるはずよ。

 さらに伯爵家を維持するために、私はそれ相応の相手、つまり貴族令息と結婚する必要も出てくる。

 つまり、エリアスとは結婚できないのだ。


 それをエリアスが望むの?


 ううん。そんなはずはない。


 昨日だって、急いで来てくれたのは、一緒にいられる時間を少しでも長くしたい。そう思ってくれたからでしょう?


 いつもの時間よりも遅れていたから。確か遅れた理由って……。


「ニナ。ポールが言っていたことは本当なの? 昨日、エリアスと話していたんでしょう」

「はい。その、注意していたんです」


 昨日エリアスに触れられた鎖骨の下に手を当てた。


「その時に、お嬢様よりも旦那様を心配した方がいい、という話になりまして……」

「ニナはお父様が伏せられていることを知っていたから……なのでしょう?」

「申し訳ありません」

「いいのよ。お父様の指示には逆らえないもの」


 いくらニナが私にとって姉のような存在でも、立場はメイドだ。

 雇用主たるお父様の命令は絶対である。

 裏切られたような気持ちはあったけど。


「冷静に考えれば、別におかしいことは言っていないのよね。私は健康そのものなわけだし。お父様を優先するのは、むしろ当たり前じゃない」

「しかし、捉えようによっては、旦那様の死期を心配しろ、とも聞こえます」

湾曲(わんきょく)し過ぎているわ……」

「はい。ですから、恐らくポールが仕掛けたのではないかと思われます。エリアスの自室を調べさせたのも含めて」


 ニナの考えに私は賛同した。


 お父様の寝室に誘導されたこと。寝室に入る前に許可を取らなかったことなど。今になって思えば、そこからすでにポールの術中に陥っていたのだ。


「そうね。小瓶だって前もって用意していたんだろうし。中身だって毒かどうかも分からない」

「宿舎の部屋は、時々抜き打ちチェックをするんです。奥様の件があってから、旦那様がするように指示されていましたから」


 四年前に亡くなったお母様。私が転生した時、棺の中にいた。

 そのお母様の死因は病気だったけれど、実際は少しずつ毒を盛られていたのだと、お父様から聞いた。


「まるでお母様の時を思い起こさせるものね。今のお父様の状態は」

「はい。そのため、皆、不思議に感じないばかりか、むしろ協力すると思います」


 それさえも策略の材料にしたのね。


「ねぇ、ニナ。エリアスの部屋と厨房に行きたいんだけど」

「なぜですか?」

「調べてみようかと思って。エリアスを助けたいの」

「でしたら、私はオススメしません」

「どうして?」


 今ここでエリアスを助けられるのは、私しかいない。それなのに、ダメなの?


「お嬢様がエリアスを贔屓(ひいき)にすることは皆、知っています。公平ではない判断を誰が信じますか?」

「あっ……」

「それに、治安隊がやってきます。テス卿が以前、所属していた」


 ニナの言葉に私はハッとなった。


 思わずテス卿を見上げると、にこりと笑って頷く。


「彼らが邸宅内を調べますから、心配はいりませんよ」

「うん。ありがとう。そうだ。ケヴィンを頼ってみるのはどうかな。犯人を捜すのを手伝ってもらうの」


 邸宅の中は治安隊が。だったら私は外を調べるのはどうだろう。ケヴィンも一緒なら、ニナも許してくれるかな?


「いい案だと思います。しかし、この状況で外に出るのは難しいかと」

「確かに」

「でしたら、お医者様を探しに行くというのはどうですか?」


 テス卿が珍しく案を出してきた。


「すでに主治医がいます。それなのに探すだなんて、失礼にもほどがありますよ」

「ならば、私のお使いだったらどうだ?」


 聞き慣れた、でも意外な人物の声に、私とニナ、テス卿の視線が一つの方向に向けられた。


「お父様。いつお目覚めになったんですか?」

「これだけ話し声が聞こえれば、寝てなどいられない」


 いや、さっきの騒動でも寝ていましたよ?


 そう尋ねる前に、ニナが口を開いた。


「お使いとは、具体的にどのようなものでしょうか」

「手紙を渡しに行ってもらう。今は具合が悪いから会えない(むね)を、娘のマリアンヌが言いに行ったとしても、誰も疑わない。私の頼みならば、治安隊が来ていようが大丈夫だろう」


 まぁ最悪、お父様の言いつけは守りたいだの、動けないお父様に変わってできることをしたいの、とか色々言い訳はできる。


「分かりました。それで、どなたなんですか?」

「キトリー・エナンに会ってきてほしい」

「えっ?」

「昨日、会ってきたのだろう」


 私は思わずお父様の元に駆け寄った。


マリアンヌとニナの絆回でした。

ここまで前面にニナを出したのは、初めてですね。


次回、カルヴェ伯爵が……よく喋ります。一応、病人です(^_^;)


ちょっとカルヴェ伯爵も怪しいんじゃない。エリアスはどうなるの?と思われましたら、ブックマーク・評価・いいねをよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり、エリアス君にも不満はあったんですね。 とはいえこんなバカな真似はしないと信じたいですが。 やっぱりポールの仕業、となると、ポールがエリアス君を追い出して何か得するとも思えないし、…
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